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エセルの章
めばえる恋心
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シュヴァルドは結婚式から一週間は執務を休むので、エセルも2日後から、勤務に向かった。
シュヴァルドの、私室に入ったエセルはピリピリした空気に一気に緊張した。
「……2日とも、情けなくもできなかった!ということは本当の事なんですね!」
アンソニーがシュヴァルドの、前にたち、なにやら責めている。
ジェイクも額に手をやり呆れた表情を隠そうともしていない。
「あんた、それでも男ですか?ついてんですよね?そこ。」
と股間を、指差す
「一緒に布団に入ってお休みなさいって、どれだけお子様ですか?」
アンソニーとジェイクの交互の攻撃が続く。
「キ、キスはしたぞ!」
「あんたの言うキスはまさか、口と口をくっつけるだけじゃないでしょうね?」
「そ、それ以外になにがある!」
「ジェイク!このお子ちゃまに教えてやって下さい。」
アンソニーが呆れて、ジェイクに投げた
「あのな殿下…男女がするのは」
と説明しかけたジェイクだが
「ああ!もう」
とイライラと髪をくしゃっとすると
ジェイクはシュヴァルドの襟元をぐいっとつかむと、シュヴァルドにキスをした。
エセルからもバッチリと見えたそれは、舌を絡めた濃厚なもので、淫らなその動きにエセルは真っ赤になった。
ジェイクは、ひとしきりシュヴァルドの口腔を犯すとドンッと突き放した。
「こういうやつだ!」
と言い放ち
「エセル、その水くれ」
というと思い切りうがいして、洗面ボウルにぺっとだした。
「あとは…」
ジェイクは、そこからはうんざりしたのか
「あとは、男の本能に任せろ!」
ビシリと言った。
「ごめんねエセル。気持ち悪いの見せたね」
とジェイクは優しくいうと、よしよしと頭をなでた。
「殿下のせいで、可愛い侍女が具合が悪くなりましたよ」
動揺から、ようやく脱したらしいシュヴァルドは
「こ、こんないやらしい事なんて、出来るかっ!」
「アホか!そんなのは準備だ準備!それくらいでためらって最後まで出来るか!」
そのやり取りにアンソニーはなにかを決意したらしくて、さらさらと紙に書き付けて、エセルに渡した。
「こちらは御殿医に、そして、こちらは厨房にそれぞれ持っていって下さい。そして、これは妃殿下あてです。それから御殿医から預かったものを妃殿下の元へ届けて下さい」
エセルはうなずいて、部屋をそっと出た。
「…び、びっくりしたぁ…!」
そっと声にだした。
ジェイクの言うように、気持ち悪くはなかったけど、本当に驚いた。なんていっても美形な男なジェイクとシュヴァルドだから、男同士とはいえ、麗しかった!
