幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ

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魔法少女のお通りだよ

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セデル村は、カール侯爵領のはしっこにある。
貧乏な田舎の村で、何もない……と思われがちだけど、最近はちょっと事情が違ってきた。

だって、うちの家の中が便利になりすぎているからだ。

「お嬢様のおかげで、掃除が一瞬で終わるようになりましたよ」

マール婆さんはにこにこと笑って、壁際の魔道具を撫でる。壊れて埃をかぶっていた魔道具を、私がちょいと魔力を流して直すと――あら不思議。勝手にほこりを吸い込んで、床までぴかぴかになってしてしまう。
お風呂も台所も魔道具で快適だし、壁もカーテンも新品同様。
空調の魔道具だってある。
そんなわけで家の中はぴっかぴかだけど、外側は相変わらずのボロ家。外の壁はひびだらけだし、屋根瓦なんて欠けたまんま。だから、外から見た人は「貧乏くさい家だな」としか思わないはずだ。

「見かけはそのままがよろしい」

ゴフじいさんはそう言う。

「表立って豊かになってしまえば、誰かの目に留まりますからな」

そうやってじいさんは、「壊れた魔道具」をせっせと買い集めてくるのだ。見た目はガラクタ、でも中身は宝物。私が直せば、どれも便利に動き出す。

「ゴフじいさん、それって怪しまれません?」

「ふふ、ヘンリー様のおかげでアルステッド家がおかしなものを買っても誰も怪しみませんよ」

なるほど。言われてみれば確かにそうだ。父様のカモられ買物癖は商人の間では有名だろう。




カイル兄様と一緒に村を歩く。ひなびたセデル村は、いつも通りのんびりしている。畑の緑と、風に揺れる木の葉の音。それだけで世界が回っているみたいな、そんな村だ。
でも、私は決めているのだ。立派な施政者である父様を見習って、私も村に貢献しようと。決して、決して、ゴフじいさんの勉強から逃げたいわけではない。うん。そういうことにしておこう。

「ふふふふふーん♪ 困った事はありませんかー? 魔法少女リナにお任せですよー!」

私は相棒のステッキを振り回しながら道を歩く。もちろんこれは父様が“魔法が使える”と騙されて買った杖。実際はただの木の棒だった。試しにリペアの魔法をかけてみても特に変化はなく、まあ予想通り。
でも私はこれを、魔法少女の必需品“ステッキ”として愛用している。

「……魔法が使えるってこと内緒じゃなかったのかよ」

隣でカイル兄様がぼそっと言う。けれど私は気にしない。大事なのは雰囲気なのだよ。
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