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第一章
32 過去と現実
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これは俺たち、騎士と早苗と來未が出会ったばかりの時の話。ちょうど小学生になるときの話だ。
転勤族の早苗が俺と來未のすぐ目の前に家に引っ越してきた。同じ学校で同じクラス、帰り道も同じ。自然に三人で遊ぶようになった。そして、三人で毎日のように遊んだ。
それから学年が一つ上がって二年生になったばかりの時。
來未が別の事をして遊んでる中、紀伊はさねえに話しかけた。
「ねー何見てるの?」
來未の部屋で一人スマホを真剣に見ている早苗は騎士の言葉に気付いていないのか反応しない。
覗き込むと画面にはアニメが映っていた。見たこともない綺麗な絵に心打たれた騎士は早苗と同じように黙って映像に見入っていた。
こうやって俺は早苗と同じようにそのアニメにはまっていった。短髪と長髪の男の二人組が主人公の物語で、二人はユニットを組み歌の力で悪と戦っていた。
俺はそんなアニメで早苗と盛り上がり自分たちでユニットを組もうという話まで盛り上がった。たまたま推しの主人公が被らなかった俺たちは別々の主人公になり切ってよく遊んだ。
そして夏休みに入る時。早苗の転校が決まった。
突然の事で実感がわかなかった。これで最後、これが最後の別れになるんだって、当時の俺は呆然としていたんだと思う。
目の前で車に乗り込むと車がゆっくり動き出していくその光景を力なくただ見つめていた。すると窓が開くと早苗が見お乗り出して俺に叫んだ。
「次あう時はセッションだ!」
そのフレーズがアニメのセリフということは直ぐに分かった。なぜなら俺たちが推していたアニメだからだ。
それから俺はそのキャラクターに憧れて髪を伸ばしギターを買った。あのアコギはその時から。今思えば俺が長髪を好きな理由、長髪になった理由はこの時かもしれない。
そうれから三年生になった俺の髪はだいぶ伸びた。
クラス替えもあって友達が少なくなった俺はラスで浮きいじめられるようになった。
変わり者はいじめられる。それでも俺はこの髪を切りたくなかった、好きだったからだ。俺にとってのアイデンティティみたいなものだ。
菌扱いされ、煙たがられ、嫌われる。歩くたびに笑われ噂話をされる。俺の友達は消え全員が敵になった。
俺と関われば嫌われる標的にされる。俺は皆の遊びの標的。
ボールを当てる的。だけど俺は笑って受けた。
自分は皆と仲良く遊んでいるだけなんだと言い聞かせ、自分を偽り耐え続けた。
学年が上がれば解放されると思った。そして四年生になった時、來未が同じクラスになった。
これで少しは変わるかなと思ったけどそんな事はなかった。いじめは続いた。
嫌われたくない、仲間外れにされたくない來未も周りの人と一緒に俺をいじめた。
でも、來未とは家が近所で幼馴染。そんな噂は一瞬に広がり、來未も兵衛機になりそうになった。
だから俺は來未の事なんて知らないと言った。そして來未は周りに流されるまま給食のお盆をかけた。服がびしょ濡れになって少し扱った。それのおかげか來未はいじめられなくて済んだが、その件でいじめはエスカレートしていった。
そして五年生になった時、一人の子が俺のいじめを先生に伝えた結果、いじめは収まった。
俺は何度も髪を切ろうと思った。この髪のせいでと、髪を呪ったこともあった。それでもはさみで自分の髪を切ることができなかった。
自分の大切なものを切るなってできなかった。大好きだった長い髪を嫌っている自分自身が許せなかった。
俺の心を支えてくれたのはあのアコギだった。たった一人の寂しい時間をいつもあいつが埋めてくれた。
六年生になってもういじめはなくなった。皆に認められたお陰で友達も増えた。
これからは幸せだって、まともに送れていなかった学校生活がやっと送れる様になった。特に中学からは部活動もある。一からやり直せるそんな中学を俺は楽しみにしていた。
けど結果は違った。本当に辛いのはここからだった。
知らない学校の生徒が合流し、ほとんど知らない人ばかり。過度ないじりを笑って耐えた結果、エスカレートしていきいじめへと変わっていった。