エセルはそして、そっと触れあったアルベルトからのキスを思い出して赤くなるのがわかった。柔らかな感触と、離れたときにそよ風が冷たく感じたこと、アルベルトの微かな香水の香り。
そのあと、すらりとした肢体に抱き寄せられた事。
持っていた紙でぱたぱたと顔をあおいだ。
御殿医の所に行き、アンソニーからの手紙を渡すと、
「ほぅ。」
手紙を読んだ医師は
「なるほどなるほど、ちょっと侍女さんお待ち下さい」
医師はお香の箱と、薬ビンをエセルに渡した。
「こちらが説明です。これも一緒にお渡し下さい」
医師はすこしニヤリと笑っていた。
次は厨房にいき、手紙をわたした。
「こんにちは!シュヴァルド殿下つきのエセルです。アンソニー様からの手紙を持ってきましたー!」
エセルが声をかけると、料理長が出て来て、手紙を読んだ
「確かに承りましたと、アンソニーに伝えて下さい」
医師に続き、またしても、ニヤリと笑う料理長。
そして、クリスタの部屋に向かうと、
「シュヴァルド殿下つきのエセルです。アンソニー様からのお品をお持ちしました。」
部屋に通されると、クリスタに手紙と、薬とお香を渡した。
読んで目を見開いたクリスタは、苦笑すると、
「わかりましたわ、今夜使わせていただきます。」
クリスタはそばにいた侍女にその手紙を渡して、読ませた。
気合いをいれてうなずいた侍女は
「アンソニー様に、滞りなく準備しますとお伝え下さい!」
とニヤリと笑う。
シュヴァルドの元へ戻ったエセルは、アンソニーにそれぞれ了承の旨を伝えると、アンソニーはうなずいた。
「殿下の頑張りには期待できませんからね、一服盛るんですよ」
こそっとエセルに答えを言った。
つまり、あのお香と薬はたぶん、媚薬とかそういった類いでだからみんなニヤリとしていたんだ、とエセルは理解した。
食事は多分精力増強の食事にと指示したのだろう。
確かにあのやり取りではシュヴァルドはなかなか夫婦の契りを交わせないだろう。
アンソニーの、思いきった決断に妙に納得してしまった。
エセルはその日、今日の顛末を話すと、
エミリアもセラフィーナもステラもキャーキャー叫んだ。
「うわー私も見たかった!」
エミリアが叫ぶと、これっと出してきたのは、ラブ・フラワーズという、美しい装丁の雑誌
「これこれ、薔薇族よ!」
小説と挿し絵、そこには、男性同士の恋愛が書かれた物語が掲載されていた。
きゃいきゃいとその本を見ながら騒いだ。
そうだとエミリアがエセルにむきなおる。
「エセル、セント・ヴァレンタインデー、殿下に伝言してあげるわ!どこにする?」
新しいイベントはもう明日に迫っていた。
「あっじゃぁ、おねがいしちゃう」
エセルはどこにしようかなやむ。
「森の小道の東屋がいいんじゃない?今はお花もきれいだし」
王宮の奥側の散歩道にある、休憩場である。
セラフィーナのその案に乗ることにして、
「じゃあ、そこに夕方にってお伝えしておくわ!」
ステラは明日はアレクシスの屋敷前で待ち伏せするらしく、エミリアとセラフィーナがついていく。王宮の外だからだ。
「エセル、頑張ってね!」
友人たちのエールをうけて、エセルはうなづいた。
翌日のセント・ヴァレンタインデー。
時々、男性にプレゼントを渡している女性をみかけて、エセルも夕方に向けて、どんどん緊張が高まった。
昨日一服盛られたシュヴァルドは、エセルが部屋を訪れた時にはまだ私室に来ていなかった。
「どうやら、成功したようです。」
アンソニーがほっとしたように言った。
「とりあえず、良かった。あんな殿下じゃ妃殿下がお気の毒だな」
