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断片化された体系
狐憑、或いは悪魔憑きと呼ばれるもの達
しおりを挟む地上への路は門の許可がある場合を除けば煉獄の住人達や地獄の鬼達が自らの存在を地上に見せる事は慣習的に禁じられていたが、何せ煉獄は広大無比である為、忘れ去られた場所に取り残されているような門やその代行者も一定数居り、そのような暇を持て余している存在の中には自らの後任を見つける事も無いまま、地上を目指して気紛れに姿を消す者も無いわけでは無かった。彼等は地上に住まう生物の姿や、自然現象の姿や力を借りて、人知れず地上を駆け回り、そしてまた元居た場所へと戻って行く。殊更人間に何かを伝えようとする者は鳥や獣、時には人の肉体を借りる事もあった。そのような者達は時に人間に害を与えたり、深く関わりを持って手助けをした事もあったようである。そのような存在と奇縁で繋がった者達が地上には時々表れる。そういう者達は一般的に憑物と呼ばれる人々と混同・同一視されやすい。これは魂の臨界点を超えて人外の化生と成った我欲と執念や怨念の塊のような鬼とは異なり、自らの肉体を持たない、或いは喪った存在や、化生である己の姿を隠したい存在が人の姿を借りようと生きた人間の身体に憑いた者達を表す語でもある。狐憑や悪魔憑きという語でも知られている。
憑物、それは文字通り人にある種の通常とは異なる意識状態が持続する現象として古くから人間達の資料にも記録されている。かつてこれらの存在は広く憑物として知られ、しばしばその人間が生来兼ね備えている人格とは全く異なる突飛な才能を発揮する為に、その精神状態は地域によっては使徒と同一視され崇敬の対象とされたり、又は逆に悪しき存在が地上に顕現したものとして酷い扱いを受ける対象にもなった。彼等の内には傷心の果てに心を病んだ者や、獣じみた狂気に侵されそれに囚われた者も多く含まれていたが、その中に僅かではあるが人と言葉を交わし理知的な振る舞いをする存在もあったと云う。
そのような通常では起こり難いある種の精神状態が長期に渡り持続する現象は、かつては恐怖や畏怖の対象として扱われたが、時代が下るにつれ科学医療的な観点から研究の対象とされる事例が多くなっていった。そして更に時代が下ると、そのような状態に至る人間がそもそも稀となった。これはその状態に至るある種の資質を兼ね備えた者の多くが近代化と共に狂人の類とされ、その特性そのものを治療・根絶するために社会的な淘汰圧が以前にも増して強まって行った結果である。その為、現在ではそのような状態に至る人物が伝統的もしくは文化的に要請される職能集団や、他者を支配する目的でその状態を人為的に模倣しようとする者達のような事例を除いては、その資質を有する人々の多くはその特性が部分的に発現しても、自らの内にある他の個性や才能の一部として扱い、社会生活が送れなくなる程の状態になってしまう場合でも、その特性を医学の力で押さえ込みながら日々暮らしを送っている者が殆どである。
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