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ふられたかも知れない。
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「で、どうなんだろう?ジョージアナ」
横に立っている、フレデリックが珍しく真面目な顔でこちらを見た。
「そろそろ、はっきりさせたいんだ…」
こくりと唾を飲み込んだ…。
「婚約するのか…それともしないのか…」
婚約をするのか、しないのか…。そんな言い方ってある?
「したいとは言ってはくれないのね?」
はっきりさせる事を怖がっているくせに、なんだかとても高飛車な響きな自分の声。
「今さら…じゃないか?」
「もう少し考えさせてくれない?いきなりそんなことを言われても」
そう言った瞬間フレデリックが正面に立った。
「あのさ、ジョージアナ。いきなり…なんて冗談言うなよ?俺たちはずっとそういう付き合い方をしてきたじゃないか」
そういうってどういう付き合い…?
「全くわからないわ、フレデリック」
なんて冷静な声なんだろう…!とてもとても…動揺してるのに…!
「君がデビューして以来、俺はずっと君の婚約者候補の一番近くにいた筈だ。わかっていないとは言わせない」
いつも近くにいたフレデリック。
その顔は、いつになく真剣な表情で笑みもなく、冗談でもない。
…
ジョージアナ・ウィンスレット公爵令嬢。
21歳。きらめく金髪と青い瞳の美しいと言われる容姿に、そして教養も申し分なく身につけている。社交界の目立つ令嬢の一人である。
フレデリック・アシュフォードは、侯爵家の次期当主。25歳で、銀髪と青い瞳の整った顔で、背はほどよい高さで、すらりとした体格の貴公子。顔は愛嬌のある笑みをいつも讃えて、砕けた口調は身分にも関わらず親しみ易くて、未婚の令嬢たちが狙う、結婚したい相手の10人には入るだろう
「とにかく…ジョージアナ。これから俺が他の令嬢をエスコートしようと、もしかしたら婚約しようと関係ないとそう思っているということでいいんだよな?」
「え?」
なに?このふられたような感じ…。
つまりなに?フレデリックは他の令嬢を探したいって言ってるのよね…。
「え?じゃないよ、ジョージアナ…周りをみてみろよ…」
ここは舞踏会の最中…。
きらびやかな室内と華やかなドレスと、艶々のテールコートを着た紳士たち。
「…いいか…フェリクスはルナと婚約した、キースもレオノーラと結婚したし、アルバートだってルシアンナと婚約間近だと聞く。ユリアナだってイアンと婚約する」
ジョージアナはフレデリックを見つめた。
フレデリックが言うのは、ここの周りじゃなくて自分達を取り巻く人達…。
「つまりそういう頃合いだと言ってるんだ…」
ふう、とフレデリックは言いたくない事を言った。という風情でため息をついた。
聞いていたジョージアナは、呆然とした。
つまり…いつの間にかジョージアナは売れ残り…の様になっているのか?
21歳はまだ若い…
最近はもう少し遅くっても大丈夫なはず…
答えないジョージアナを置いてフレデリックは、舞踏会の人波に入って行った…
ジョージアナは、ただその背中を呆然と見送った。
心はどこにあるのだろう?