シュヴァルドが私室に帰って来たのは昼過ぎで、
「……」
ひたすら無言だった。
「ひとまず、ご結婚おめでとうございます殿下」
アンソニーが言い、ジェイクとエセル、他の侍従たちもおめでとうございますと声をかけた。
「お前だろ…一服盛ったの…」
と恨めしそうにアンソニーに言った。
「ほう?良く効きましたか?」
「効きすぎだ…!!」
ぐったりとシュヴァルドが言った。
「せいぜいこれからもお励み下さい、殿下」
エセルは、お茶をいれたり、お茶菓子を用意したりすると、瞬く間に時が過ぎ、勤務終了となった。
夕方、シュヴァルドの私室をでて、アルベルトに渡すプレゼントを持つと、森の小道の東屋向かった。
森の小道は静かで、朝や昼と違い、人影はない。
東屋には、ベンチがあり、クッションも置かれて、座り心地も良く待ち合わせにはもってこいだ。
少し辺りが暗くなり始めた頃、アルベルトが姿を見せてエセルはホッとした。
「待たせてごめんね」
エセルは首を横にふった。
「アルにこれを渡したくって」
紺色の箱を手渡した。
「開けていい?」
アルベルトがうれしそうに、あける。
「もちろん…」
照れながらエセルは言った。
「気に入るといいんだけど…」
箱をあけたアルベルトは、目を輝かせて
「これ、エセルが刺繍してくれた?」
こくんとうなずくと
「すごい!!ほんとにうれしいよエセル!」
アルベルトはそっと、自分の横にプレゼントをおくと、エセルの頬に手をやりそっと唇をよせて口づけた。
「可愛いエセル。俺は本当に好きなんだ、今日こうして贈り物をくれて本当に嬉しすぎるよ」
アルベルトはふたたび、キスをすると、今度は長く深くなり、エセルの口腔に舌が偲びはいり、エセルの舌と絡ませて、
濃厚になるキスに、エセルも夢中でそれに答えた。
くちゅくちゅと音をたてて、蹂躙するアルベルトの唇に、エセルはくたりとアルベルトに身を寄せた。
アルベルトのキスは唇から、耳や、うなじにもおとされ、エセルは官能的なキスを受けいれつづけた。
「ヤバい、もう帰ろう。これ以上二人きりでいたら歯止めが効かない」
アルベルトが名残惜しそうに唇を離すとエセルを立ち上がらせて、手を繋いで散歩道を歩いた。すでに辺りは夜の闇になり遠くに使用人棟の明かりが見えた。
アルベルトは軽くキスをすると、エセルを見送った。
「エセル!うまくいったんでしょ?」
部屋にぐいぐいと、エミリアが入れる。
「あっ、ステラはどうだった?」
「受け取っては下さったけど、びっくりされたのか、ありがとうとだけで。今日がセント・ヴァレンタインデーっていうのもご存じなかったみたいで…」
ステラが自信無さそうに答えた。セント・ホワイトデーを待ってみるとそっと微笑んだ
それよりもとエセルの事に興味津々だった。
「でっ!キスくらいしたんでしょ?」
とステラにニヤリといわれ、エセルはポンッと赤くなった。
「そ、そ、そ、それは…!」
東屋での事をほとんど喋らされて、エセルは頭が沸騰した。
「やるわねぇ殿下」
エミリアが
「うんうん。あの奥手なソフィア様の弟とは思えないわ!」
つづいてステラが
「さっそく王妃様に報告だわ」
とセラフィーナがビックリすることを言う。
「セラフィーナ!ほ、報告ってそんな…!」
「王妃様は、殿下がエセルに無体な事をしないかご心配されてるのよ」
「わ、私、やっぱり犯罪なの?いたいけな少年に手を出した?それとも、アルが王族ってやや忘れてたけど、正真正銘の王子様だから、やっぱり身分違いも甚だしいわよね!!!」
「はいはい、落ち着いてね?エセル」
