地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき

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律side

その日はよく晴れた日だった。


母さんから"律と皇にお兄ちゃんができるよ!"と言われたその日だ。


(お兄ちゃん、ね······)


別に今まで兄が欲しいとは考えたことがなかった上、自身に弟が居るから欲しいかと聞かれたら"要らない"と答えていただろう。


でも、母さんがその事を凄く楽しみにしていた。


だから断ることは出来なかったし、特に断る理由もなかった。


「母さん。兄になる人ってどんな奴?」


「ん~」


母さんは少し考えてから話した。


「そうねぇ、一言で言うと天然美人!ってとこかな。」


「天然美人?」


それは、さほど顔が良い?って事か?


「零君はね、あ、その子の名前ね。零君はがきっかけで色んな事が怖くなっちゃった子なんだ。」


俺は何も言わず、母さんはそのまま続けた。


「でもね、彼はたとえ自分が何をされようと、相手を悪く思わないの。

可笑しいと思うわよね?私も初めはそう思ったの。

でもね、彼は"俺が虐められる理由は深く、理解はできていないけど、誰だって自分を守りたいのは同じだと思うから。"って言ったの。」


「··············」


「律。意味分かる?」


「分からない。」


(だって、可笑しいでしょ。)


「それってどんな理由があっても虐められるのはしょうがない。って言ってるようなもんだろ。」


俺がそう答えると母さんは少し悲しそうな顔をした。


「そうね。あの子は優しすぎるのよ。
優しすぎて、心配になるの。」


「そ、なんだ。」


優しすぎて心配、か。


「それでね、律。零君は今人を信じる事があまり出来ないの。だから、仲良くしてほしいの。
······同情って言われるかもだけど、あなた達と仲良くして欲しいっていうのが本心だからね。」


「·······分かった。」


正直全く納得していない。


同情でも、俺がそいつの立場だったら余計なお世話だ。


でも、母さんがそこまで言うなら、と思い今日会うことにした。


*****


その日の夜、リビングに集められた俺と皇は零という奴と初めて顔を合わせた。


第一印象は"綺麗な男"だった。


恐らく身長は俺と10センチほど違う。


俺の身長が170位だから160位か?


膝までの黒い短パンと白い半袖のTシャツはそいつの肌の色をより1層目立たせてた。


前髪をあげているせいか、よく見える瞳は吸い込まれるように綺麗な色をしていた。


加えてサラサラな髪には天使の輪が出来ていた。


華奢な体で俺はきっと軽く持ち上げることが出来るだろう。


そんな事を思った。


「俺は、律です。よろしく。」


ぶっきらぼうに挨拶をしてしまい少し後悔をした。


続いて皇も挨拶をした。


「こ、皇で、しゅ。····お願い、し、ます。」


(噛みまくりかよ。)


「俺は、留盛零。よろしくね。」


凛とした声だった。


高2とは思えないほど透き通って耳あたりの良い声だった。


不意にもそいつの顔と声に見惚れてしまった。


それは5歳の皇も同じだったらしい。


(······仲良く、なれそうだ。)


不覚にもそう思ってしまった。



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