運命はいつもその手の中に

みこと

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塔子の話だと俺の父親は数年前に運命の番いに会ってその人のところに入り浸っているそうだ。
離婚は母親が応じず形だけの夫婦でいる。他所に愛人がいる事はなんとなく分かっていたけどまさか運命の番いとは…。
驚いた事に塔子の父親もそうだった。俺の父親と違って全く帰って来ないそうだ。
その事があってから俺たちの母親はさらにオメガが嫌いになりアルファ至上主義が強くなった。
塔子は母親の部屋に盗聴器を仕掛けている。弱みを握って家を出たいと言った。

「アルファと結婚したって番いのオメガが現れたら家庭崩壊するのにね。」

「そうだな。でもそれが分かっていてもアルファと結婚させたがる。」

「オメガに負けたくないのよ。バカみたい。」

やってられないと言って塔子は紅茶を飲んだ。

「なぁ、君のオメガは運命なの?」

「ふふ、そうよ。見る?」

俺の返事を待たずして小さなカバンからスマホを取り出して画面を見せてきた。
そこに写る男を見て唖然とした。

「可愛いでしょ。男オメガなの。満くん。」

うっとりと画面を見つめる塔子。
画面の男のオメガは平林のスマホに写っていた男と同じだった。



俺と塔子はお互いに気に入ったという事にして面倒な見合いを回避する事にした。
満のことは言えなかった。見間違いでも人違いでもない。平林ののはずのオメガだ。
モヤモヤした気持ちで家に帰った。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


廊下側の一番前の席に座って授業を受けている平林を見る。様子はいつもと変わりない。最も無口で無表情で分かりづらいヤツだ。
満とは別れたのか?でも運命だと言っていた。





「なぁ、澤乃井。運命ってなんだ?」

「へ?」

弁当のおかずを口に入れた澤乃井に聞いてみた。
もう一人の友人の比留間ひるまはキョトンとした顔で俺を見ている。

「何、何?どうした?…まさか⁉︎」

「え?運命になんて会ってないよ。」

「なーんだ。」

二人はがっかりしている。

「運命って自分の半身のことだろ?俺たちは原始、顔が二つ、手足は八本の生き物だった。それが二つに別れた状態が今だ。だから自分の半身を探し求める。」

「あぁ、その話なら知ってるよ。better halfだろ?『より良い半分』。」

ネットか何かで見た話だ。

「そ。運命の番いは自分の半身。」

肥留間は得意気に話す。

「bestじゃないの?何でbetter?」

澤乃井が弁当を食べながら比留間に聞いた。

「相手に敬意を示しているんだよ。半分は半分でもより良い方が相手って事。」

「アルファの俺たちより相手のオメガの方が優れてるってわけだ。」

「そうだな。そういう事になるな。」

その後も俺たちは運命について話しをしたけど結局分からなかった。

そんな話をした三日後に平林が学校を休んだ。一週間経っても来なかった。
みんなヒート休暇と思っているみたいだけど申請はされていないみたいだ。
何となく嫌な感じがする。

さらにその三日後に平林が登校して来た。
げっそりしている。
ヒート休暇だと思って揶揄っているヤツがいる。
平林はそいつらに力なく笑っていつも通り静かに過ごしていた。

気になった俺は昼休みに教室を出た平林を追いかけた。

「平林…。その、大丈夫か?」

「え?あ、あぁ。うん。」

途端に平林の目が潤んで涙が溢れた。
俺は慌てて腕を引っ張り階段の踊り場に連れて行った。
ずっと下を向いて泣いている。

「悪い。桜沢…。」

「満の事か?」

平林が驚いた顔を上げた。

「な…んで。知ってる?…。」

「たまたまだ。知り合いのアルファに見せてもらった画像が、その、おまえの運命の満だったんだ。言おうかどうしようか迷ったんだけど、休んで居なかったから…。」

「そっか…。」

出先でアルファと腕を組んで歩く満に会ったそうだ。驚いて問い詰めると面倒臭そうに平林とは遊びだと言われた。満は他にも数人のアルファに手を出していた。

「運命なんて信じてるのか、とバカにされた。それ以外にも、その、ここでは言えないような事も言われて…。」

ショックが大き過ぎて家で寝込んでいた。平林は真面目そうだもんな。
塔子はどうしてるだろうか。満の事をまだ運命と思っているのか?
力なく座り込む平林を見つめた。
やはり運命なんてものはないんだ。親父たちもただの一目惚れを勘違いしているだけだ。

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