被起用食いは壊され、毎回椅子がどこかに行く。ノートと教科書、筆箱体操服、何度も踏みつけられゴミ箱に捨てられる。おもちゃのようにゴミ箱に向かって投げていく。
女子はすれ違うたびにキモイ、無理、やば、と囁く。こっちを見て嫌な悪態をつき、ひそひそと聞こえる声で悪口を言う。そして指を指し笑い合う。
体育や休み時間は男子のおもちゃ。的にされたりボール代わりにされたり、俺の嫌がることを思いつけばすぐに試した。
家に帰れば、アコギが俺を出迎えてくれる。楽しみにしていた部活動に同じクラスメートが何人かいる。どこの部活もそうだ。
俺は楽しみにしていた部活動を諦めて真っ直ぐに家に帰った。そして、アコギで心を落ち着かせる。
夏休みが明けても何も変わらない学校生活。時刻だった行きたいっくなかった、それでも家には弟がいる片親で一生懸命働いてくれている母親がいる。心配などかけたくなかった、せっかくの学費を無駄にしたくなかった。
今日も楽しかったよ。心の悲しみを胸に隠し笑顔をむける、そうすれば、いくらか心も楽になれた。
だから俺は何をされようが笑顔を辞めなかった。
あと少しでこの学年が終わるそう思ってた時だった。プロレスごっこでいつもの様に髪を引っ張られていた騎士を地面に押さえつけてから男が叫んだ。
「このきもい紙、俺たちが代わりに切ってやろーぜ」「いいねー」女子たちが賛同し、一種のお祭り騒ぎになった。クラス中の生徒が盛り上がる。
俺は必死に抵抗して、泣きながら頼んだ。何度も何度も、泣きながら誤り頼んだ。きらないでくれ、切らないでくれと、そして必死に暴れるが、数人に顔中体中殴られ、そしてコールと同時に髪を切られた。
市場のセリにかけられたように切った髪を掴み皆に見せびらかす。そして、バサッ、バサッと切られていった。俺は力なく床に落ちていく大切な自分の髪を見つめた。
親にはどう説明すればいいのだろうか。弟には何と言えばいいのだろうか。
そんな時、先生が新部レ俺は家に帰された。
心の底からショックを受けている母親の顔を今でも忘れない。そして、ボロボロに切られた自分の髪を今でも忘れない。
鏡の前で何度も意味もなく自分の髪を触った。本来あった場所に髪はない。髪をすく手がダダの空中をかく。そこには紙がないのにもかかわらず騎士はただ何もない場所をすき続けた。
後で知った、先生を呼んでくれたのは來未だったらしい。
気づけなくてごめん、と何度も家に謝ってきた。そのたびに大丈夫だと言ったが短い俺の髪を見て來未は何度も泣いてくれた。
それから、二年生は保健室登校になった。俺をいじめていた生徒の主犯は停学処分となった。
俺が思い浮かべていた学園生活は三年生になってやっと実現した。
三年生になり大人になったのか、俺はいじめられなかった。むしろ同じ高校を目指す奴らとは友達になり、そして今の高校にした。そいつとは今も友達だ。
言い終えた後、騎士はただ一人笑った。
その奥に眠っている深い苦悩を隠すように。
なんて声をかけていいか分からないカンナはただ唾を飲んだ。誰も一言も発しないこの空間に静寂が立ち込める。
空気が重く冷たくなり始めた時、來未の声が走る。
「ごめん、騎士」
うつむく來未に騎士は笑って言葉を帰す。
「別にいいぜ、気持ちだけありがとうな。、ってかすげー時間たってんじゃん、ごめん俺そろそろ帰るわ」
「あ、うん」
「じゃあ私も」
カンナはその流れに乗って立ち上がった。來未に見送られながら玄関を出た騎士とカンナは道路に出てからすぐに向き合った。
「じゃ、また明日なカンナ」
「また明日」
カンナが言葉を返すと騎士はすぐに振り返りすぐ隣の家に入っていく。カンナはその姿を最後までただ見つめていた。
それに気づいた騎士がドアノブに手をかけたままカンナの方を見つめる。
「どーかしたか?」
その言葉に少しドキッとして咄嗟に首を横に振る。少しでも長い間騎士見ていたかった、そんな理由を言えるはずもなく代わりの言葉を返す。
「なんでも。私はあんたの綺麗な長い髪もその性格も好きだから」
顔が赤くなるのを感じたカンナは騎士の言葉を待たず、すぐに振り返り歩きはじめる。そんなカンナの背中にいつもの豪快な騎士の声が届いた。
「ありがとな~!」
嬉しさからか、恥ずかしさからか、はたまた緊張からなのか分からない。
