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1話 遊撃第890飛行隊イーリス
1.予想外の飛行訓練
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アラスカから空中給油で横田基地までの道のりは地獄だった、夢にでも出てくるあの超長時間飛行は二度としたくない。だがこれからは多分楽になる、だって日本の防衛の補助程度だとこの配備の意図を指揮官に告げられたのだから…。
14:36
上官のジョニー中尉が訓練日程を読んでいた私に声を掛けて来た。
「メラニア少尉、暇なら飛ばないか?」
楽しそうに話すジョニー中尉はお菓子を私に渡してF-16指を指す。
「え……、今からですか?」
「そうだ、訓練名義の仕事を作らないとそろそろヤバいだろ?」
理由はどうあれ二日間離陸していない身だと確かに腕が鈍る、短時間の飛行らしいので乗る事にした。
…
エンジン始動後、電子機器を必要な範囲で起動させてから
サイドワインダーミサイルを主翼両端、主翼下のハードポイントにスパローミサイル左右1発の計4発のミサイルを懸架した状態の垂直尾翼の部隊を表す紅いF-16が私の機体だ。ジョニー中尉の同じ垂直尾翼のF-16はAN/ALE-50と呼ばれる牽引式の囮を追加で装備していた。
「空に上がれば太平洋側へ高度5万フィートまで上昇する、そこで飛行訓練を行う───じゃあ」
離陸許可を既に得ていたジョニー中尉の長機は僚機私より先に滑走を始める。
『イーリス4、離陸を許可する』
管制官の許可の音声と同時にスロットルレバーをミリタリーブラスト(アフターバーナー無しの最大出力)の位置まで押した。加速Gが身体に掛かり加速に問題は無いと実感する、離陸決心速度に到達した後は離陸安全速度へと加速した。
離陸安全速度へと到達した瞬間に一瞬操縦桿を引いた。外装品が少ない状態の軽い機体はそれだけで地上から離れ宙に浮く。
『こちら横田コントロール…イーリス3、イーリス4は高度2万4000、方位200へ進路を取れ、現在東京上空は貨物便とチャーター機が普段よりかなり多く沖に出るまでは注意せよ』
『こちら、イーリス3了解』
「イーリス4了解」
管制塔からの無線を受け視界だけでは無くてレーダーやデータリンクシステムの情報を見ながら低燃費を意識した飛行が2分続いた。基地から距離を取りそろそろ上昇許可を得ようと思った時に、レーダーの画面に異変が起きた。
「トランスポンダーの反応が無い、機が───」
当然、ジョニー中尉も承知している。通常はトランスポンダーによって自機の位置を送信するがレーダー画面に表示された進路上の飛行機はそれをせずに居た。
『こちら横田コントロール、国籍不明機が高度4万フィートで日本の防空識別圏を急速で突破した。最も近いイーリス3の飛行分隊は高度4万フィート、針路2-0-5に向け接触せよ』
『イーリス3、了解。針路2-0-5』
“日本の防空識別圏を突破した”、その言葉で緊張感が走る。
「これは長引きそうですね」
『…イーリス4、これは少し不味いかもな』
レーダーの反応が増えた。1つから4つへ、飛行小隊が日本領空へ接近していた。ふと、日本の地形を思い出し何かが引っ掛かりレーダーを再び詳細に見た。国籍不明機の先は───、
「国籍不明機がこのまま行くと横浜の基地上空へ、恐らく爆撃されてしまいます!」
本当に撃つかも知れない。
『そうだ、少し速度を上げるぞ』
ややジョニー中尉の機体が離れ付いて行く為に加速する。
『こちら横田コントロール!イーリス3、イーリス4、マスターアームオン!直ちに国籍不明機を撃墜せよ!繰り返す!国籍不明機を撃墜せよ!オールウェポンズフリー』
