4 / 41
4
しおりを挟む
塔子の話だと俺の父親は数年前に運命の番いに会ってその人のところに入り浸っているそうだ。
離婚は母親が応じず形だけの夫婦でいる。他所に愛人がいる事はなんとなく分かっていたけどまさか運命の番いとは…。
驚いた事に塔子の父親もそうだった。俺の父親と違って全く帰って来ないそうだ。
その事があってから俺たちの母親はさらにオメガが嫌いになりアルファ至上主義が強くなった。
塔子は母親の部屋に盗聴器を仕掛けている。弱みを握って家を出たいと言った。
「アルファと結婚したって番いのオメガが現れたら家庭崩壊するのにね。」
「そうだな。でもそれが分かっていてもアルファと結婚させたがる。」
「オメガに負けたくないのよ。バカみたい。」
やってられないと言って塔子は紅茶を飲んだ。
「なぁ、君のオメガは運命なの?」
「ふふ、そうよ。見る?」
俺の返事を待たずして小さなカバンからスマホを取り出して画面を見せてきた。
そこに写る男を見て唖然とした。
「可愛いでしょ。男オメガなの。満くん。」
うっとりと画面を見つめる塔子。
画面の男のオメガは平林のスマホに写っていた男と同じだった。
俺と塔子はお互いに気に入ったという事にして面倒な見合いを回避する事にした。
満のことは言えなかった。見間違いでも人違いでもない。平林の運命のはずのオメガだ。
モヤモヤした気持ちで家に帰った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
廊下側の一番前の席に座って授業を受けている平林を見る。様子はいつもと変わりない。最も無口で無表情で分かりづらいヤツだ。
満とは別れたのか?でも運命だと言っていた。
「なぁ、澤乃井。運命ってなんだ?」
「へ?」
弁当のおかずを口に入れた澤乃井に聞いてみた。
もう一人の友人の比留間はキョトンとした顔で俺を見ている。
「何、何?どうした?…まさか⁉︎」
「え?運命になんて会ってないよ。」
「なーんだ。」
二人はがっかりしている。
「運命って自分の半身のことだろ?俺たちは原始、顔が二つ、手足は八本の生き物だった。それが二つに別れた状態が今だ。だから自分の半身を探し求める。」
「あぁ、その話なら知ってるよ。better halfだろ?『より良い半分』。」
ネットか何かで見た話だ。
「そ。運命の番いは自分の半身。」
肥留間は得意気に話す。
「bestじゃないの?何でbetter?」
澤乃井が弁当を食べながら比留間に聞いた。
「相手に敬意を示しているんだよ。半分は半分でもより良い方が相手って事。」
「アルファの俺たちより相手のオメガの方が優れてるってわけだ。」
「そうだな。そういう事になるな。」
その後も俺たちは運命について話しをしたけど結局分からなかった。
そんな話をした三日後に平林が学校を休んだ。一週間経っても来なかった。
みんなヒート休暇と思っているみたいだけど申請はされていないみたいだ。
何となく嫌な感じがする。
さらにその三日後に平林が登校して来た。
げっそりしている。
ヒート休暇だと思って揶揄っているヤツがいる。
平林はそいつらに力なく笑っていつも通り静かに過ごしていた。
気になった俺は昼休みに教室を出た平林を追いかけた。
「平林…。その、大丈夫か?」
「え?あ、あぁ。うん。」
途端に平林の目が潤んで涙が溢れた。
俺は慌てて腕を引っ張り階段の踊り場に連れて行った。
ずっと下を向いて泣いている。
「悪い。桜沢…。」
「満の事か?」
平林が驚いた顔を上げた。
「な…んで。知ってる?…。」
「たまたまだ。知り合いのアルファに見せてもらった画像が、その、おまえの運命の満だったんだ。言おうかどうしようか迷ったんだけど、休んで居なかったから…。」
「そっか…。」
出先でアルファと腕を組んで歩く満に会ったそうだ。驚いて問い詰めると面倒臭そうに平林とは遊びだと言われた。満は他にも数人のアルファに手を出していた。
「運命なんて信じてるのか、とバカにされた。それ以外にも、その、ここでは言えないような事も言われて…。」
ショックが大き過ぎて家で寝込んでいた。平林は真面目そうだもんな。
塔子はどうしてるだろうか。満の事をまだ運命と思っているのか?