誰もいない通路でひとりでに頭を深く下げるカンナは、真っ赤になった顔をほころばせた。
転勤族の早苗が俺と來未のすぐ目の前に家に引っ越してきた。同じ学校で同じクラス、帰り道も同じ。自然に三人で遊ぶようになった。そして、三人で毎日のように遊んだ。
それから学年が一つ上がって二年生になったばかりの時。
來未が別の事をして遊んでる中、紀伊はさねえに話しかけた。
「ねー何見てるの?」
來未の部屋で一人スマホを真剣に見ている早苗は騎士の言葉に気付いていないのか反応しない。
覗き込むと画面にはアニメが映っていた。見たこともない綺麗な絵に心打たれた騎士は早苗と同じように黙って映像に見入っていた。
こうやって俺は早苗と同じようにそのアニメにはまっていった。短髪と長髪の男の二人組が主人公の物語で、二人はユニットを組み歌の力で悪と戦っていた。
俺はそんなアニメで早苗と盛り上がり自分たちでユニットを組もうという話まで盛り上がった。たまたま推しの主人公が被らなかった俺たちは別々の主人公になり切ってよく遊んだ。
そして夏休みに入る時。早苗の転校が決まった。
突然の事で実感がわかなかった。これで最後、これが最後の別れになるんだって、当時の俺は呆然としていたんだと思う。
目の前で車に乗り込むと車がゆっくり動き出していくその光景を力なくただ見つめていた。すると窓が開くと早苗が見お乗り出して俺に叫んだ。
「次あう時はセッションだ!」
そのフレーズがアニメのセリフということは直ぐに分かった。なぜなら俺たちが推していたアニメだからだ。
それから俺はそのキャラクターに憧れて髪を伸ばしギターを買った。あのアコギはその時から。今思えば俺が長髪を好きな理由、長髪になった理由はこの時かもしれない。
そうれから三年生になった俺の髪はだいぶ伸びた。
クラス替えもあって友達が少なくなった俺はラスで浮きいじめられるようになった。
変わり者はいじめられる。それでも俺はこの髪を切りたくなかった、好きだったからだ。俺にとってのアイデンティティみたいなものだ。
菌扱いされ、煙たがられ、嫌われる。歩くたびに笑われ噂話をされる。俺の友達は消え全員が敵になった。
俺と関われば嫌われる標的にされる。俺は皆の遊びの標的。
ボールを当てる的。だけど俺は笑って受けた。
自分は皆と仲良く遊んでいるだけなんだと言い聞かせ、自分を偽り耐え続けた。
学年が上がれば解放されると思った。そして四年生になった時、來未が同じクラスになった。
これで少しは変わるかなと思ったけどそんな事はなかった。いじめは続いた。
嫌われたくない、仲間外れにされたくない來未も周りの人と一緒に俺をいじめた。
でも、來未とは家が近所で幼馴染。そんな噂は一瞬に広がり、來未も兵衛機になりそうになった。
だから俺は來未の事なんて知らないと言った。そして來未は周りに流されるまま給食のお盆をかけた。服がびしょ濡れになって少し扱った。それのおかげか來未はいじめられなくて済んだが、その件でいじめはエスカレートしていった。
そして五年生になった時、一人の子が俺のいじめを先生に伝えた結果、いじめは収まった。
俺は何度も髪を切ろうと思った。この髪のせいでと、髪を呪ったこともあった。それでもはさみで自分の髪を切ることができなかった。
自分の大切なものを切るなってできなかった。大好きだった長い髪を嫌っている自分自身が許せなかった。
俺の心を支えてくれたのはあのアコギだった。たった一人の寂しい時間をいつもあいつが埋めてくれた。
六年生になってもういじめはなくなった。皆に認められたお陰で友達も増えた。
これからは幸せだって、まともに送れていなかった学校生活がやっと送れる様になった。特に中学からは部活動もある。一からやり直せるそんな中学を俺は楽しみにしていた。
けど結果は違った。本当に辛いのはここからだった。
知らない学校の生徒が合流し、ほとんど知らない人ばかり。過度ないじりを笑って耐えた結果、エスカレートしていきいじめへと変わっていった。
被起用食いは壊され、毎回椅子がどこかに行く。ノートと教科書、筆箱体操服、何度も踏みつけられゴミ箱に捨てられる。おもちゃのようにゴミ箱に向かって投げていく。