「なッ、オールウェポンズフリー!?」
まさか実戦になるとは思いもせず、私はつい叫んでしまった。
『落ち着け、イーリス3ウェルコ、マスターアームオン!』
「イーリス4、ウェルコ」
仕事をしていたと言い訳する為の訓練だったのに…しかも倍の機数、脱出の覚悟をするしかない。空対空モードに切り替えた。
『こちらイーリス3!スパロー、射程に入り次第撃つ』
『横田コントロール、了解』
私は国籍不明機をレーダー反射で機種を分析するモードで調べていた。そしてレーダー画面に表示されるまでは夕焼けの中、編隊を崩さない事に集中する。数秒後、一瞬計器が光ったと思い計器類を全て見回すとレーダー反応の箇所の点4つが全て“mig21”の文字へ切り替わっていた。
「国籍不明機は全てMiG-21、おかしい…Mig-21の搭載燃料的に太平洋側からだと無理が有るはずでは?」
『現にMiG-21が我々の目の前に居るんだ、何かしら方法が有るのだろうよ』
一旦飛来方法の疑念を払いスパローミサイルの射程までヘッドアップディスプレイ(以降HUDと呼称)の表示を注視して早まる気持ちを抑えて撃つ手順を確認する。
MiG-21は徐々に高度を下げ始めている、明らかな攻撃準備だ。
「…こちらとしては有り難い、最大射程に入ったらどうします?」
『運動エネルギーと位置エネルギー的には最高の条件だ、最大射程近くでも撃つぞ、3は右のを、4は左端を狙え。構わず撃て』
「4」
敵と近づき機密の観点から言い方を変えつつスパローミサイルの最大射程に入った。
『3、FOX-1』
先にジョニー中尉がスパローミサイルを撃った。私もロックオンをHUDを見ながら完了させた。
「4、FOX-1」
FOX-1の声と同時に発射ボタンを押した。主翼が軽くなった反動の振動と共にスパローミサイルの尾は白煙を噴射して一気に国籍不明機へ突き進んだ。
『こちら横田コントロール、国籍不明機はテログループの可能性が高い。昨日には中東の地方都市で国籍不明機による小規模爆撃が起きていたが同じ組織の可能性が高い。ミサイルの有る限り撃て』
『3』
「4」
つまりは了解した、とだけ伝えミサイルの誘導に全神経を使う、無駄口は叩かない。
スパローミサイルは左へ捻りながら下降する回避運動をし始めたMiG-21へ向かう。スパローミサイルは発射した母機がレーダーを対象に当て続け、跳ね返ったレーダー波を受信した方向に誘導される形式のミサイルの為、機首のレーダーを正面に向け続けなければならない。
「4左に逃げた目標を追う」
『3』
了承を得て目標に機首を向け続けた。レーダー画面を確認するとスパローミサイルは残り5秒もせず命中するだろう、目視は出来ないが回避機動の想像が付いた。
『3、スプラッシュ!横浜へ先に行くぞ!』
「4」
言った数秒後に目標の国籍不明機に命中した効果音が流れた。
「4、スプラッシュ!3に追随する」
初めての撃墜、思いの外何も思わなかった。
『3』
『▁▁▁▄▄▁██▀▀▀▀▄▄██▁▁▁▁▁▁』
混線した雑音がヘルメットの中に響いて耳が痛い。
「うるさ」
『おい、混線した俺に対する当て付けか?』
「………」
無視して黙々とジョニー中尉を追いながら国籍不明機レーダー反応を注視すると阻止限界までかなり接近している事に気が付く。
『3、FOX-1!FOX-1!』
ジョニー中尉からロックオンされた時点で国籍不明機のMig-21は回避運動を始めていた。動きが軽く、搭載兵装を投棄している可能性が有り、スパローミサイルが当たるかは微妙だが戦略的にはその時点で勝ちなので構わない。
「遅い」
残りの低空で突入を計るMiG-21に対するロックオンに掛かる時間に焦りから苛まされる。HUDの表示がやっとロックオンを知らせる表示に変わり赤い発射ボタンを押した。