物心ついた頃から、ジョージアナは公爵令嬢としてふさわしくあるように教育を受けてきた。
ダンス、音楽、乗馬、芸術、外国語、礼儀作法…。毎日毎日…。
「あなたの為なのよ」
「公爵令嬢らしく…」
「はい、わかりました。お母様、頑張ります」
「はい練習します」
いつしか、本心を隠すようになり、自分に本当の心がある。そんな事さえもジョージアナは忘れ去った。
そして今ジョージアナは混乱していた…。
デビューして以来、兄のフェリクスがジョージアナのエスコート相手をしてくれていた…。
たくさんの若い貴公子の中でも、フレデリックは身分といい年齢といい、ジョージアナの婚約者…いや婚約はしていないけれど、いずれはそうなるという立場にずっといた…。
公爵令嬢のジョージアナ、それと侯爵家のフレデリック。
周りだって自分達だってそうなるのは自然の成り行きだと、そういう暗黙の了解があった。
その事にジョージアナは甘えていたのだ。
いざとなればフレデリックがいる…と。
思い返せば…3年前、ジョージアナはある男性と出会った…。
ギルバート・エアハート。
たくさんの外国語を操り古代の喪われた言語にまで堪能なその明晰な頭脳。そして落ち着いた外見。
素直に素敵だと思えたのだ。
そして去年、父ライアンから結婚を考えるよう言われた時に、結婚を考えるなら…とふと思い出したギルバートをオペラに誘ったのだ…。
「どうして…私を誘ったのかな?」
彼はそう切り出した。
「貴方を素敵だと思ったからだわ」
「…私がどんな身分か知っているだろう?」
「ええ、もちろん。エアハート子爵の次男で、外国語の教師」
「分かってるなら…次はもう私を誘わない方がいい」
ギルバートは大人の余裕のある笑みを見せた。
なだめるように…
「どうして?」
「君は結婚を望んでいるだろう?」
「ええいずれは…」
「私は結婚を望んでいない。なにより妻子を養う力を持っていない」
「…つまり?」
「そんな私を振り向かせようとするほどの情熱が君にあるだろうか?とても…そうは見えない」
ジョージアナは浅い考えの自分を見透かされた気がした。
「だから時間は無駄にしない方がいい、と思う」
優しく諭すようにギルバートはいい、そしてジョージアナも妙に納得したのだ。ジョージアナは恋をしたのではなくて、なんとなく優しくしてくれそうな彼なら良いのじゃないかと打算的な気持ちで誘ったのだと…気がつかされたのだ。
そして、フレデリックもまたジョージアナに背を向けて行ってしまった…。
恋をする友人たち…。
ジョージアナの心はどこにあるの?
恋心はどこに行けば見つかるの?
誰も教えてくれなかった。
どの本にも載っていない、
恋をしている小説ならある。恋の詩だってある。
けれど、恋に落ちる方法は…それだけはどこにも載っていない…。
横に立っている、フレデリックが珍しく真面目な顔でこちらを見た。
「そろそろ、はっきりさせたいんだ…」
こくりと唾を飲み込んだ…。
「婚約するのか…それともしないのか…」
婚約をするのか、しないのか…。そんな言い方ってある?
「したいとは言ってはくれないのね?」
はっきりさせる事を怖がっているくせに、なんだかとても高飛車な響きな自分の声。
「今さら…じゃないか?」
「もう少し考えさせてくれない?いきなりそんなことを言われても」
そう言った瞬間フレデリックが正面に立った。
「あのさ、ジョージアナ。いきなり…なんて冗談言うなよ?俺たちはずっとそういう付き合い方をしてきたじゃないか」
そういうってどういう付き合い…?
「全くわからないわ、フレデリック」
なんて冷静な声なんだろう…!とてもとても…動揺してるのに…!
「君がデビューして以来、俺はずっと君の婚約者候補の一番近くにいた筈だ。わかっていないとは言わせない」
いつも近くにいたフレデリック。
その顔は、いつになく真剣な表情で笑みもなく、冗談でもない。
…
ジョージアナ・ウィンスレット公爵令嬢。
21歳。きらめく金髪と青い瞳の美しいと言われる容姿に、そして教養も申し分なく身につけている。社交界の目立つ令嬢の一人である。
フレデリック・アシュフォードは、侯爵家の次期当主。25歳で、銀髪と青い瞳の整った顔で、背はほどよい高さで、すらりとした体格の貴公子。顔は愛嬌のある笑みをいつも讃えて、砕けた口調は身分にも関わらず親しみ易くて、未婚の令嬢たちが狙う、結婚したい相手の10人には入るだろう
「とにかく…ジョージアナ。これから俺が他の令嬢をエスコートしようと、もしかしたら婚約しようと関係ないとそう思っているということでいいんだよな?」
「え?」
なに?このふられたような感じ…。
つまりなに?フレデリックは他の令嬢を探したいって言ってるのよね…。
「え?じゃないよ、ジョージアナ…周りをみてみろよ…」
ここは舞踏会の最中…。
きらびやかな室内と華やかなドレスと、艶々のテールコートを着た紳士たち。
「…いいか…フェリクスはルナと婚約した、キースもレオノーラと結婚したし、アルバートだってルシアンナと婚約間近だと聞く。ユリアナだってイアンと婚約する」
ジョージアナはフレデリックを見つめた。
フレデリックが言うのは、ここの周りじゃなくて自分達を取り巻く人達…。
「つまりそういう頃合いだと言ってるんだ…」
ふう、とフレデリックは言いたくない事を言った。という風情でため息をついた。
聞いていたジョージアナは、呆然とした。
つまり…いつの間にかジョージアナは売れ残り…の様になっているのか?
