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疑惑の芽
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アデリンと約束通り、ルナはコーデリアと共にルーファスと遊びにアボット伯爵邸に出掛けていた。
この日は、汚れても大丈夫な簡素なドレスを選んでいた。
「こんにちはルーファス」
シャーロットと共に出迎えたルーファスは、ルナを見ると飛びついてきた。
「ルナ!」
小さな手がぎゅっと首にまわり、子供らしい甘い香りがする。
柔らかく、可愛らしい。
「ルーファス、私は?」
「…ルナ。連れてきたからだっこさしてやる」
ルーファスはしぶしぶアデリンの腕に抱かれたが、アデリンが
「きゃあー可愛いねぇルーファス!」
と力がこもったのか、
「やっぱりやだ!」
と暴れて腕から逃れようとする。
シャーロットがくすくすと笑うと、
「たぶん、それが駄目なのね」
アデリンはぷうとむくれた。
この日は子供部屋に向かうと、可愛い子供用の家具やおもちゃがあり、ルーファスは男の子らしく剣のおもちゃを振り回している。
ルナはルーファスに付き合って、元気よく遊んだ。
シャーロットは、ルーファスの、弟のカインも連れてきて、にこにこと見ていた。
遊び疲れたルーファスが寝ると、シャーロットはお茶に誘い、子供部屋でお茶をすることにした。
「ルナ、フェリクスとはどう?うまくいってるのでしょう?」
にこっと笑ってシャーロットが言ってきた。
「そうなのかしら…」
「みんないい雰囲気だって言ってるわ」
「早く結婚しちゃうのも悪くないわよ?ルナは特に子供の扱いも上手だし、こんなこと言っちゃうのも、何だけれど、若い方が跡継ぎを産める可能性が高いもの。フェリクスは特に跡継ぎが必要だもの」
「やだ、お姉様ったら」
「私は、まだフェリクス様に求婚はされてませんし…」
「あら、案外ぐずぐずしてるのねフェリクスったら」
まだまだ可愛らしいシャーロットが、辛辣な評価をした。
「ね?ルナから押してみてはどう?」
「お、おすって…?」
「んー?例えば、わざと二人きりに持っていくとか?そこでなにか起こるかも!」
とシャーロットはやけに楽しげに言った。
ルナは、頬に手をやった。そうだ、二人きりになってキスをしてしまったのは、もう遠い過去のように思える。それを再び?
でも、ルナはそれを少し期待してしまう自分も感じた。
「お姉様、なんだかとても楽しそうね?」
「楽しいわよ。他人の恋の話は」
「結果をまた聞かせてね!」
とにっこりと微笑まれた。
既婚のシャーロットゆえの助言に思えた。
コーデリアを見ると、可笑しそう微笑んでいた。厳しいお目付け役なら苦言を言ったことだろう。
「今度機会があったら協力しましょうか?ルナ」
「是非そうして下さいな。友人としてフェリクスを応援しているんです」
シャーロットが言った
「フェリクスは高慢な所があるから、膝をついて求婚なんて難しく感じてるかもね、いっそのこと思いきった事があれば踏ん切りもつくんじゃないかしら」
「お姉様、いけないわ。口を出しすぎよ」
「あら、ごめんなさい」
ふふっとシャーロットは笑った。
アボット邸を後にすると、
「ルナ、申し訳ないけれど家によってから帰ってもいいかしら?」
「ええ、もちろんよ叔母様」
「もうガイったら急に夏用の服を送れなんて言ってきたのよ。自分で取りに帰ればいいのにね?」
いとこのガイは近衛騎士で、王宮で暮らしている。
コーデリアの自宅、オブライエン家は上流階級の邸の所から少し離れた、上流の下層にあたる場所にあった。
邸も壮麗なものから、少しこじんまりとしてくる。
「少し待っていて」
とコーデリアはガイの服を用意してカバンに積めると、
「近所に同じく近衛の息子のいる夫人がいるからついでに用事がないか聞いてくるわ」
馬車にのりミッチェル家を訪ねた。
ミッチェル夫人のドナは、快活な女性で突然の訪問も歓待した。
「まあ、コーデリア。来てくれて嬉しいわ」
とお茶を素早く用意して、息子の愚痴をいいだした。
「本当に筆不精で連絡もあまり寄越さないのよ!」
と文句も楽しげに話し続けた。
「きいて、コーデリアあの、ウィリスハウスの女主人」
ミッチェル家の隣にある家のことだった。
「あそこね随分前からメルヴィル未亡人が住んでいるんだけれど、どうやらパトロンと別れたようなの」
とドナは話したくてうずうずしていたらしく、勢いよく話し出した。
「ここ何年もあの邸にはね、深夜に時折、男の人がきて夜明け前に帰っていたの、それがね最近ぱったり。」
「まぁ、それは…」
コーデリアが眉を潜めた
「どうするのかしらね?」
ドナが他人事ながら心配そうにいった。
「あら、ほら帰ってきたわ。あれがメルヴィル夫人よ」
ちょうど開いた窓から、女性が見えた。
ルナは遠目だが、それがアネリと呼ばれた女性だとわかった。
「綺麗な女性ね」
「ええ、でもどこかの夫人には敵よ、」
とドナが言った。
「その、パトロンってどなたなんですか?」
ルナは嫌な予感がして、思わず聞いてしまった。
「それがわからないの」
ドナは残念そうに言った
「あっ!でもそうだわ、一度だけ朝早くに来たのよ。すぐに帰ったけれど」