「4、FOX-1!」
ロケットモーターの白煙を眺めながら機首を対象のMiG -21に向け続け誘導を維持する、MiG-21の進路は変わらず直進する速度を上げるだけだったから、私は確実に当たると決心した。スパローミサイルが命中までの慣性飛行は15秒も無かったのにその一時が長く感じる。
『3、スプラッシュ2』
ジョニー中尉が二機目の撃墜を報告した。
そして私のレーダーのMiG-21の表示とスパローミサイルの表示が重なった瞬間、命中を知らせる音が流れた。
「4、スプラッシュ2」
数秒、静寂が訪れる。
『3、4と共に任務完了、命令を請う』
『こちら横田コントロール、了解。基地へ帰還せよ、針路0-1-0』
『3、0-1-0』
「4、0-1-0」
ラダーペダルと操縦桿を同時に倒し旋回する。
「…こんな事になるなんて」
『ああ』
戦いは終わった、夜の静けさに奇妙な感触を覚えたまま横田基地に帰投する。1秒、1秒経つに連れ戦ったのが非現実的に思えた。
…
怒涛の報告、報告、報告。
私は正直これ以上人間の顔を見たくない程に現場で起こった内容を話させられた。レーダー越しでミサイル発射しただけでこんなにも情報を絞り出そうとさせられたのは流石、ちゃんとした軍隊だと思うがもうこんなことは二度と経験したくない気持ちで一杯だった。
寝室に入ってから2時間が経過した時、遠くからスクランブルの音が聞こえた。当直の部隊は離陸するべく準備をしているのだろう。再び寝に入ろうとする。
「はぁー」
中々寝付けない。起き上がり貧血で朦朧としながら外の様子を見る、他部隊のF-16が発進を丁度行っていた。
「新しくて良いなぁ───、うん?」
スクランブルにしては空対空ミサイル6本と重装備で、尚且つ増槽を3本積んだ状態で出ていった姿に、嫌な予感がした。もう1機離陸するが同じ装備をしている…滑走路は燃料を節約する為か目一杯使用していた。長距離作戦…空戦でもしに行くのかと思ってしまう。
「他は………あ、…え?」
その他にF-35Aが、2…否、4機が滑走路に進入していた。ステルス戦闘機が後続で4機編隊が…訓練では無い…これは後詰めの編隊だとしか思えない─────、実戦だ。
廊下から響く慌ただしい喧騒と駆け足の音が近づいてきた。そしてそれは見えないが端の方の同じ部隊のイーリス9の部屋の辺りでピタリと止まった。
「イーリス9、イーリス9、来い。やはり空母への襲撃が目標だったと思われる、お前の機体は既にフル装備にされている、来い」
「了解」
そうして駆けて行く足音が遠ざかる………テレビやインターネットで調べても、幾ら調べても全く軍事関係やその他事件の情報が無い。
「私も15時間以上後に戦いに行くのかな?」
割と軽い気持ちでパイロットになってしまったがかなり大事に巻き込まれたと苦笑せざる負えない、だがきっちり仕事は果たす。先ずはしっかり休み任務に備えるしかないだろう。
…
翌朝、朝食後に私が所属している飛行隊のパイロット全員、及び整備士長がミーティングに呼び出された。重々しい雰囲気の中、09:45から説明が始まるらしいとの事で、数分暇なのでミーティングルームに後から入ってきた同僚、イーリス2に話しかけてみる。
「おはよう、そっちはどうだ?」
私と白人の優男のイーリス2は双方とも無表情だがガッシリ握手して友好を確かめた。
「少し眠いよ、4時間眠れただけマシかも知れないけどね」
「…となると、ほぼ全員が交戦を?」
イーリス2は大きく頷いた。
「ああ、本来の俺達の配備目的はこの為だったらしいね」
深みを持たせた解釈を如何様にも捉えられる表情のイーリス2は……、
「ほう、ん?………!?、────アッ」
つい呆気ない言葉を発してしまった。
