13 / 133
魔人はバイ?
しおりを挟む
米田秘書官を送り届けた後、総本部に戻って作戦確認を終え、羽月は自宅マンションに帰った。
玄関のドアを開けると、綺麗に磨かれた靴が目に入る。左の壁に嵌め込まれている姿見鏡も綺麗になっている。
「あっ、相良少佐殿、お帰りなさい」
リビングに続くドアを開け、満面の笑顔をリリア王女が向けてきた。
「ただいま。色々綺麗にしてくれて、ありがとな」
「お世話になってますから」
当然の様に言うリリア王女を横目に、羽月はビジネスバッグを置き、洗面室に入る。
洗面台も、掛けているコップも綺麗になっていた。
メイドはいるよな……。
手を洗いながら、羽月は頭の中で疑問を呟いた。
「お夕飯、出来ましたよ」
そう声を掛け、リリア王女は電子レンジからキッシュを取り出した。
魔人は寒暑にとても強い。リリア王女はミトンや布巾を使わずに素手だ。
リビングに入った羽月は冷蔵庫を開けた。水とスポーツドリンク、ハイボールの全く同じ物が買い足されている。
子供は酒を購入出来ないが、店員がリリア王女を外国人だと誤認し、日本語は通じない思ってしまったので購入出来た。
「買い足しといてくれたのか。助かった」
「はい。アイスボックスも同じやつを買っておきました」
「気が利くな」
ねぇちゃんに、パシられてたのか……。
疑問を浮かべながら、テーブルの上にあるレシートを手に取る。買っているのは、安いスーパーで安売りしてある品物ばかりだ。
金銭感覚は普通か……。
声には出さずに羽月は呟く。
「あの……昨日の分と、志保さんから頂いた服とかの、領収書か履歴を頂けませんか? 帰ったらお支払いします」
控えめにリリア王女は尋ねる。
「別にいい。俺達はふざけていただけだ。あれくらい奢ってやるよ」
「駄目ですっ! ママに殺されますっ」
「んっ、女王陛下は怖いのか?」
「怖いってゆうか、厳しい……。でも、正しいですっ」
「正しい……ね」
意味深に漏らす羽月が気になったが、根掘り葉掘り質問するのは失礼にあたると思い、リリア王女は聞かない事にした。
「美味いっ! すげー美味い」
リスの様な顔で伊吹は絶賛する。
絶賛しながら、ビーフストロガノフとカボチャのキッシュ、ヴィシソワーズ次々と口に運び豪快に食べ続ける。
「嬉しいっ、よかったです。お姉ちゃんが、よく褒めてくれたんです」
食べ始めた手と口を止め、リリア王女は心底嬉しそうな笑顔を見せた。
——もうすぐ会える!
大好きなソフィア王女との再会を思い浮かべると、自然と胸が踊り出す。
「汚ねぇ食い方すんなよ。……金取れるレベルだな」
伊吹と比べれば軽薄だが、羽月も褒めた。
仕事が終わり自宅にいるので、羽月も伊吹も着崩してリラックス出来る格好をしている。
羽月はネクタイを外し、ワイシャツのボタンを二つ目まで外して袖捲りし、ズボンから裾を出しいる。伊吹は上着を脱いでいて、ショルダーホルスターを着脱している。
「ありがとうございます。フォーク取りましょうか?」
素手でキッシュを食べる二人を見て、リリア王女は尋ねたが、同時に「いい」と断られた。
立ち上がった羽月が、冷凍庫からアイスボックス、瀬戸内レモンを取り出す。それをグラス三分の一まで入れ、冷蔵庫から出したハイボールを注ぎ入れた。
「羽月っ、俺も」
催促した伊吹に、羽月は同様に入れて差し出す。
氷と違い薄まらないので、この割り方はかなり人気がある。居酒屋でも注文出来るほど定番の割り方だ。
「おかわり、どうします?」
「いる!」
透かさず、皿を前に出した伊吹の頭を羽月が叩く。
「っいてぇ」
「自分でやれよっ」
「えっ、やりますよ!」
叱る羽月に動揺しながら、リリア王女は両手を前に出した。
「いい。リリアは客だろ」
断りを入れた羽月は、伊吹と二杯目のビーフストロガノフを装り入れた。
「あの、折原大尉殿……」
「なげーよっ。俺等、堅っ苦しいの苦手だから、お兄さんでいいよ」
「全員、お兄さんじゃねぇか」
椅子に戻った羽月がチクリと刺す。
「じゃあ、伊吹さん」
「なぁに?」
遠慮気味に質問するリリア王女に、伊吹が戯けた返事をした。
「志保さんと羽月さん、どちらと付き合っているんですか?」
「えっ」
ゴホッ……ゴホッ……。
ハイボールを飲んでいた羽月は、思わず噎せた。
「やめろよ……。気持ちわりぃ」
羽月の顔にも声にも嫌悪が丸出しだ。
「やぁだ、ダーリン。十一の頃から仲良しじゃない」
戯ける伊吹に「きめぇ」と、羽月は悪態を吐く。
リリア王女は二人のやり取りを、きょとんとしながら見ている。
「志保が彼女だよ」
伊吹が笑顔で答える。
「コイツは腐れ縁だ」
断言する羽月に「ひでぇ」と伊吹が文句を垂らす。
「魔人は、バイが多いんだっけ?」
伊吹の質問に「はい、私もです」と、リリア王女は答えた。
魔人は両性愛者が多く、自分と同じ同性を好きになるのは当たり前の事と認識されている。羽月の反応を、リリア王女は軽蔑はしないが不思議に感じた。
