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黒蓮

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第二章 冒険者生活 編

冒険者生活 16

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「ダリア・タンジー、出ろ!!」

 翌日の昼前、衛兵が僕が入っている地下牢の鍵を開けて言い放った。その表情には、混乱や疑問が見てとれた。

「いくつかの確認事項の後にお前を解放する用意があるが、嘘偽りなく答えろ!」

牢から出されて詰め所のような所に連れてこられた僕に、衛兵が大きな声で伝えてきた。詰所の様な部屋には、この衛兵と書記官のような人物、そして白地に金の刺繍が施されたローブに身を包んだ男性がいた。

「私は神殿から派遣されました審問官のフューズ・ニコライと言います。ラモン・ロイド男爵の件で少し聞かせてください」

「分かりました。どうぞ」

フューズと名乗った審問官は落ち着いた声音で優しく聞いてきた。

「まず、君が何故牢に入れられたか理解していますか?」

「はい。昨日捕らえられてから男爵の執事と名乗る人が牢まで来て、僕が以前受注した依頼について言われました。男爵が考案した依頼の違約金を利用したお金稼ぎをしていたようで、達成してしまった僕に腹を立てているということでした。だから今回は目をつけられて運がなかったなと言っていました」

「他には何か言われませんでしたか?」

「僕の稼いだお金の在りかを聞いてきました。定宿にしている宿屋を探しても無かったから教えろと」

「なるほど、君の姿は昼頃に下級貴族街への通行門付近で目撃されていますが何をしていたのですか?」

「僕のせいで冒険者協会の窓口で働いているエリーさんを攫ったとの手紙を受けとりまして、どうしたらいいかと通行門まで行ったんですが、そこでたまたまゼストさん・・・えっと、プラチナランク冒険者にお会いして事の次第を伝えると、協力してくれると言ってくれたんです。それでゼストさんは下級貴族街に向かわれて、エリーさんを救出したんです」

「そうですか。目撃証言や他の方の調書とも矛盾はありませんね・・・」

そんな僕らのやり取りを書記官の人が凄い早さで書き記していく。

「では最後に、昨夜は男爵の邸宅へ行っていませんか?」

「男爵の邸宅ですか?僕はご覧の通り一晩この地下牢に居ましたので」

「そうでしょうね。見回りからも証言は取れてますから・・・実は今朝方、男爵の屋敷の人間が全員失踪してしまいましてね。そこには手紙で今までの事を悔やんでいて、この屋敷を去ると書かれていました。あの男爵がその様になるのか疑問だったのですが・・・君には分かりませんか?」

「さぁ、僕は男爵の人となりを知らないので・・・」

「・・・なるほど、どうやら嘘は言っていないようですね。私の才能の1つ、【看破】で嘘は見破れるのですが、君は嘘は言っていなかった。これで君の疑いは晴れました。こんなことに巻き込まれて大変でしたね?」

「そうですね、ただ普通に依頼をこなしただけだったんですが・・・」

「すぐに冒険者協会へ行くと良い。君の事を心配している人達が待っているよ」

「はい!失礼します」

そう言ってその部屋を退出すると、審問官の人は手を振りながら笑顔で見送ってくれた。



 冒険者協会のロビーに入ると、エリーさんが僕の姿をいち早く見つけ声を掛けてくれた。

「ダリア君!!良かった無事だったんだね!私審問官から地下牢に捕まってるって聞いたから心配で心配で・・・」

「心配かけてすみません。でもこの通り大丈夫ですよ!エリーさん達は大丈夫でしたか?」

ロビーにはゼストさんも椅子に腰かけて待っていてくれたようだったので、2人を見ながら話し掛けた。

「私は大丈夫だよ!」

「俺も特に何もなかったぜ!いくつか質問されたけど、本当の事しか言ってないしな」

「迷惑かけてしまったようですみません!」

「迷惑だなんて、私こそダリア君達には助けてもらったし全然そんなこと思ってないよ!」

「俺もエリーちゃんを助ける為だったし、別に気にすることないぜ!」

ゼストさんは微妙に話がずれているのだが、2人とも気にしていないようだったので安心した。3人で談笑していると奥からマリアさんがやって来て以前冒険者登録の際に通された部屋に案内された。応接用のソファーに4人が座るとマリアさんが尋ねてきた。

「ダリア君も無事なようで何よりです」

「いえ、マリアさんにもご心配おかけしました」

「・・・今回の男爵の件は聞きましたか?」

「はい、審問官の方から聞きましたけど、失踪したと言っていましたが本当なんですか?」

「・・・そのようです。ダリア君には心当たりはありませんか?」

「審問官の方にも同じこと聞かれましたけど、僕は男爵と言う人の人となりを知らないので・・・」

「そう、貴方が関係しているのではないの?」

マリアさんは確信を込めたような聞き方をしてきた。

「っ!?書記長!何言っているんですか?ダリア君が何かしたなんて!一晩中地下牢に入れられていたって聞きましたよ!」

「マリアさん、さすがに見張りがいる牢から出て何かしようなんて無理だろ?」

「私もそう思っていますよ。しかし、さすがにあの男爵が改心して王都から消えるなんてありえないですし、なによりダリア君が捕えられた翌日に失踪なんて・・・何もないと考えることの方が不自然でしょう?」