そもそも、良く考えたら隊員の本名を自分の所属している分隊の者しか教えられて居ない、今思い出したが3週間に1度、飛行隊の指揮官が2度異動にされていた、機密保持の観点か何かだとするなら話は繋がる…、
戦争の前哨だ。
次回「29,000フィートの戦い」
14:36
上官のジョニー中尉が訓練日程を読んでいた私に声を掛けて来た。
「メラニア少尉、暇なら飛ばないか?」
楽しそうに話すジョニー中尉はお菓子を私に渡してF-16指を指す。
「え……、今からですか?」
「そうだ、訓練名義の仕事を作らないとそろそろヤバいだろ?」
理由はどうあれ二日間離陸していない身だと確かに腕が鈍る、短時間の飛行らしいので乗る事にした。
…
エンジン始動後、電子機器を必要な範囲で起動させてから
サイドワインダーミサイルを主翼両端、主翼下のハードポイントにスパローミサイル左右1発の計4発のミサイルを懸架した状態の垂直尾翼の部隊を表す紅いF-16が私の機体だ。ジョニー中尉の同じ垂直尾翼のF-16はAN/ALE-50と呼ばれる牽引式の囮を追加で装備していた。
「空に上がれば太平洋側へ高度5万フィートまで上昇する、そこで飛行訓練を行う───じゃあ」
離陸許可を既に得ていたジョニー中尉の長機は僚機私より先に滑走を始める。
『イーリス4、離陸を許可する』
管制官の許可の音声と同時にスロットルレバーをミリタリーブラスト(アフターバーナー無しの最大出力)の位置まで押した。加速Gが身体に掛かり加速に問題は無いと実感する、離陸決心速度に到達した後は離陸安全速度へと加速した。
離陸安全速度へと到達した瞬間に一瞬操縦桿を引いた。外装品が少ない状態の軽い機体はそれだけで地上から離れ宙に浮く。
『こちら横田コントロール…イーリス3、イーリス4は高度2万4000、方位200へ進路を取れ、現在東京上空は貨物便とチャーター機が普段よりかなり多く沖に出るまでは注意せよ』
『こちら、イーリス3了解』
「イーリス4了解」
管制塔からの無線を受け視界だけでは無くてレーダーやデータリンクシステムの情報を見ながら低燃費を意識した飛行が2分続いた。基地から距離を取りそろそろ上昇許可を得ようと思った時に、レーダーの画面に異変が起きた。
「トランスポンダーの反応が無い、機が───」
当然、ジョニー中尉も承知している。通常はトランスポンダーによって自機の位置を送信するがレーダー画面に表示された進路上の飛行機はそれをせずに居た。
『こちら横田コントロール、国籍不明機が高度4万フィートで日本の防空識別圏を急速で突破した。最も近いイーリス3の飛行分隊は高度4万フィート、針路2-0-5に向け接触せよ』
『イーリス3、了解。針路2-0-5』
“日本の防空識別圏を突破した”、その言葉で緊張感が走る。
「これは長引きそうですね」
『…イーリス4、これは少し不味いかもな』
レーダーの反応が増えた。1つから4つへ、飛行小隊が日本領空へ接近していた。ふと、日本の地形を思い出し何かが引っ掛かりレーダーを再び詳細に見た。国籍不明機の先は───、
「国籍不明機がこのまま行くと横浜の基地上空へ、恐らく爆撃されてしまいます!」
本当に撃つかも知れない。
『そうだ、少し速度を上げるぞ』
ややジョニー中尉の機体が離れ付いて行く為に加速する。
『こちら横田コントロール!イーリス3、イーリス4、マスターアームオン!直ちに国籍不明機を撃墜せよ!繰り返す!国籍不明機を撃墜せよ!オールウェポンズフリー』
「なッ、オールウェポンズフリー!?」
まさか実戦になるとは思いもせず、私はつい叫んでしまった。
『落ち着け、イーリス3ウェルコ、マスターアームオン!』
「イーリス4、ウェルコ」
仕事をしていたと言い訳する為の訓練だったのに…しかも倍の機数、脱出の覚悟をするしかない。空対空モードに切り替えた。
