【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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会見には多くの記者が集まった

そして生放送で中継もされる

それほど叶響という俳優のスキャンダルは、注目を集めていた

「ではこれから、記者会見を始めさせていただきます。
質疑応答は後ほど時間を取りますので、その時にお願いします。」


司会者のその言葉の後に扉が開き、PEPの社長、弁護士、相田彼方、叶響、の順で入って来て席に着く

「今月23日に発売された『夕日集間』に掲載された叶響と相田彼方の同棲愛について、真実をお話するべくこの場を設けさせて頂きました。まず最初にお伝えしておきますが、2人が現在叶響の自宅にて、一緒に暮らしていることは事実です。」

社長の言葉に、会場にはどよめきが走りシャッター音が響く

「何故一緒に暮らす事になったのかは、2人から直接お話させて頂きます。補足は私が致しますので」

社長が相田彼方の方に視線を向けると、相田彼方は姿勢を正した

「皆様初めまして。PEPに約半年前に所属しました相田彼方と申します。
先程社長からもありました通り、僕は現在叶さんの自宅にお世話になっています。
何故まだ新人の僕が、叶さんの自宅にお世話になっているかと言うと………」

相田彼方は1度深呼吸をする

「順序だててお話いたします。
元々PFPは所属して半年はマネージャーが付かない為、叶さんのマネージャーである畠山志野さんがサポートしてくれていました。しかし、志野さんは元々叶さんのマネージャーですので、叶さんが海外の仕事に行く時に海外へ付き添い2か月渡米しました。
志野さんが僕の傍から離れた後、僕はある人達からキャバクラやクラブに誘われるようになりました。
社長や志野さんとの約束で、そう言った誘いにはのらないよう言われていたので、毎回断っていました。」

濁してはいるものの、記者の中には誰が誘ったか知っている者も多い

「誘いを断り続けると、今度は嫌がらせが始まりました。すれ違いざまに体当たりされたり、足を引っ掛けてきたり。僕が彼らを避るようにしたら、次はロッカーに入れていた物が無くなりました。その時からロッカーに鍵を取り付け、私物は持ち帰るようにしました。
それでも、稽古場に持ち込んだものが無くなったりはありました。
そんな事が1月半続いて、何故かパタリと嫌がらせが止みました。
その数日後……僕は稽古の後、細井マネージャーに自宅へ送って貰う為に車に乗り込んだんですが………」


何かを思い出したのか顔色が悪く、言葉に詰まった相田彼方の背中を、叶響が優しく撫でる

「………細井マネージャーは僕を自宅ではなく、隣県の山の中へと連れていきました。
何処に行くのか、何が目的か聞いても答える事も無く、真っ暗な山道を進んで、行き止まりになった所で車が停りました。
細井マネージャーに車から引きずり下ろされ、そのまま山の斜面へ突き落とされました。」

相田彼方の言葉に驚きを隠せない記者達は、メモを取る手も止まってしまっている

「斜面を転げ落ちて、僕は川に落ちました。幸い水嵩が脹脛までしかなかったので溺れることはありませんでした。
身体中痛かったけど、とにかく麓まで行かないとと、川に沿って歩きました。
誰かに連絡を取ろうにも、荷物は車の中だったので助けも呼べなくて…
真っ暗だったので、何度か斜面を転げ落ちたり川に落ちたりしました。
意識が朦朧としていて、最後の方は記憶が曖昧ですが、滝のようになっている所に出た…と思います。
そのまま気を失って…気づいたら、見知らぬ家の布団の中でした。」

叶響と相田彼方の同棲愛についての会見が、まさか相田彼方が殺されかけていたという事件の暴露に、各新聞社は記事の差し替えを指示する為ICレコーダーを席に置いたまま会場を出たり入ったりとバタついた

「僕を助けてくれたのは麓のお爺ちゃんで、山菜を取りに行った先で、僕を見つけてくれたそうです。
お医者さんを呼んでくれましたが、怪我が酷く、川に落ちた事で風邪を引き、高熱が3日程続きました。
熱が完全に下がったのは保護されて6日目です。
熱が下がり、お爺ちゃんと縁側で日向ぼっこをしていたら、叶さんが……叶さんが迎えに来てくれました。」

相田彼方は目に涙を溜め、柔らかな笑みを見せた

「彼方が行方不明になったと知らせを受けた時、まだアメリカにいた私は直ぐに警察へ捜索願いを出すよう社長へ進言しました。
そして志野を先に日本へ帰しました。
警察は捜索願いを出したのにも関わらず、捜査を開始したのはそれから2日後。
あまりにもずさんな捜査しかせず、志野が警察とのパイプ役になって、しっかり捜査をしてくれるよう再三要求しました。
私の撮影もほんの僅かだったので、スケジュールを早めてもらい、志野の帰国から1週間も経たずに日本へ戻ってきました。
そして彼方が隣県の山の方へ連れていかれたとわかったのが、行方不明になって6日目の深夜、私が日本に戻ってきた日です。
それでも警察は、隣県の警察署に応援を頼むから、捜索には暫く時間がかかると言いました。
彼方が生きているかも分からない状況で、これ以上待つことはできないと、私は社長から報告を聞いたその足で隣県の山へ向かいました。
朝方に着き、山の麓の村で聞き込みを始めると、彼方を保護してくださっている方に出会う事ができ、彼方を迎えに行くことが出来ました。」

叶響は眉間に皺を寄せそう語った

「警察は初動捜査の段階で、彼方が家出をしたものと決めつけ殆ど捜査をしてくれませんでした。細井マネージャーの『出かけるから駅前に降ろして欲しいと言われ駅前で降ろした』との証言を鵜呑みにし、志野から駅前の防犯カメラをチェックするよう話をして、初めて駅前の防犯カメラに彼方が映って居ないことが判明しました。
そこでやっと、彼方が家出ではなく事件に巻き込まれたのだと、警察は捜査を始めました。
細井マネージャーの証言が嘘の可能性が高く、警察は細井マネージャーをマークし始めました。
しかし日にちだけが経ち、こちらから再度細井マネージャーの車が、店や家に取り付けられている防犯カメラに映っていないか、それを辿れば彼方の居場所が分かるのではないかと警察に確認してもらいました。
そして響が日本へ戻ってきた同日、細井マネージャーが姿をくらました事と、彼方が隣県の山の方へと連れていかれたようだと深夜2時半に警察から連絡が来ました。」

社長は言葉を切り、ペットボトルから水を飲む

「彼方を迎えに行きそのまま病院へ行きました。
彼方の足は斜面から何度も転げ落ち、暗闇を歩き回った事で、靭帯を損傷し、完治まで数ヶ月かかるとの診断でした。
彼方は1人暮しで、松葉杖が無いと歩き回れないし、2週間は安静にしなければならなかった。細井マネージャーが捕まっていない状態で自宅へ戻すことは出来ませんでした。
私のマネージャーは新婚で、そこに彼方がお世話になると、彼方の方が気を使ってしまうので、私の家で預かることにしました。
現在怪我は癒えましたが、細井マネージャーは未だに逮捕されていません。
彼方の身の安全を第1に考え、セキュリティのしっかりしている私の家に、今も住んでいるのです。」


響の言葉に「なるほど」と記者からは声が漏れる


「ではここで、今までの部分での質疑応答を行います。質問のある方は挙手後、マイクをお渡ししますので所属会社とお名前の後に質問をお願いします」


そうアナウンスが入るとこぞって記者達は手を上げる

「東井新聞社の赤坂です。相田さんは来月行われる舞台に出演されますが、オーディションの時無理をされていましたよね?もう完全に治りましたか?」

オーディションを見に来ていた記者だと相田彼方は気づき、ニッコリ微笑んだ

「はい、オーディションの時は記者の方々にも無理をするなと叱られたので、ちゃんと安静にし、リハビリも過度なことはせず、現在は万全の状態です。」

質問した記者は「良かった」とニコリと笑った

「月報ビーナスの田崎です。細井マネージャーというのはどういった方なのでしょうか?」

この質問には社長が答える

「私共の事務所は、ランク付けがあります。
SABCDEFと7つランクがあり、細井はEとFランクのマネージャーをしていました。
Eランクは2年の間に少し仕事がある者、Fランクは全く仕事はないが、稽古に毎日参加している者です。
この2つのランクを細井マネージャーを合わせた4人のマネージャーが担当していました。
志野が響に付き添って海外へ行っている間、彼方の送迎だけ細井マネージャーに任せていました。」

「何故そんな人が相田さんを……」

「それについては後ほど詳しくご説明します。」

弁護士がそう返答し、質疑応答が続く

既に同性愛からの同棲では無い事がわかったので、あの記事はデタラメだと、特に叶響にも相田彼方にも今のところ聞く事はないという雰囲気なる

が、そうじゃないのが叶響の同棲愛をすっぱ抜いた夕日集間の記者だった

「叶さんにお尋ねします。今まで同業者と必要以上に関係を持たなかった叶さんが何故、新人の相田さんをそこまで気にかけるのでしょう?やはり相田さんに特別な思いを抱いているからでは無いんですか?」

ニヤニヤと嫌な笑みで質問する

「そうですね……特別……ではありますね。彼方は故立川龍之介さんが生前共演を願っていた人物でした。私は12月に上演される映画で、彼方と共演する事ができました。
立川さんが共演を願う程の才能が彼方にはあった。
事務所に入り、演技の勉強を始めた彼の成長は素晴らしく、私は俳優『相田彼方』に骨抜きにされました。この才能を、元マネージャーに奪われるなんて許せません。
私にできる事があるなら、力を貸したいと思っています。」


「でも!別に叶さんが自宅に住まわせなくても良いでしょう?実家や親戚だっているでしょうに!」

自分達の記事を完全否定され焦りや怒りを顕にした記者は声を荒らげた

「……僕には...家族は居ません。両親は中学の時に事故で亡くなり、2年前祖母が亡くなった際に親戚とは縁を切る事になりました。」

悲しげにそう話した相田彼方の背中を労わるように撫でる叶響

そんな2人にまだ質問をぶつけようと口を開く記者に、周りの記者から「これ以上口を開くな!」とヤジが飛んだ

あちらこちらから飛ぶヤジに顔を真っ赤にした夕日集間の記者は会場を出ていった


その後、相田彼方に起こった事件の全容が弁護士によって語られた


明日の各社の新聞の1面はこの事件を取り上げるだろう



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