ドナは言った。
「顔はよく見えなかったけれど、若くて見目麗しそうな青年だったわ。きっと地位のある若様ね」
ルナはどきりとした。
それはもしかして、フェリクスなのではないかと…。
この日は、汚れても大丈夫な簡素なドレスを選んでいた。
「こんにちはルーファス」
シャーロットと共に出迎えたルーファスは、ルナを見ると飛びついてきた。
「ルナ!」
小さな手がぎゅっと首にまわり、子供らしい甘い香りがする。
柔らかく、可愛らしい。
「ルーファス、私は?」
「…ルナ。連れてきたからだっこさしてやる」
ルーファスはしぶしぶアデリンの腕に抱かれたが、アデリンが
「きゃあー可愛いねぇルーファス!」
と力がこもったのか、
「やっぱりやだ!」
と暴れて腕から逃れようとする。
シャーロットがくすくすと笑うと、
「たぶん、それが駄目なのね」
アデリンはぷうとむくれた。
この日は子供部屋に向かうと、可愛い子供用の家具やおもちゃがあり、ルーファスは男の子らしく剣のおもちゃを振り回している。
ルナはルーファスに付き合って、元気よく遊んだ。
シャーロットは、ルーファスの、弟のカインも連れてきて、にこにこと見ていた。
遊び疲れたルーファスが寝ると、シャーロットはお茶に誘い、子供部屋でお茶をすることにした。
「ルナ、フェリクスとはどう?うまくいってるのでしょう?」
にこっと笑ってシャーロットが言ってきた。
「そうなのかしら…」
「みんないい雰囲気だって言ってるわ」
「早く結婚しちゃうのも悪くないわよ?ルナは特に子供の扱いも上手だし、こんなこと言っちゃうのも、何だけれど、若い方が跡継ぎを産める可能性が高いもの。フェリクスは特に跡継ぎが必要だもの」
「やだ、お姉様ったら」
「私は、まだフェリクス様に求婚はされてませんし…」
「あら、案外ぐずぐずしてるのねフェリクスったら」
まだまだ可愛らしいシャーロットが、辛辣な評価をした。
「ね?ルナから押してみてはどう?」
「お、おすって…?」
「んー?例えば、わざと二人きりに持っていくとか?そこでなにか起こるかも!」
とシャーロットはやけに楽しげに言った。
ルナは、頬に手をやった。そうだ、二人きりになってキスをしてしまったのは、もう遠い過去のように思える。それを再び?
でも、ルナはそれを少し期待してしまう自分も感じた。
「お姉様、なんだかとても楽しそうね?」
「楽しいわよ。他人の恋の話は」
「結果をまた聞かせてね!」
とにっこりと微笑まれた。
既婚のシャーロットゆえの助言に思えた。
コーデリアを見ると、可笑しそう微笑んでいた。厳しいお目付け役なら苦言を言ったことだろう。
「今度機会があったら協力しましょうか?ルナ」
「是非そうして下さいな。友人としてフェリクスを応援しているんです」
シャーロットが言った
「フェリクスは高慢な所があるから、膝をついて求婚なんて難しく感じてるかもね、いっそのこと思いきった事があれば踏ん切りもつくんじゃないかしら」
「お姉様、いけないわ。口を出しすぎよ」
「あら、ごめんなさい」
ふふっとシャーロットは笑った。
アボット邸を後にすると、
「ルナ、申し訳ないけれど家によってから帰ってもいいかしら?」
「ええ、もちろんよ叔母様」
「もうガイったら急に夏用の服を送れなんて言ってきたのよ。自分で取りに帰ればいいのにね?」
いとこのガイは近衛騎士で、王宮で暮らしている。
コーデリアの自宅、オブライエン家は上流階級の邸の所から少し離れた、上流の下層にあたる場所にあった。
邸も壮麗なものから、少しこじんまりとしてくる。
「少し待っていて」
とコーデリアはガイの服を用意してカバンに積めると、
「近所に同じく近衛の息子のいる夫人がいるからついでに用事がないか聞いてくるわ」
馬車にのりミッチェル家を訪ねた。
ミッチェル夫人のドナは、快活な女性で突然の訪問も歓待した。
「まあ、コーデリア。来てくれて嬉しいわ」
とお茶を素早く用意して、息子の愚痴をいいだした。
「本当に筆不精で連絡もあまり寄越さないのよ!」
と文句も楽しげに話し続けた。
「きいて、コーデリアあの、ウィリスハウスの女主人」
ミッチェル家の隣にある家のことだった。
「あそこね随分前からメルヴィル未亡人が住んでいるんだけれど、どうやらパトロンと別れたようなの」
とドナは話したくてうずうずしていたらしく、勢いよく話し出した。
「ここ何年もあの邸にはね、深夜に時折、男の人がきて夜明け前に帰っていたの、それがね最近ぱったり。」
「まぁ、それは…」
コーデリアが眉を潜めた
「どうするのかしらね?」
ドナが他人事ながら心配そうにいった。
「あら、ほら帰ってきたわ。あれがメルヴィル夫人よ」
ちょうど開いた窓から、女性が見えた。
ルナは遠目だが、それがアネリと呼ばれた女性だとわかった。
「綺麗な女性ね」
「ええ、でもどこかの夫人には敵よ、」
とドナが言った。
「その、パトロンってどなたなんですか?」
ルナは嫌な予感がして、思わず聞いてしまった。
「それがわからないの」
ドナは残念そうに言った
「あっ!でもそうだわ、一度だけ朝早くに来たのよ。すぐに帰ったけれど」
ドナは言った。
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