精霊武装世界の冒険者たち

柊 匁

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第一章 入団編

第五話 試験の日程

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「鑑定結果です。まずあなたは上位精霊となっています。その中であなたの精霊は天属性の『風神』です。最後にあなたの武装化は物理武装で武器は弓です。」

 ……風神かぁ。なるほどね。精霊授与の儀式や今の精霊鑑定で散々、光が凄いってなってたから、もう凄い精霊が授与されたのはなんとなく分かってたし、大して驚きはないよね。
 そして、武装化の武器は弓。実はこれは嬉しい。なぜかというと、僕が冒険者学校時代で実技試験の全体順位の上位を取った試験は全て弓の実技が絡んでいたからだ。もしかして、得意な武器が武装化の武器として選ばれるのだろうか?そこは教えられたこともないし、考えたこともなかった。

「…あっ、あと言い忘れてましたが、あなたの特殊能力は『風神矢』と書かれています。凄い精霊ですね。おめでとうございます。」

 風神矢?どんな能力なんだろうか。風の能力なのは確かだと思うが……能力の詳細を言われないってことは精霊鑑定では、そこまではさすがに分からないのだろうか?気になるので聞いてみよう。

「ありがとうございます。精霊鑑定は以上ですか?」
「はい、そうですね。」

 やはり能力の詳細は分からないのか。まあ、いくら鑑定してもらえるとしても、そこまで求めるのは無理があるか。

「分かりました。ありがとうございます。」

 精霊鑑定のギルドメンバーは光の大きさで大方の予想がついていたのか、僕の精霊鑑定の結果の風神についてはあまり驚いた様子はなかった。それとも驚きすぎて現実と思っていないのか。
 精霊鑑定してくれたギルドメンバーに感謝の意を伝え、部屋を出ようと後ろを振り返ると僕の後方にはすでに4人目も並んでおり、4人とも驚いた表情をしていた。僕はそれを無視しつつ、4人の横を素通りして第一特別室を出て、そのまま精霊堂を後にした。

 続いて向かう先はタクトの大陸王城の西隣にある、この大陸全土の中で1番大きなギルドセンターである、ギルドメインセンター。
 2階建のギルドセンターと違い、ギルドメインセンターは3階建の建物で1階はギルドセンターの1階と変わらず、クエストの受注の受付などを行っている。3階はギルドセンターの2階と同じようにテーブルや椅子が置いており、冒険者たちの休憩スペースとなっている。そして、2階には『会議室』と呼ばれる大きな部屋が1つある。この部屋は普段は開放しておらず、冒険者団の団長たちが集まる団長会議など特別な場合でのみ開放される。そのため一般の冒険者が入ることはないし、ましてや冒険者でもない一般の人などが足を踏み入れることは絶対ないと言っていいほどである。
 そのギルドメインセンターに行く理由は入団試験の日程が掲示板にて発表されていて見に行くためだ。だが、今ギルドメインセンターに向かうと絶対に人が多くて嫌な思いをするのはだいたい分かっている。なので、入団試験の日程確認は後回しにし、卒業したといえど冒険者団の入団試験期間までは第二冒険者学校の生徒であり、寮はまだ使えるので、昼食を食べに寮に戻り、その後タクトの中で1番大きな図書館に行くことにした。

――約7時間後。

 図書館を出た。ここの図書館は冒険者学校の生徒時代に何度も行っているが、何度行っても色んな種類の本があって飽きない。しかも、読書好きが集まる場所とあって、その場に僕が居ようとも周りは皆、本に夢中で視線をほとんど感じない。読書が大好きで周りの視線が気になる僕にとって、ここの図書館は楽園のような場所である。
 さて、満足したし寮に帰ろうか……おっと、危ない。本来の目的を忘れるところだった。僕はギルドメインセンターへとゆっくりと歩みを進めた。
 ゆっくり歩いたが15分も経たずして、ギルドメインセンターに着いた。精霊堂を出た際は天高くあった太陽も今はオレンジ色の光を放って沈もうとしている。
 ギルドメインセンターの前では第五の卒業生がちらほらいたが、それに目も暮れず、入り口の外側の左側にある、入団試験の日程が掲載されているであろう掲示板へと向かった。