「「・・・」」

「今回の事は僕が標的になっていましたけど、失踪には何も関わっていませんよ?それに、審問官の人にも言ったんですが、僕は一晩あの臭いの酷い地下牢で見張られながら過ごしてましたよ?」

大変だったんですよ、と言う顔をしながらマリアさんに弁明した。

「・・・そう。変なこと聞いてしまってゴメンなさいね。気になってしまったものですから」

「いえいえ、いいですよ」

「そうそう、[風の癒し亭]の女将さんも心配していたようだし、部屋もどうするか困ってたから無事を報告してきた方がいいわよ」

「そうですか、ありがとうございます!さっそく行ってきますね!」

そう言いながらみんなに一礼すると部屋を出て、宿屋に向かった。




side マリア

 ダリア君が退出した後、私とエリーとゼストさんがこの部屋に残った。いや、そうなる様に少し回りくどくダリア君に言って、あの子はそれをすぐに理解して部屋を出て行った。14歳という年齢が嘘のような頭の良さで、まるで本当は長命種のエルフで、実は私よりも年齢も経験も上なんですと言われた方がしっくりきてしまう。

「一体どうしたんだよマリアさん?」

「そうですよ!あんなダリア君を疑うような言い方するなんて!」

「・・・あなた達、私の才能の一つ、【看破】は知っているわよね?」

「もしかして、ダリアが嘘ついていたってのか?」

「いいえ、彼は本当の事しか言っていなかったわ」

「じゃあ、何も問題ないじゃないですか。どうしたんですか?書記長?」

「私はあの男爵の人となりを良く知っているけど、改心するような人種ではないわ。失踪したなんて天地がひっくり返ってもありえない」

「いや、しかし実際に忽然と消えちまったんだぜ?屋敷には争った形跡も血の一滴も無いし、屋敷の地下通路に物や小銭が散乱していたからそこからどこかに行った可能性があるって審問官は言ってたしな」

 男爵の屋敷には数人の衛兵が監視についていたらしいが、昨夜は何も起こっていないと証言していたそうだ。なぜ監視していたのかは、男爵の執事からダリア君が現れる可能性があるので見張って欲しいと言われていたようだ。その証言をもって確実な証拠として彼を処刑するのだと。

なぜそんな面倒な事をしたのかは、先の王国の主要な役職者が行った諮問会議の提案の中に、貴族からの一方的な証言のみで平民を罪に問うのは神の教えに反する行為だと言い続けていた教会の提言がようやく通った形だが、なにやら色々な利権が絡んだ結果そうなったらしい。そのおかげで、第三者の証言か確実な証拠が無ければ罪に問えなくなった男爵が画策した結果、衛兵を雇って監視させていたと審問官が言っていた。

 エリーの話では男爵の屋敷から助けられた時には、襲われそうになって目を閉じていたら急に男爵が吹き飛んで、自分も訳が分からず混乱していたらしい。その後屋敷から連れ出されて、気付くと目の前にはダリア君がいて助けてくれたんだと分かったという事らしく、具体的にどうやって助けられたかは分からないと言っていた。

 そして、昨夜は屋敷の中には使用人も含めて80人近い人間が居たらしいのだが、その全員が消えてしまっている。しかも、魔力感知器が張り巡らされ、外から衛兵が監視している中で全く気付かれずに。もしそれが出来てしまうような人物が存在したら・・・そう考えると背筋を冷たいものが走る。

確信の無い単なる憶測の様な考えだけど、私の質問に本来ダリア君は一言「何もやっていない」とか「知らない」と言えば済んだはずなのに、言葉を選んだ回りくどい言い回しをしていた。

(彼は私の才能に気付いて?いえ、それも考慮して受け答えをしていた?もし男爵が失踪ではなく、殺されたとしたらあの受け答えには確かに嘘はないわね。・・・でも血が一滴も無かったし、そもそも地下牢からは出てない・・・もう訳が分からない!でもあの子はなんだか危険な気がするわ。絶対に敵に回してはダメ!今回のエリーのように、味方であればこの上なく頼もしい存在になる)

「どうしたんですか書記長?」

「・・・ゼストさん、プラチナランクのあなただったら誰にも気づかれずに牢から出て、衛兵から監視されている屋敷で誰にも気付かれずに男爵達80人を殺害して完璧に後処理をすませることは出来る?」

「なんだよその無茶苦茶な条件は!?」

「いいから、出来る?」

「あ~、俺には2つどうしても出来ないな。牢から脱出は出来るが獄吏ごくりが見回りにきたらアウト。監視に気付かれずに殺害したとしても血が一滴も残らず完璧に事後処理もアウト。そもそも殺したら80人の死体はどうすんだよ?そんなことが出来る奴がいるならそれはダイヤランク以上の実力を持ってるってことだな」

「そう、ありがとう」

ゼストさんの言葉でこれから冒険者協会が彼に取るべき対応が見えてきた気がする。

(すぐに会頭と相談しなければ!)
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