地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき

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最近、朝起きるのがだるく感じる。

昨日は、胸の辺りがヒリヒリしていて、今日はお尻の方に違和感を感じる。

(····俺、なんかしたっけ?)

ベットから起き上がり、体を下ろす。

いつも通り、身支度をし、制服に着替え1回へ降りる。

「おはよう。」

リビングのドアを開けて、挨拶をする。

「あら、零君!おはよう!」

「おはよう。零君。」

晴子さんと涼太さんが居た。

「あら?零君、体調悪い?」

「え?」 

思わず聞き返してしまった。

「なんか、顔色があまり良くないから···」

「いえ、大丈夫です!」 

そう、返事はするものの内心ヒヤッとした。

(そんなに、顔色悪いのか···?)

疑問を持ちながらも、テーブルに置かれた朝食を取り、律と皇が起きるよりも前に家を出た。

今日は、日直だから早めに行かなければならないのだ。

歩いていると、手に持っていたスマホが揺れた。

律からだった。

『なんで、朝先行ったの?』と、一言。

『日直だったからさ。』と返す。

律は怒っているのか、リスの怒っているスタンプを送ってきた。

だから、俺は謝っているスタンプで返した。

学校に着くと、教室にはまだ、誰も居なかった。

静かに席につき、窓の外を眺める。

(·····律達と、暮らし始めて、随分経つな··)

不思議と、早い気がした。

今はまだ、律達家族に甘えられる。でも、大学生になったら、それはもう出来ない。

きっと、一人暮らしをする事になる。

まだ、将来のことは分からないし、自分が何になりたいのかもさっぱりだ。

(·····こんなんで、大丈夫、なのか···)

自分を自分で心配する羽目になった。

俺が相変わらず窓の外を眺めていると、ガラガラと勢いよくドアが開き、1人の女子生徒が入ってきた。

彼女はズンズンと俺の方へ寄ってきた。

そして、

バチンッ

勢いよく俺の頬を叩いた。

(·······え、)

状況が理解出来ず、ただ呆然としているだけだった。

すると、彼女は、顔を上げて涙を溜め込んだ目で俺に訴え掛けた。

「····たが、·····あんたが律君の家に入り込むから!私が、·····私が振られるんじゃないっ!!」

そう、大きな声で叫んだ。

「·····え、何が···?」

彼女が何を言っているのか分からないが、律の名前が出てきて、振られたってワードがあって····

「とぼけないでっ!!あなたが、律君の家に住むようになってから、彼は····変わってしまったの!!」

とても苦しそうな顔だった。

「·····君は、···律の彼女なの?」

ヒリヒリと痛む頬を抑えながら聞く。

すると、彼女はスカートを握りしめて、涙を零した。

「·····そうよ。·····私はねっ、··バスケをやっていたの···でも、足の怪我が酷くて、もう、出来ないの···。
 
そんな時、律君のプレーに励まされて、一目惚れをしちゃったの!年が離れてても、好きなんだもん。····必死にアプローチして、去年の夏からやっと、付き合えたのっ!

それなのに、急にあなたが現れてから、彼はあなたを優先するようになった。」

「律君は、私の事····好きじゃないのかもしれない。···でも、それでもっ·····私にだけ見せてくれる、泣き顔が····私だけの特権で·····、そういう部分全て好きなの···」

彼女の言葉に、時折、胸が痛む。

(·····俺だって····見たことあるし···)

「家族になったからって、いい気にならないで!私から律君を奪わないで!初恋の人なのっ!私の支えなの!大切な人なの!

あなたが居るから!あなたさえ居なければ良かったのよ!はやく、···はやく何処かに行ってよ!!」

(「あなたさえ···居なければ···」その言葉が頭の中でずっとリピートしている。)

そして俺はただ、彼女の話を聞くことしか出来なかった。

でも、彼女にとって俺という存在は邪魔らしい。

(·····分かる、分かっちゃうんだよな。)

大切な人が自分から離れていく、失ってしまう····その喪失感。

胸がはち切れるほど、苦しい。

痛い。

(····あぁ。この子は本当に律が好きなんだな。)

俺は気づいてしまった。

今のこの時間で、この少ない時間で、自分の気持ちが。

(·····俺は、····律が好きなんだ····)

だから、だからこそ律には、在るべき姿でいて欲しい。

まだ、先は長いんだ。無駄な時間を俺に使って欲しくない。

俺は、胸の痛みに耐えながら、

「····うん。分かった。」

「え?」

「律には、俺から言っておくよ。だから、安心して。もう、今みたいな思いはさせない、から。」

笑顔で言った。


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