力なく座り込む平林を見つめた。
やはり運命なんてものはないんだ。親父たちもただの一目惚れを勘違いしているだけだ。
離婚は母親が応じず形だけの夫婦でいる。他所に愛人がいる事はなんとなく分かっていたけどまさか運命の番いとは…。
驚いた事に塔子の父親もそうだった。俺の父親と違って全く帰って来ないそうだ。
その事があってから俺たちの母親はさらにオメガが嫌いになりアルファ至上主義が強くなった。
塔子は母親の部屋に盗聴器を仕掛けている。弱みを握って家を出たいと言った。
「アルファと結婚したって番いのオメガが現れたら家庭崩壊するのにね。」
「そうだな。でもそれが分かっていてもアルファと結婚させたがる。」
「オメガに負けたくないのよ。バカみたい。」
やってられないと言って塔子は紅茶を飲んだ。
「なぁ、君のオメガは運命なの?」
「ふふ、そうよ。見る?」
俺の返事を待たずして小さなカバンからスマホを取り出して画面を見せてきた。
そこに写る男を見て唖然とした。
「可愛いでしょ。男オメガなの。満くん。」
うっとりと画面を見つめる塔子。
画面の男のオメガは平林のスマホに写っていた男と同じだった。
俺と塔子はお互いに気に入ったという事にして面倒な見合いを回避する事にした。
満のことは言えなかった。見間違いでも人違いでもない。平林の運命のはずのオメガだ。
モヤモヤした気持ちで家に帰った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
廊下側の一番前の席に座って授業を受けている平林を見る。様子はいつもと変わりない。最も無口で無表情で分かりづらいヤツだ。
満とは別れたのか?でも運命だと言っていた。
「なぁ、澤乃井。運命ってなんだ?」
「へ?」
弁当のおかずを口に入れた澤乃井に聞いてみた。
もう一人の友人の比留間はキョトンとした顔で俺を見ている。
「何、何?どうした?…まさか⁉︎」
「え?運命になんて会ってないよ。」
「なーんだ。」
二人はがっかりしている。
「運命って自分の半身のことだろ?俺たちは原始、顔が二つ、手足は八本の生き物だった。それが二つに別れた状態が今だ。だから自分の半身を探し求める。」
「あぁ、その話なら知ってるよ。better halfだろ?『より良い半分』。」
ネットか何かで見た話だ。
「そ。運命の番いは自分の半身。」
肥留間は得意気に話す。
「bestじゃないの?何でbetter?」
澤乃井が弁当を食べながら比留間に聞いた。
「相手に敬意を示しているんだよ。半分は半分でもより良い方が相手って事。」
「アルファの俺たちより相手のオメガの方が優れてるってわけだ。」
「そうだな。そういう事になるな。」
その後も俺たちは運命について話しをしたけど結局分からなかった。
そんな話をした三日後に平林が学校を休んだ。一週間経っても来なかった。
みんなヒート休暇と思っているみたいだけど申請はされていないみたいだ。
何となく嫌な感じがする。
さらにその三日後に平林が登校して来た。
げっそりしている。
ヒート休暇だと思って揶揄っているヤツがいる。
平林はそいつらに力なく笑っていつも通り静かに過ごしていた。
気になった俺は昼休みに教室を出た平林を追いかけた。
「平林…。その、大丈夫か?」
「え?あ、あぁ。うん。」
途端に平林の目が潤んで涙が溢れた。
俺は慌てて腕を引っ張り階段の踊り場に連れて行った。
ずっと下を向いて泣いている。
「悪い。桜沢…。」
「満の事か?」
平林が驚いた顔を上げた。
「な…んで。知ってる?…。」
「たまたまだ。知り合いのアルファに見せてもらった画像が、その、おまえの運命の満だったんだ。言おうかどうしようか迷ったんだけど、休んで居なかったから…。」
「そっか…。」
出先でアルファと腕を組んで歩く満に会ったそうだ。驚いて問い詰めると面倒臭そうに平林とは遊びだと言われた。満は他にも数人のアルファに手を出していた。
「運命なんて信じてるのか、とバカにされた。それ以外にも、その、ここでは言えないような事も言われて…。」
ショックが大き過ぎて家で寝込んでいた。平林は真面目そうだもんな。
塔子はどうしてるだろうか。満の事をまだ運命と思っているのか?
力なく座り込む平林を見つめた。
やはり運命なんてものはないんだ。親父たちもただの一目惚れを勘違いしているだけだ。
61
あなたにおすすめの小説
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
人気者の幼馴染が俺の番
蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、
※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない
かんだ
BL
オメガバ/α×Ω/見知らぬαの勘違いにより、不安定だった性が完全なΩになってしまった受け。αの攻めから責任を取ると言われたので金銭や仕事、生活等、面倒を見てもらうことになるが、それでもΩになりたくなかった受けは絶望しかない。
攻めを恨むことしか出来ない受けと、段々と受けが気になってしまい振り回される攻めの話。
ハピエン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる