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SIDE セイ
しおりを挟むリビングダイニングルームへ戻ると、樹さん達が戻ってきていた
やはり隠し金と宝石があったらしい
璃一を紹介し皆で昼食を食べた
璃一を膝に乗せたまま背中から抱き締めて兄ちゃんは璃一と一緒にご飯を食べた
ソファーに背凭れはあるけど、凭れると肋骨が痛いようで半泣きになる璃一に兄ちゃんが慌てて膝の上に乗せた
お腹の傷が開いていないか静流が確認してくれたけど問題なかった
食事をしながら静流と今後の璃一の治療計画を話し合った
知識が豊富で俺と違う視点で見て気付いたことを色々と教えてくれた
会長としてだけじゃなく医者としての顔もとてもカッコ良かった
食事が終わり、眠たそうにする璃一にこれから皆で隣りにある建物に行ってくるからその間お昼寝するよう言う
いつもの様に睡眠薬を微妙に混ぜた点滴をする
これで3時間は眠ったままだ
俺達は母屋へやってきた
組長達を裁くのが目的だが、その前にやる事があると静流が橘組の組員を全て集めろと言うので現在宴会場になる部屋には60人もの組員と麒麟会の組員20名それに俺達が集まっている
組員は初めて見る会長に釘付けで部屋はシンと静まり返っている
「今回私達がここへ来たのは、矢沢組が薬の売買をしていた件とそれに伴って明らかになった橘組の横領について会長自ら裁くためです。」
旬さんの言葉にざわめき出した
驚いた顔をする者や我関せずの者、青褪める者や苦虫を噛み潰したような顔をする者
反応はいろいろだ
「そこで、この責任を組長、姐、本部長、若頭の4人に取ってもらうことになりました。先ずは若頭ですが地位剥奪と共に盃の返上。二度と橘組を継ぐことはありません。」
組員のざわめきはより一層大きくなる
「ここまでで質問がある者は?」
真っ先に手を上げたのは佐山だった
「若頭が後を継が無いということは、橘組が無くなると言うことでしょうか?それともセイさんが跡継ぎに?」
「そうですねぇ………今回組自体は取り壊しにはなりません。セイ君はカタギですから後を継ぐことは有り得ません。組長もまだ50代でお若いですから、これから跡継ぎを作ればいいんじゃないですか?
ただ、組長が死ぬまでに跡継ぎが居なければ組は取り壊しになりますが。」
旬さんは淡々と答える
その答えに数人安堵の表情を浮かべた
他からも質問が上がる
「組長達3人の処分は?」
「若頭の今後は?」
「この組の大半が若頭の会社で働いているけどどうなるんすか?」
などに旬さんが答えていく
「組長達に関しては現在検討中です。他の傘下に示しを付けなければなりませんから。その為に若頭の処分を優先しました。
若頭の今後は本人の意向も視野に入れ数日の間に決定します。組員達のシノギについては会長からお話があります。」
旬さんがそう言うと、部屋はまた静寂に包まれた
「今から一人づつ面談を行う。組長にこれからもついていきたい奴はそうすればいい。
もしカタギに戻りたい者が居れば今回だけ特例としてケジメも無しで職業も紹介する。
面談の時に伝えるように。
全員に部屋を準備させたから呼ばれたら来るように。
勝手に部屋を出る事やスマホで連絡を取り合うことは禁止とする。
自分のこれからの人生だ。自分で責任を持って決めろ」
静流はニコリともせず冷たい眼差しで終始組員を見ていた
いつの間にか派閥リストなる物が作られていた。
それに沿って面談して行くらしい
面談は2つに分ける
会長と光一さんが行う面談
こちら側に呼ばれたら、兄ちゃんに付いてくる覚悟があるか試される
合格したら、晴れて兄ちゃんと一緒に麒麟会本家へ行く事となる
もう一つの面談会場で待ち構えて居るのは、旬さんと俺
麒麟会の組員さんに協力してもらい、組長・姐派の組員を一人づつ旬さんの愛用拷問器具にかけて情報を引き出す事になったのだ
若頭派のフリをした組員をあぶり出す為でもあるのだ
静流曰く一人でも取り逃がせば、後々災いを招くのだとか
俺の仕事は、嘘発見器をつけ脳波を調べる役
実際に嘘発見器を使う訳ではなく、使われていると錯覚させるのが俺の役割なのだ
なのでしっかり相手を観察しなければならない
静流から人が嘘をつくとき、それが体に現れる事を教わった
ほんの些細な行動だからちゃんと見て置かなければならない
何度か練習をした
付け焼き刃なので不安はあるが、静流からは太鼓判を押してもらえた
兄ちゃん達が練習台になってくれたのだが、皆嘘をつくのが上手くなかなか難しかったが、静流の言うポイントを確認すれば嘘をついていることが分かった
心理学の分野にも興味が出た瞬間だった
「セイ」
各自持ち場に行く準備をしていると、静流に呼ばれた
「どうしたの?」
「今から言う事をよく聞いて。『セイは俺にとって無くてはならない存在だ。セイの代わりは誰にもできない。他の人の言葉は信じないで俺を信じて。』わかった?」
鷹のような目に吸い込まれそうだと思いながら、頭の中は静流の言葉が何度も廻る
「うん」
「覚えておいて、セイは龍洞静流にとって特別な存在だという事を。」
「特別な存在……?」
「そうだよ。その事を知ってるのは、晶・旬・光一・神威・春人・樹だけだから知らない奴が何を言っても事実じゃないからね。」
「わかった。」
俺が頷くと静流は頭を撫でてくれた
「いい子。何か有れば大きな声を出すんだよ?部屋の外に麒麟会の組員を配置してあるからね。」
「うん、旬さんも一緒だから大丈夫だよ。」
どうしてわざわざ『特別な存在だ』と話してくれたのか、俺はこの後理解するのだった
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