『こちらイーリス3!スパロー、射程に入り次第撃つ』
『横田コントロール、了解』
私は国籍不明機をレーダー反射で機種を分析するモードで調べていた。そしてレーダー画面に表示されるまでは夕焼けの中、編隊を崩さない事に集中する。数秒後、一瞬計器が光ったと思い計器類を全て見回すとレーダー反応の箇所の点4つが全て“mig21”の文字へ切り替わっていた。
「国籍不明機は全てMiG-21、おかしい…Mig-21の搭載燃料的に太平洋側からだと無理が有るはずでは?」
『現にMiG-21が我々の目の前に居るんだ、何かしら方法が有るのだろうよ』
一旦飛来方法の疑念を払いスパローミサイルの射程までヘッドアップディスプレイ(以降HUDと呼称)の表示を注視して早まる気持ちを抑えて撃つ手順を確認する。
MiG-21は徐々に高度を下げ始めている、明らかな攻撃準備だ。
「…こちらとしては有り難い、最大射程に入ったらどうします?」
『運動エネルギーと位置エネルギー的には最高の条件だ、最大射程近くでも撃つぞ、3は右のを、4は左端を狙え。構わず撃て』
「4」
敵と近づき機密の観点から言い方を変えつつスパローミサイルの最大射程に入った。
『3、FOX-1』
先にジョニー中尉がスパローミサイルを撃った。私もロックオンをHUDを見ながら完了させた。
「4、FOX-1」
FOX-1の声と同時に発射ボタンを押した。主翼が軽くなった反動の振動と共にスパローミサイルの尾は白煙を噴射して一気に国籍不明機へ突き進んだ。
『こちら横田コントロール、国籍不明機はテログループの可能性が高い。昨日には中東の地方都市で国籍不明機による小規模爆撃が起きていたが同じ組織の可能性が高い。ミサイルの有る限り撃て』
『3』
「4」
つまりは了解した、とだけ伝えミサイルの誘導に全神経を使う、無駄口は叩かない。
スパローミサイルは左へ捻りながら下降する回避運動をし始めたMiG-21へ向かう。スパローミサイルは発射した母機がレーダーを対象に当て続け、跳ね返ったレーダー波を受信した方向に誘導される形式のミサイルの為、機首のレーダーを正面に向け続けなければならない。
「4左に逃げた目標を追う」
『3』
了承を得て目標に機首を向け続けた。レーダー画面を確認するとスパローミサイルは残り5秒もせず命中するだろう、目視は出来ないが回避機動の想像が付いた。
『3、スプラッシュ!横浜へ先に行くぞ!』
「4」
言った数秒後に目標の国籍不明機に命中した効果音が流れた。
「4、スプラッシュ!3に追随する」
初めての撃墜、思いの外何も思わなかった。
『3』
『▁▁▁▄▄▁██▀▀▀▀▄▄██▁▁▁▁▁▁』
混線した雑音がヘルメットの中に響いて耳が痛い。
「うるさ」
『おい、混線した俺に対する当て付けか?』
「………」
無視して黙々とジョニー中尉を追いながら国籍不明機レーダー反応を注視すると阻止限界までかなり接近している事に気が付く。
『3、FOX-1!FOX-1!』
ジョニー中尉からロックオンされた時点で国籍不明機のMig-21は回避運動を始めていた。動きが軽く、搭載兵装を投棄している可能性が有り、スパローミサイルが当たるかは微妙だが戦略的にはその時点で勝ちなので構わない。
「遅い」
残りの低空で突入を計るMiG-21に対するロックオンに掛かる時間に焦りから苛まされる。HUDの表示がやっとロックオンを知らせる表示に変わり赤い発射ボタンを押した。
「4、FOX-1!」
ロケットモーターの白煙を眺めながら機首を対象のMiG -21に向け続け誘導を維持する、MiG-21の進路は変わらず直進する速度を上げるだけだったから、私は確実に当たると決心した。スパローミサイルが命中までの慣性飛行は15秒も無かったのにその一時が長く感じる。
『3、スプラッシュ2』