――ブレバロード大陸と暦について。

 ブレバロード大陸はまず中央に中央王国タクトがあり、その周りを東西南北に4つの王国が囲み、大陸の北東の外れには島国がある。
北の王国は「モンカー」、
東の王国は「パーケッシ」、
南の王国は「キットン」、
西の王国は「カラガルテ」、
最後に大陸の北東の外れにある島国が「ゲン」である。ゲンは国ではあるが「ゲン諸島」と呼ばれることが多い。
  タクトの東西南北を囲む4つの王国は「四方王国」と呼ばれる。四方王国はそれぞれタクトの10倍以上大きい土地面積を誇る。またタクトは国全体が都市のようなものであり、町や村などが存在しなかったが、四方王国は都市や町、村以外にも山や森、砂漠、そして海などが存在する。そして、四方王国は王都が存在し、そこにそれぞれの国王の住む城がある。
 ゲンは特別な存在で国王はおらず、島長しまおさというものが国王的役割を果たしている。また全部の島に橋がかかっており、一番大陸に近い島のコンタルバル島はモンカーとパーケッシのそれぞれにも橋がかかっている。
 また大陸の気候については北部は暖かく、南部は寒い。モンカー最北端とキットン最南端の温度差は最大で約40度の差がある。
 
 続いて、暦について。この世界では1日を24時間、1ヶ月を30日とし、1年を12ヶ月としている。ちなみに本日は12月1日であり、冒険者団正式入団は1月1日である。つまり、僕は12月30日まで第二冒険者学校の生徒であるということになる。

――ブレバロード大陸と暦については以上である。


 掲示板に書いてある内容は以下の通りだった。


「これから冒険者団入団試験に受験する者たちへ

明日12月2日から4日間は入団試験のための自身強化期間と試験開始場所への移動期間とする。

以下は
試験開始日時
試験開始場所 受験冒険者団
の順である。

6日午前10時
パッケーシ・マルンボ村 ライムグリーン

7日正午
パッケーシ・王都スナア コーラル

10日午前10時
キットン・王都トリヌペッタ マリンブルー

11日午前9時
キットン・王都トリヌペッタ バイオレット

12日午後1時
キットン・トロルバウ町 スカーレット

14日午後4時
ガラガルテ・王都プラックス カナリア

17日午前11時
モンカー・フォガッチ町 ビリジアン

18日正午
モンカー・王都ククラニット アンバー

合格者は12月20日~23日までに発表される。
なお、繰り上げ合格者は25日~30日まで。

以上。健闘を祈る。

アンバー団長 シェパード・ヘイズ
スカーレット団長 マット・オット
マリンブルー団長 アシュリー・パーキンス
ライムグリーン団長 スプリング・フレック
ビリジアン団長 ダリル・セイルズ
コーラル団長 ジャスミン・ハート
カナリア団長 マーティ・ベネット
バイオレット団長 フィリップ・ホートン より」


「よし、頑張れよ。カイ。」
 僕は胸の前で右手で拳を作り、僕自身を励ますように小声で言った。

 僕が入団試験を受ける予定の団はアンバー、マリンブルー、そしてカナリア。その中で試験日程の1番最初はマリンブルーなのだが、明日から9日間も空く。その空いた分、自身強化期間にあてられるので日程的にはとてもラッキーである。
 さらにマリンブルー、カナリア、アンバーの順で入団試験を受ける場合、必ず間に別の団の入団試験が入るので連続していないというのも疲労面でとても有利な日程である。
 入団試験の日程について一通り分かったため、寮に帰ろうと振り返って歩き出した。
 その時、向こうから4,5人の集団が歩いてきた。その中に見覚えのある顔が見えた。その顔と目が合うと、その顔は笑顔になり、こちらに向かって小走りでやってきた。

「やあ、また会えたね!」
「そうだね。」

 それはリリアだった――。
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