エミリアがどうどう、とエセルをなだめる。
「殿下は、15才、でエセルは?」
「じ、16才」
「その年齢差は?」
「一歳?」
「それっておかしいの?」
「…おかしくない、と思う…」
「エセルのお父様は亡くなったけどご身分はなんだった?」
「伯爵…?」
「伯爵令嬢が王子様と付き合うのおかしい?」
「イエ、おかしくない、かも」
「つまり、だれも、反対なんてしていないのよ、エセル」
セラフィーナがエミリアとのやり取りをクスクス笑いながらいうと、
「ただね、王妃様は殿下がまだ未成年だから、まだ結婚できない状態でエセルが懐妊とかしちゃうって言うのは宜しくないと思われてるの」
「殿下ったら、エセルと婚約だけでも!と。かなり必死で陛下におねがいされてるのよ~。それを引き換えに王妃様も陛下も殿下にあれこれ条件出されててね」
クスクスとエミリアが明かす
「この間の、舞踏会も一週間きちんと、講義を受けたらというのと、引き換えでね、かなり我慢してたのよ」
そうなんだ、とエセルはアルベルトの知らない奮闘を知ってますます惹かれるのがわかった。
シュヴァルドの、私室に入ったエセルはピリピリした空気に一気に緊張した。
「……2日とも、情けなくもできなかった!ということは本当の事なんですね!」
アンソニーがシュヴァルドの、前にたち、なにやら責めている。
ジェイクも額に手をやり呆れた表情を隠そうともしていない。
「あんた、それでも男ですか?ついてんですよね?そこ。」
と股間を、指差す
「一緒に布団に入ってお休みなさいって、どれだけお子様ですか?」
アンソニーとジェイクの交互の攻撃が続く。
「キ、キスはしたぞ!」
「あんたの言うキスはまさか、口と口をくっつけるだけじゃないでしょうね?」
「そ、それ以外になにがある!」
「ジェイク!このお子ちゃまに教えてやって下さい。」
アンソニーが呆れて、ジェイクに投げた
「あのな殿下…男女がするのは」
と説明しかけたジェイクだが
「ああ!もう」
とイライラと髪をくしゃっとすると
ジェイクはシュヴァルドの襟元をぐいっとつかむと、シュヴァルドにキスをした。
エセルからもバッチリと見えたそれは、舌を絡めた濃厚なもので、淫らなその動きにエセルは真っ赤になった。
ジェイクは、ひとしきりシュヴァルドの口腔を犯すとドンッと突き放した。
「こういうやつだ!」
と言い放ち
「エセル、その水くれ」
というと思い切りうがいして、洗面ボウルにぺっとだした。
「あとは…」
ジェイクは、そこからはうんざりしたのか
「あとは、男の本能に任せろ!」
ビシリと言った。
「ごめんねエセル。気持ち悪いの見せたね」
とジェイクは優しくいうと、よしよしと頭をなでた。
「殿下のせいで、可愛い侍女が具合が悪くなりましたよ」
動揺から、ようやく脱したらしいシュヴァルドは
「こ、こんないやらしい事なんて、出来るかっ!」
「アホか!そんなのは準備だ準備!それくらいでためらって最後まで出来るか!」
そのやり取りにアンソニーはなにかを決意したらしくて、さらさらと紙に書き付けて、エセルに渡した。
「こちらは御殿医に、そして、こちらは厨房にそれぞれ持っていって下さい。そして、これは妃殿下あてです。それから御殿医から預かったものを妃殿下の元へ届けて下さい」
エセルはうなずいて、部屋をそっと出た。
「…び、びっくりしたぁ…!」
そっと声にだした。
ジェイクの言うように、気持ち悪くはなかったけど、本当に驚いた。なんていっても美形な男なジェイクとシュヴァルドだから、男同士とはいえ、麗しかった!
