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第12章
採石場の魔女
しおりを挟むその黒い門の前にはこちらに背を向けたまま影法師のように佇んでいる一つの人影があった。
ここまでの道のりで誰とも出会わなかっただけに、少しばかり躊躇しながらも恐る恐る歩を進めると、やがてこちらの気配に気付いたのかその影法師がこちらの方を向くと声を掛けてきた。
「案内人は無事務めを果たしたようですね。再び会えるこの時を長いこと待ち侘びておりました」
吸い込まれるような無音で満ちたこの広場にあって彼女の声はやけにハッキリと耳に残った。
彼女の額にも三本の角が煌びやかに輝いていたが、一つ一つは小指の先程の小さな紫色のもので角というよりも額飾りといった方がしっくりくる形状だった。
その声に聞き覚えがあるような気がして顔を改めて確認するが誰かは思い出せない。
「君は?此処で何を?」
しかし彼女はこちらの質問には答えず何処かホッとした面持ちでこちらの顔を見つめて来る。
「もうお気付きでしょう?」
「?」
「あなたは死んだのです」
彼女は僅かに微笑みながらそう告げた。
その声は冷ややかで、けれど何故か遠足当日を待ち侘びている子供のように
何処か浮かれているような無邪気な様子だった。
その様子に何処か薄気味の悪さを感じて、少し腰が引き気味になる。
「き、聞き間違いかな?それとも何かの冗談?」
「まさか、私が嘘をつくとでも?」
「いや、そもそも初対面で急にそんな事を言われても…」
「初対面ですって?」
彼女は急に呆れたような声を上げる。
「私の事を忘れてしまったのですか?」
そんな事を急に言われても見当がつかない。
「悪いけど思い出せないんだ…」
少しバツが悪くなる。
「そうですか…残念です。ならば、私は自身に課せられた本来の役目を粛々と全うしましょう」
「役目…?君は一体何者なんだ?」
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