余命マイナス3ヶ月

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余命マイナス3ヶ月

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私のお母さんは、いつも私のことを無視する。

 ねぇ、お母さんはどうしていつも私の話を聞いてくれないの? すぐ隣にいるのに...

ただ、この状況になってから日が浅いわけではない。かれこれ3ヶ月が経とうとしていた。3ヶ月前までは、普通に接してくれていたのにある日を境に何も答えてくれなくなった。

 その日、何が起きたのか私にはわからない。いや、わかりたくないだけなのかもしれない。思い出したくない。理解したくない。真実を知りたくない。

 今の私はただ、現実から目を背けているだけなのかもしれない。

 だって私はただお母さんと一緒にいたかっただけなのに。

 あの日、車の多い道の真ん中で転んだ私を助けようとしたお母さんが自分の身を犠牲にしようとしていたことは考えなくてもわかった。必死な顔で私のそばに向かって来ているお母さんの背景には大型のトラックが走って来ていた。

 私は自分だけ生き残るのが嫌だった。一人で生きていくなんて考えられなかった。

 私は、走ってくるお母さんを足で引っ掛けて転ばせた。お母さんは反対車線の道路にうつ伏せで倒れ込むと傷だらけの状態で私の方を見てくる。

 涙を流しながら私のことを見るお母さんを見ながら、私は車体が大きく急ブレーキが間に合わなかった大型トラックに轢かれた。

 それから私のお母さんに無視される生活が始まった。

 自分のした事なのに、それを受け入れられない。現実逃避をし続ける。そんなことをしているからお母さんに無視されてしまうのだろう。

 でも、無視されているとしても私はお母さんのそばを離れなかった。だから、どんな時でもお母さんはそばにいた。

 ただ、どれだけそばにいるとしてもお母さんに触れようとすることだけはしなかった。もし、お母さんの手に触れようとして私の手がお母さんの手をすり抜けてしまったら、私は立ち直れなくなってしまうのではないか。そんなことを考えていると、自然と触れようとすることが怖くなっていた。

 私は、今お母さんがそばに居るだけで充分幸せでいれる。そう思いこの3ヶ月を過ごした。


 
 その時、履いていたヒールが道の真ん中のマンホールに挟まりお母さんが転んだ。周りからは心配の声が上がる。するとお母さんの転んだ場所からは少し離れた場所が騒がしくなっていた。何事かと振り向くと、こちらに曲がってきた大型トラックが目の前のお母さんに気付かず走って来ていた。

 大きな声で止まれ!と周りの人達が言うが、運転手は全く気付かなかった。

 私は咄嗟にお母さんの元へ走った。この触れられるかもわからない体だとしてもお母さんを助けられると信じた。

 急いでお母さんの側まで走り、手を掴もうとした瞬間、急に体が軽くなった。足が地面につかず、そのまま私は反対車線へうつ伏せで転んだ。

 鼻を強くぶつけ無意識に抑えられない涙が溢れ、手と足は傷だらけ。とてもすぐに立てる状態ではなかった。

 すぐお母さんの方へ振り向くと、片方の足を私の通った場所に出していた。

 え? どうして?

 その姿を見た瞬間、私は涙が止まらなかった。

 私はお母さんを助けようとしたのに。私の大切なお母さんなのに。どうして?

 その瞬間、私の頭に3ヶ月前の出来事が過った。

 これが...あの時のお母さんの気持ち... あの時私がお母さんにしたこと... ごめんなさい...お母さん。だから行かないで...

お母さんは私の方を見てはくれなかった。

 トラックは止まることなく、お母さんの上を通り過ぎた。その後、私はお母さんの方を見ることはできなかった。

 あの時と全く同じだった。私はお母さんが轢かれた事実を認められない。現実を受け止められない。

 こんな状況になっても何も変われていない自分が嫌になりそうだった。

 今現実を受け止めたところで何もいいことは起きない。だからと言って現実逃避をし続ければ私は何も変われない。

 その瞬間、お母さんの気持ちが頭をよぎった。

 何も変われないじゃない。変わらなくていいの。今のままでいいの。

 お母さんは、現実逃避をしている私を助けてくれた。現実逃避している私を認めて、変われないと悩んで居る私を助けてくれた。

 たとえ同じことを繰り返すことになっても、お母さんが守ってくれたこの体を大切にし、今の私のまま生きていければそれでいい。

 それが私の大好きなお母さんの望み。

 私の寿命はまた、マイナス3ヶ月伸びた。




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感想 1

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みんなの感想(1件)

このユーザは退会済みです

こういう作品は、他で続けて書いてるんですか?素晴らしい作品でした。

2022.06.09

ありがとうございます!
今は続けて書いてはおりませんが、今後また書いていこうと思ってます!

解除

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