エセルはそして、そっと触れあったアルベルトからのキスを思い出して赤くなるのがわかった。柔らかな感触と、離れたときにそよ風が冷たく感じたこと、アルベルトの微かな香水の香り。
そのあと、すらりとした肢体に抱き寄せられた事。
持っていた紙でぱたぱたと顔をあおいだ。
御殿医の所に行き、アンソニーからの手紙を渡すと、
「ほぅ。」
手紙を読んだ医師は
「なるほどなるほど、ちょっと侍女さんお待ち下さい」
医師はお香の箱と、薬ビンをエセルに渡した。
「こちらが説明です。これも一緒にお渡し下さい」
医師はすこしニヤリと笑っていた。
次は厨房にいき、手紙をわたした。
「こんにちは!シュヴァルド殿下つきのエセルです。アンソニー様からの手紙を持ってきましたー!」
エセルが声をかけると、料理長が出て来て、手紙を読んだ
「確かに承りましたと、アンソニーに伝えて下さい」
医師に続き、またしても、ニヤリと笑う料理長。
そして、クリスタの部屋に向かうと、
「シュヴァルド殿下つきのエセルです。アンソニー様からのお品をお持ちしました。」
部屋に通されると、クリスタに手紙と、薬とお香を渡した。
読んで目を見開いたクリスタは、苦笑すると、
「わかりましたわ、今夜使わせていただきます。」
クリスタはそばにいた侍女にその手紙を渡して、読ませた。
気合いをいれてうなずいた侍女は
「アンソニー様に、滞りなく準備しますとお伝え下さい!」
とニヤリと笑う。
シュヴァルドの元へ戻ったエセルは、アンソニーにそれぞれ了承の旨を伝えると、アンソニーはうなずいた。
「殿下の頑張りには期待できませんからね、一服盛るんですよ」
こそっとエセルに答えを言った。
つまり、あのお香と薬はたぶん、媚薬とかそういった類いでだからみんなニヤリとしていたんだ、とエセルは理解した。
食事は多分精力増強の食事にと指示したのだろう。
確かにあのやり取りではシュヴァルドはなかなか夫婦の契りを交わせないだろう。
アンソニーの、思いきった決断に妙に納得してしまった。
エセルはその日、今日の顛末を話すと、
エミリアもセラフィーナもステラもキャーキャー叫んだ。
「うわー私も見たかった!」
エミリアが叫ぶと、これっと出してきたのは、ラブ・フラワーズという、美しい装丁の雑誌
「これこれ、薔薇族よ!」
小説と挿し絵、そこには、男性同士の恋愛が書かれた物語が掲載されていた。
きゃいきゃいとその本を見ながら騒いだ。
そうだとエミリアがエセルにむきなおる。
「エセル、セント・ヴァレンタインデー、殿下に伝言してあげるわ!どこにする?」
新しいイベントはもう明日に迫っていた。
「あっじゃぁ、おねがいしちゃう」
エセルはどこにしようかなやむ。
「森の小道の東屋がいいんじゃない?今はお花もきれいだし」
王宮の奥側の散歩道にある、休憩場である。
セラフィーナのその案に乗ることにして、
「じゃあ、そこに夕方にってお伝えしておくわ!」
ステラは明日はアレクシスの屋敷前で待ち伏せするらしく、エミリアとセラフィーナがついていく。王宮の外だからだ。
「エセル、頑張ってね!」
友人たちのエールをうけて、エセルはうなづいた。
翌日のセント・ヴァレンタインデー。
時々、男性にプレゼントを渡している女性をみかけて、エセルも夕方に向けて、どんどん緊張が高まった。
昨日一服盛られたシュヴァルドは、エセルが部屋を訪れた時にはまだ私室に来ていなかった。
「どうやら、成功したようです。」
アンソニーがほっとしたように言った。
「とりあえず、良かった。あんな殿下じゃ妃殿下がお気の毒だな」
シュヴァルドが私室に帰って来たのは昼過ぎで、
「……」
ひたすら無言だった。
「ひとまず、ご結婚おめでとうございます殿下」
アンソニーが言い、ジェイクとエセル、他の侍従たちもおめでとうございますと声をかけた。
「お前だろ…一服盛ったの…」
と恨めしそうにアンソニーに言った。
「ほう?良く効きましたか?」
「効きすぎだ…!!」
ぐったりとシュヴァルドが言った。
「せいぜいこれからもお励み下さい、殿下」