女子はすれ違うたびにキモイ、無理、やば、と囁く。こっちを見て嫌な悪態をつき、ひそひそと聞こえる声で悪口を言う。そして指を指し笑い合う。
体育や休み時間は男子のおもちゃ。的にされたりボール代わりにされたり、俺の嫌がることを思いつけばすぐに試した。
家に帰れば、アコギが俺を出迎えてくれる。楽しみにしていた部活動に同じクラスメートが何人かいる。どこの部活もそうだ。
俺は楽しみにしていた部活動を諦めて真っ直ぐに家に帰った。そして、アコギで心を落ち着かせる。
夏休みが明けても何も変わらない学校生活。時刻だった行きたいっくなかった、それでも家には弟がいる片親で一生懸命働いてくれている母親がいる。心配などかけたくなかった、せっかくの学費を無駄にしたくなかった。
今日も楽しかったよ。心の悲しみを胸に隠し笑顔をむける、そうすれば、いくらか心も楽になれた。
だから俺は何をされようが笑顔を辞めなかった。
あと少しでこの学年が終わるそう思ってた時だった。プロレスごっこでいつもの様に髪を引っ張られていた騎士を地面に押さえつけてから男が叫んだ。
「このきもい紙、俺たちが代わりに切ってやろーぜ」「いいねー」女子たちが賛同し、一種のお祭り騒ぎになった。クラス中の生徒が盛り上がる。
俺は必死に抵抗して、泣きながら頼んだ。何度も何度も、泣きながら誤り頼んだ。きらないでくれ、切らないでくれと、そして必死に暴れるが、数人に顔中体中殴られ、そしてコールと同時に髪を切られた。
市場のセリにかけられたように切った髪を掴み皆に見せびらかす。そして、バサッ、バサッと切られていった。俺は力なく床に落ちていく大切な自分の髪を見つめた。
親にはどう説明すればいいのだろうか。弟には何と言えばいいのだろうか。
そんな時、先生が新部レ俺は家に帰された。
心の底からショックを受けている母親の顔を今でも忘れない。そして、ボロボロに切られた自分の髪を今でも忘れない。
鏡の前で何度も意味もなく自分の髪を触った。本来あった場所に髪はない。髪をすく手がダダの空中をかく。そこには紙がないのにもかかわらず騎士はただ何もない場所をすき続けた。
後で知った、先生を呼んでくれたのは來未だったらしい。
気づけなくてごめん、と何度も家に謝ってきた。そのたびに大丈夫だと言ったが短い俺の髪を見て來未は何度も泣いてくれた。
それから、二年生は保健室登校になった。俺をいじめていた生徒の主犯は停学処分となった。
俺が思い浮かべていた学園生活は三年生になってやっと実現した。
三年生になり大人になったのか、俺はいじめられなかった。むしろ同じ高校を目指す奴らとは友達になり、そして今の高校にした。そいつとは今も友達だ。
言い終えた後、騎士はただ一人笑った。
その奥に眠っている深い苦悩を隠すように。
なんて声をかけていいか分からないカンナはただ唾を飲んだ。誰も一言も発しないこの空間に静寂が立ち込める。
空気が重く冷たくなり始めた時、來未の声が走る。
「ごめん、騎士」
うつむく來未に騎士は笑って言葉を帰す。
「別にいいぜ、気持ちだけありがとうな。、ってかすげー時間たってんじゃん、ごめん俺そろそろ帰るわ」
「あ、うん」
「じゃあ私も」
カンナはその流れに乗って立ち上がった。來未に見送られながら玄関を出た騎士とカンナは道路に出てからすぐに向き合った。
「じゃ、また明日なカンナ」
「また明日」
カンナが言葉を返すと騎士はすぐに振り返りすぐ隣の家に入っていく。カンナはその姿を最後までただ見つめていた。
それに気づいた騎士がドアノブに手をかけたままカンナの方を見つめる。
「どーかしたか?」
その言葉に少しドキッとして咄嗟に首を横に振る。少しでも長い間騎士見ていたかった、そんな理由を言えるはずもなく代わりの言葉を返す。
「なんでも。私はあんたの綺麗な長い髪もその性格も好きだから」
顔が赤くなるのを感じたカンナは騎士の言葉を待たず、すぐに振り返り歩きはじめる。そんなカンナの背中にいつもの豪快な騎士の声が届いた。
「ありがとな~!」
嬉しさからか、恥ずかしさからか、はたまた緊張からなのか分からない。
誰もいない通路でひとりでに頭を深く下げるカンナは、真っ赤になった顔をほころばせた。
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