送信
玄関のドアを開けると、綺麗に磨かれた靴が目に入る。左の壁に嵌め込まれている姿見鏡も綺麗になっている。
「あっ、相良少佐殿、お帰りなさい」
リビングに続くドアを開け、満面の笑顔をリリア王女が向けてきた。
「ただいま。色々綺麗にしてくれて、ありがとな」
「お世話になってますから」
当然の様に言うリリア王女を横目に、羽月はビジネスバッグを置き、洗面室に入る。
洗面台も、掛けているコップも綺麗になっていた。
メイドはいるよな……。
手を洗いながら、羽月は頭の中で疑問を呟いた。
「お夕飯、出来ましたよ」
そう声を掛け、リリア王女は電子レンジからキッシュを取り出した。
魔人は寒暑にとても強い。リリア王女はミトンや布巾を使わずに素手だ。
リビングに入った羽月は冷蔵庫を開けた。水とスポーツドリンク、ハイボールの全く同じ物が買い足されている。
子供は酒を購入出来ないが、店員がリリア王女を外国人だと誤認し、日本語は通じない思ってしまったので購入出来た。
「買い足しといてくれたのか。助かった」
「はい。アイスボックスも同じやつを買っておきました」
「気が利くな」
ねぇちゃんに、パシられてたのか……。
疑問を浮かべながら、テーブルの上にあるレシートを手に取る。買っているのは、安いスーパーで安売りしてある品物ばかりだ。
金銭感覚は普通か……。
声には出さずに羽月は呟く。
「あの……昨日の分と、志保さんから頂いた服とかの、領収書か履歴を頂けませんか? 帰ったらお支払いします」
控えめにリリア王女は尋ねる。
「別にいい。俺達はふざけていただけだ。あれくらい奢ってやるよ」
「駄目ですっ! ママに殺されますっ」
「んっ、女王陛下は怖いのか?」
「怖いってゆうか、厳しい……。でも、正しいですっ」
「正しい……ね」
意味深に漏らす羽月が気になったが、根掘り葉掘り質問するのは失礼にあたると思い、リリア王女は聞かない事にした。
「美味いっ! すげー美味い」
リスの様な顔で伊吹は絶賛する。
絶賛しながら、ビーフストロガノフとカボチャのキッシュ、ヴィシソワーズ次々と口に運び豪快に食べ続ける。
「嬉しいっ、よかったです。お姉ちゃんが、よく褒めてくれたんです」
食べ始めた手と口を止め、リリア王女は心底嬉しそうな笑顔を見せた。
——もうすぐ会える!
大好きなソフィア王女との再会を思い浮かべると、自然と胸が踊り出す。
「汚ねぇ食い方すんなよ。……金取れるレベルだな」
伊吹と比べれば軽薄だが、羽月も褒めた。
仕事が終わり自宅にいるので、羽月も伊吹も着崩してリラックス出来る格好をしている。
羽月はネクタイを外し、ワイシャツのボタンを二つ目まで外して袖捲りし、ズボンから裾を出しいる。伊吹は上着を脱いでいて、ショルダーホルスターを着脱している。
「ありがとうございます。フォーク取りましょうか?」
素手でキッシュを食べる二人を見て、リリア王女は尋ねたが、同時に「いい」と断られた。
立ち上がった羽月が、冷凍庫からアイスボックス、瀬戸内レモンを取り出す。それをグラス三分の一まで入れ、冷蔵庫から出したハイボールを注ぎ入れた。
「羽月っ、俺も」
催促した伊吹に、羽月は同様に入れて差し出す。
氷と違い薄まらないので、この割り方はかなり人気がある。居酒屋でも注文出来るほど定番の割り方だ。
「おかわり、どうします?」
「いる!」
透かさず、皿を前に出した伊吹の頭を羽月が叩く。
「っいてぇ」
「自分でやれよっ」
「えっ、やりますよ!」
叱る羽月に動揺しながら、リリア王女は両手を前に出した。
「いい。リリアは客だろ」
断りを入れた羽月は、伊吹と二杯目のビーフストロガノフを装り入れた。
「あの、折原大尉殿……」
「なげーよっ。俺等、堅っ苦しいの苦手だから、お兄さんでいいよ」
「全員、お兄さんじゃねぇか」
椅子に戻った羽月がチクリと刺す。
「じゃあ、伊吹さん」
「なぁに?」
遠慮気味に質問するリリア王女に、伊吹が戯けた返事をした。
「志保さんと羽月さん、どちらと付き合っているんですか?」
「えっ」
ゴホッ……ゴホッ……。
ハイボールを飲んでいた羽月は、思わず噎せた。
「やめろよ……。気持ちわりぃ」
羽月の顔にも声にも嫌悪が丸出しだ。
「やぁだ、ダーリン。十一の頃から仲良しじゃない」
戯ける伊吹に「きめぇ」と、羽月は悪態を吐く。
リリア王女は二人のやり取りを、きょとんとしながら見ている。
「志保が彼女だよ」
伊吹が笑顔で答える。
「コイツは腐れ縁だ」
断言する羽月に「ひでぇ」と伊吹が文句を垂らす。
「魔人は、バイが多いんだっけ?」
伊吹の質問に「はい、私もです」と、リリア王女は答えた。
魔人は両性愛者が多く、自分と同じ同性を好きになるのは当たり前の事と認識されている。羽月の反応を、リリア王女は軽蔑はしないが不思議に感じた。
送信
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる