王妃の階段

桜 詩

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白い花冠 (E)

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王宮の舞踏会はあっという間にやって来て、エリアルドは自分がわずかに緊張していることに気がついた。

と、言うのも……。

「で、自然な流れって言うのはどういう予定だ?」

そう尋ねた相手はジョエル・ウィンスレットである。

ジョエルは、当日フェリシアのエスコート役を努める事になっている。だから、流れを把握したくて聞いたのだが、
「ですから、あくまで自然な出会いとやらを保証しますよ、王太子殿下。お楽しみに」
にっこりと微笑まれて、うやむやにされてしまったからだ。

・*・*・*・*・

そして、プリシラをエスコートしながら、貴族たちのい並ぶ大広間に足を踏み入れれば、いつものように視線が集中する。

その中に、デビュタントらしい白いドレスの少女を連れたジョエルを一瞬だけ見つけたが、まじまじと見つめるわけにはいかない。

「どう?見つかった?」
プリシラが言えば
「さぁ……ジョエルはわかったが、じっくりと見れる訳がない」

シュヴァルドの挨拶が終われば終われば、王族のダンスから舞踏会は開始するのだ。プリシラと共に一曲目を踊るエリアルドは、大広間の中央に立った。

いつものように、エリアルドは彼女と一曲を踊れば、ギルセルドとパートナーをかえて、2曲目はアンジェリンと踊り始めた。

「麗しのレディは見つかった?」
「さすが姉妹だ。同じ事を、聞いてくる」

「本当?」
クスクスと品よくアンジェリンは笑った。

そうして、気を抜いていた訳ではないのだが…。

日頃ならこんな時でもぶつかった事などないのに、人とぶつかってしまったのだ。

どん!と背に衝撃を受けて、とっさに振り返ればぐらりと体勢を崩してしまった、白いドレスの少女が視界に入り
腕を伸ばしてその腰をしっかりと支えた。

グッととらえたその時に、驚きに目を見開いたそのブルーグレーの美しい瞳と、そして麗しい美貌に一瞬で引き込まれた。

彼女の初々しく結い上げた髪から、滑り落ちた花冠がまるでスローモーションのように映る。

しばらく……時を忘れたように見つめていたように思った。

体勢をゆっくりと戻させて、彼女から滑り落ちた花冠を拾い、形を整えて輝く金の髪に戻した。
エリアルドは長身で、いつもなら見下ろしがちになるのだが、彼女の頭の位置はほどよい高さにあり、顔を見るのに負担がない。
若い女性らしいフローラルな香水の香りがよく雰囲気に合っていて、もう一歩近づきたくなってしまう。

そこでようやく、彼女のエスコート役がジョエルで、そして彼女はフェリシアなのだと、そう気がついた。

なんと、声をかけてそして、踊ったのか。

覚えているのは、彼女のブルーグレーの瞳と、それから美しい顔、それに緊張のためかわずかに震える様は、少し頼りなげで、それでいてしっかりと背筋を伸ばす健気な様子。

フェリシアと踊り終えて、ギルセルドの近くに行けば
「運命的な演出だったな、一瞬で恋に落ちた……そんな風に見えた」
そう言われ
「ああ…そうか」

そして、広間にいるはずの彼女を探すべく視線を巡らせた。

「ギルにそう、見えたなら完璧だ」

エリアルドはギルセルドにそう答えた。

一瞬で恋に落ちたように見えたのは……。本当に演出のせいなのか?
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