21歳はまだ若い…
最近はもう少し遅くっても大丈夫なはず…
答えないジョージアナを置いてフレデリックは、舞踏会の人波に入って行った…
ジョージアナは、ただその背中を呆然と見送った。
心はどこにあるのだろう?
物心ついた頃から、ジョージアナは公爵令嬢としてふさわしくあるように教育を受けてきた。
ダンス、音楽、乗馬、芸術、外国語、礼儀作法…。毎日毎日…。
「あなたの為なのよ」
「公爵令嬢らしく…」
「はい、わかりました。お母様、頑張ります」
「はい練習します」
いつしか、本心を隠すようになり、自分に本当の心がある。そんな事さえもジョージアナは忘れ去った。
そして今ジョージアナは混乱していた…。
デビューして以来、兄のフェリクスがジョージアナのエスコート相手をしてくれていた…。
たくさんの若い貴公子の中でも、フレデリックは身分といい年齢といい、ジョージアナの婚約者…いや婚約はしていないけれど、いずれはそうなるという立場にずっといた…。
公爵令嬢のジョージアナ、それと侯爵家のフレデリック。
周りだって自分達だってそうなるのは自然の成り行きだと、そういう暗黙の了解があった。
その事にジョージアナは甘えていたのだ。
いざとなればフレデリックがいる…と。
思い返せば…3年前、ジョージアナはある男性と出会った…。
ギルバート・エアハート。
たくさんの外国語を操り古代の喪われた言語にまで堪能なその明晰な頭脳。そして落ち着いた外見。
素直に素敵だと思えたのだ。
そして去年、父ライアンから結婚を考えるよう言われた時に、結婚を考えるなら…とふと思い出したギルバートをオペラに誘ったのだ…。
「どうして…私を誘ったのかな?」
彼はそう切り出した。
「貴方を素敵だと思ったからだわ」
「…私がどんな身分か知っているだろう?」
「ええ、もちろん。エアハート子爵の次男で、外国語の教師」
「分かってるなら…次はもう私を誘わない方がいい」
ギルバートは大人の余裕のある笑みを見せた。
なだめるように…
「どうして?」
「君は結婚を望んでいるだろう?」
「ええいずれは…」
「私は結婚を望んでいない。なにより妻子を養う力を持っていない」
「…つまり?」
「そんな私を振り向かせようとするほどの情熱が君にあるだろうか?とても…そうは見えない」
ジョージアナは浅い考えの自分を見透かされた気がした。
「だから時間は無駄にしない方がいい、と思う」
優しく諭すようにギルバートはいい、そしてジョージアナも妙に納得したのだ。ジョージアナは恋をしたのではなくて、なんとなく優しくしてくれそうな彼なら良いのじゃないかと打算的な気持ちで誘ったのだと…気がつかされたのだ。
そして、フレデリックもまたジョージアナに背を向けて行ってしまった…。
恋をする友人たち…。
ジョージアナの心はどこにあるの?
恋心はどこに行けば見つかるの?
誰も教えてくれなかった。
どの本にも載っていない、
恋をしている小説ならある。恋の詩だってある。
けれど、恋に落ちる方法は…それだけはどこにも載っていない…。
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