ジョニー中尉が二機目の撃墜を報告した。
そして私のレーダーのMiG-21の表示とスパローミサイルの表示が重なった瞬間、命中を知らせる音が流れた。
「4、スプラッシュ2」
数秒、静寂が訪れる。
『3、4と共に任務完了、命令を請う』
『こちら横田コントロール、了解。基地へ帰還せよ、針路0-1-0』
『3、0-1-0』
「4、0-1-0」
ラダーペダルと操縦桿を同時に倒し旋回する。
「…こんな事になるなんて」
『ああ』
戦いは終わった、夜の静けさに奇妙な感触を覚えたまま横田基地に帰投する。1秒、1秒経つに連れ戦ったのが非現実的に思えた。
…
怒涛の報告、報告、報告。
私は正直これ以上人間の顔を見たくない程に現場で起こった内容を話させられた。レーダー越しでミサイル発射しただけでこんなにも情報を絞り出そうとさせられたのは流石、ちゃんとした軍隊だと思うがもうこんなことは二度と経験したくない気持ちで一杯だった。
寝室に入ってから2時間が経過した時、遠くからスクランブルの音が聞こえた。当直の部隊は離陸するべく準備をしているのだろう。再び寝に入ろうとする。
「はぁー」
中々寝付けない。起き上がり貧血で朦朧としながら外の様子を見る、他部隊のF-16が発進を丁度行っていた。
「新しくて良いなぁ───、うん?」
スクランブルにしては空対空ミサイル6本と重装備で、尚且つ増槽を3本積んだ状態で出ていった姿に、嫌な予感がした。もう1機離陸するが同じ装備をしている…滑走路は燃料を節約する為か目一杯使用していた。長距離作戦…空戦でもしに行くのかと思ってしまう。
「他は………あ、…え?」
その他にF-35Aが、2…否、4機が滑走路に進入していた。ステルス戦闘機が後続で4機編隊が…訓練では無い…これは後詰めの編隊だとしか思えない─────、実戦だ。
廊下から響く慌ただしい喧騒と駆け足の音が近づいてきた。そしてそれは見えないが端の方の同じ部隊のイーリス9の部屋の辺りでピタリと止まった。
「イーリス9、イーリス9、来い。やはり空母への襲撃が目標だったと思われる、お前の機体は既にフル装備にされている、来い」
「了解」
そうして駆けて行く足音が遠ざかる………テレビやインターネットで調べても、幾ら調べても全く軍事関係やその他事件の情報が無い。
「私も15時間以上後に戦いに行くのかな?」
割と軽い気持ちでパイロットになってしまったがかなり大事に巻き込まれたと苦笑せざる負えない、だがきっちり仕事は果たす。先ずはしっかり休み任務に備えるしかないだろう。
…
翌朝、朝食後に私が所属している飛行隊のパイロット全員、及び整備士長がミーティングに呼び出された。重々しい雰囲気の中、09:45から説明が始まるらしいとの事で、数分暇なのでミーティングルームに後から入ってきた同僚、イーリス2に話しかけてみる。
「おはよう、そっちはどうだ?」
私と白人の優男のイーリス2は双方とも無表情だがガッシリ握手して友好を確かめた。
「少し眠いよ、4時間眠れただけマシかも知れないけどね」
「…となると、ほぼ全員が交戦を?」
イーリス2は大きく頷いた。
「ああ、本来の俺達の配備目的はこの為だったらしいね」
深みを持たせた解釈を如何様にも捉えられる表情のイーリス2は……、
「ほう、ん?………!?、────アッ」
つい呆気ない言葉を発してしまった。
そもそも、良く考えたら隊員の本名を自分の所属している分隊の者しか教えられて居ない、今思い出したが3週間に1度、飛行隊の指揮官が2度異動にされていた、機密保持の観点か何かだとするなら話は繋がる…、
戦争の前哨だ。
次回「29,000フィートの戦い」
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