エセルは、お茶をいれたり、お茶菓子を用意したりすると、瞬く間に時が過ぎ、勤務終了となった。
夕方、シュヴァルドの私室をでて、アルベルトに渡すプレゼントを持つと、森の小道の東屋向かった。
森の小道は静かで、朝や昼と違い、人影はない。
東屋には、ベンチがあり、クッションも置かれて、座り心地も良く待ち合わせにはもってこいだ。
少し辺りが暗くなり始めた頃、アルベルトが姿を見せてエセルはホッとした。
「待たせてごめんね」
エセルは首を横にふった。
「アルにこれを渡したくって」
紺色の箱を手渡した。
「開けていい?」
アルベルトがうれしそうに、あける。
「もちろん…」
照れながらエセルは言った。
「気に入るといいんだけど…」
箱をあけたアルベルトは、目を輝かせて
「これ、エセルが刺繍してくれた?」
こくんとうなずくと
「すごい!!ほんとにうれしいよエセル!」
アルベルトはそっと、自分の横にプレゼントをおくと、エセルの頬に手をやりそっと唇をよせて口づけた。
「可愛いエセル。俺は本当に好きなんだ、今日こうして贈り物をくれて本当に嬉しすぎるよ」
アルベルトはふたたび、キスをすると、今度は長く深くなり、エセルの口腔に舌が偲びはいり、エセルの舌と絡ませて、
濃厚になるキスに、エセルも夢中でそれに答えた。
くちゅくちゅと音をたてて、蹂躙するアルベルトの唇に、エセルはくたりとアルベルトに身を寄せた。
アルベルトのキスは唇から、耳や、うなじにもおとされ、エセルは官能的なキスを受けいれつづけた。
「ヤバい、もう帰ろう。これ以上二人きりでいたら歯止めが効かない」
アルベルトが名残惜しそうに唇を離すとエセルを立ち上がらせて、手を繋いで散歩道を歩いた。すでに辺りは夜の闇になり遠くに使用人棟の明かりが見えた。
アルベルトは軽くキスをすると、エセルを見送った。
「エセル!うまくいったんでしょ?」
部屋にぐいぐいと、エミリアが入れる。
「あっ、ステラはどうだった?」
「受け取っては下さったけど、びっくりされたのか、ありがとうとだけで。今日がセント・ヴァレンタインデーっていうのもご存じなかったみたいで…」
ステラが自信無さそうに答えた。セント・ホワイトデーを待ってみるとそっと微笑んだ
それよりもとエセルの事に興味津々だった。
「でっ!キスくらいしたんでしょ?」
とステラにニヤリといわれ、エセルはポンッと赤くなった。
「そ、そ、そ、それは…!」
東屋での事をほとんど喋らされて、エセルは頭が沸騰した。
「やるわねぇ殿下」
エミリアが
「うんうん。あの奥手なソフィア様の弟とは思えないわ!」
つづいてステラが
「さっそく王妃様に報告だわ」
とセラフィーナがビックリすることを言う。
「セラフィーナ!ほ、報告ってそんな…!」
「王妃様は、殿下がエセルに無体な事をしないかご心配されてるのよ」
「わ、私、やっぱり犯罪なの?いたいけな少年に手を出した?それとも、アルが王族ってやや忘れてたけど、正真正銘の王子様だから、やっぱり身分違いも甚だしいわよね!!!」
「はいはい、落ち着いてね?エセル」
エミリアがどうどう、とエセルをなだめる。
「殿下は、15才、でエセルは?」
「じ、16才」
「その年齢差は?」
「一歳?」
「それっておかしいの?」
「…おかしくない、と思う…」
「エセルのお父様は亡くなったけどご身分はなんだった?」
「伯爵…?」
「伯爵令嬢が王子様と付き合うのおかしい?」
「イエ、おかしくない、かも」
「つまり、だれも、反対なんてしていないのよ、エセル」
セラフィーナがエミリアとのやり取りをクスクス笑いながらいうと、
「ただね、王妃様は殿下がまだ未成年だから、まだ結婚できない状態でエセルが懐妊とかしちゃうって言うのは宜しくないと思われてるの」
「殿下ったら、エセルと婚約だけでも!と。かなり必死で陛下におねがいされてるのよ~。それを引き換えに王妃様も陛下も殿下にあれこれ条件出されててね」
クスクスとエミリアが明かす
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