BloodyHeart

真代 衣織

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ガッカリスクールライフ

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「初めまして。リリア・テレジアです。宜しくお願いします」
 ホワイトボードの前で、教室にいる女生徒達にリリアは頭を下げた
「席は、一番後ろになります」
 恐れ多い王族に、若い女性教官はギクシャクしながら用意した席を指差した。
 教室にいる生徒達は、リリアと同い年くらいだ。
 戦闘員の入校年齢は十二歳が多く、非戦闘員は十六歳が多い。
 非戦闘員の入校した月から支給される給料は、戦闘員の半額だが生活手当は同額の五万円になっている。
「宜しくお願いします」
 指差された席に着き、隣の席に座る女生徒に声を掛けた。……が、冷たい表情で無視されてしまう。
 想定内の反応だったが、リリアはしょんぼりした。
『ここの生徒は、他に行き場のない子供が殆どですから、歓迎はされないと思います……』
 入校前に、シェリー同伴で説明を受けた。その時に言われていた事だ。
 対イーブル軍養成施設は、合同訓練以外では男女で学び場が分かれている。
 女性は狙われやすい為、戦闘員に女子枠はない。女子は、後方支援の中でも危険の少ない任務に就く。武器と弾薬以外の運搬を行う部隊と、男女で募集している通信、衛生部隊に限られている。
 リリアが学ぶのは、後方支援全般の基礎、後方基礎コースだ。リリアは基礎までだが、多くは希望の専攻コースに進学する。システムエンジニア、看護師や救命士の資格を取る。
 サキュバス王国の全面支援により、学費は全て無料になっている。生徒の中では、資格取得の為に入校し、軍以外へ就職する生徒も多くいる。それでも、やむを得ない事情がない限り有事は収集される。
 多くは二年程で必要な単位を取得するが、リリアはもっと早くなる。高校や大学の課程で、免除になる単位が幾つかあった上に、三〇一隊の任務でも単位を取得出来るからだ。
 ——教室移動の際に、話し掛けても無視された。
 午後七時になり、しょんぼりしながら下校すると門の前にシェリーがいた。
 近くに、黒いセダンが停まっている。
「リリア様、お迎えに上がりました」
「どうぞ、乗って下さい」
 助手席から降りた福田司令官が、シェリーに続いて声を掛け、後ろのドアを開けた。
「すみません」
 申し訳なさそうに、リリアは会釈して車に乗り込む。
「お疲れ様です」
 運転席の三田司令官が、振り向きペコリと頭を下げてきた。
 警察部隊の司令官二人とシェリーの送迎が、今のリリアには気まずくて仕方がない。
「あの……御面倒でしょうから、送り向かえは無くていいです」
 心底申し訳無さそうに、リリアは口を開いた。
「全然、面倒じゃないですよ。相良よりも我々の方が信頼出来ますから、何でも言って下さいね」
 そう言い、福田司令官は満面の笑みを向けてくる。
「相良なんか信用しちゃいけませんよ。あいつは外道の極悪人ですっ」
 運転する三田司令官は、嫌悪を露骨に言い切った。
「どういう訳があっても、名誉毀損だっ!」
 シェリーが怒鳴った。
「いえ……。私共は、リリア様を案じて……」
「間違いを刷り込まれないようにと……」
 ビクつきながら、司令官の二人は言い訳をする。
「本当に悪人なら、貴様等には野放しにした責任がある!」
 シェリーは一刀両断した。
「言っても聞かない奴でして……」
「どうやら、貴様等に器がないのは本当らしいな」
 ビクつきながらも言い訳を続けていた司令官達だが、シェリーに決定打を言われ沈黙した。
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