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序章:宴の前夜祭
【路地裏の王】はかく語りき
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私は【路地裏の王】という呼び名を気に入っている。他人が勝手に付けたにしては中々的確な物だからである。その名が示す通り、最早全ての路地裏は私の支配下にあった。……故に、あの少女の事も気付いていた。あの日、あの女が置いていった少女は、路地裏に現れた新参者は、私が最も嫌う存在であった。平穏を、静寂を、安寧を求めた故に路地裏に住まい、そこに対する全ての干渉を拒んできた私にとって、あの様な行動をする少女を放置するという事は厄介事を路地裏に招き入れ、やっと得た望む物を捨てるのと同意であったのだ。だからこそ、私はすぐにでもそれを排除したかった。しかし、そうできない理由があったのだ。半年ほど前、突如として現れた男に私は身体の約半分を奪われた。自らを【魔王】と称したその男は有無を言わさず私に襲いかかり、影を駆ける力と共に半身を奪い去ったのだ。それから暫くして、その自称【魔王】が件の少女を助けて去っていった時に私は思わず安心のあまりため息をついてしまった程だった。厄介事が二つまとめて片付いた様なものだったからである。嗚呼、これでゆっくり回復に専念できる……
「【路地裏の王】がボロボロって、かなりのスクープだと思うの私だけっスかね?」
「……何の用だ【ウォッチャー】。私にトドメを刺しに来たか?何処ぞの組織と路地裏の開放を利用して交渉でもする気かね」
「いやいや、まさかそんな事はしないっスよ。私は【ウォッチャー】……公平に、公正に、中立の目で持って全てを観測する者です。干渉は柄じゃねーッスよ」
「組織に所属する貴様を見たぞ。あれは公平だのなんだのと言えぬだろう」
「……路地裏での平穏な生活しか興味なーし!みたいな顔して意外と外のことも見てるんスね。まあ、あの私もまた必要な『目』である!ということで、ここは一つ」
「まあ、どうでもいい。用が無いなら失礼する。私は寝たいんだよ」
「ええどうぞ、ゆっくりとおやすみなさい……どうせ次の宴はもうすぐです、そうなればどの道巻き込まれるんスからね」
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「いやいや、まさかそんな事はしないっスよ。私は【ウォッチャー】……公平に、公正に、中立の目で持って全てを観測する者です。干渉は柄じゃねーッスよ」
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「……路地裏での平穏な生活しか興味なーし!みたいな顔して意外と外のことも見てるんスね。まあ、あの私もまた必要な『目』である!ということで、ここは一つ」
「まあ、どうでもいい。用が無いなら失礼する。私は寝たいんだよ」
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