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リゾートホテル
8.原因
しおりを挟む翌朝。
「おはようございます」
コーヒーの良い香りが鼻腔をくすぐり、目を開けると、いつにもなくニコニコしている水川とカーテンから漏れる眩しい朝日。
「…ん、おはよう。…あれ?」
あれ、一緒にお風呂に入って色々されて、そして…?
「顔を洗ってきますか?コーヒーを買ってきましたよ」
「あ、うん、洗ってくる」
頭がスッキリしない中、まずは顔を洗おうとベッドから足を出す。
あれ、やけに足元がスースーする。
ふと自分の体を見ると、バスローブを身にまとっている。
「わっ」
なんで私はバスローブだけを羽織っているんだ!下着は!?思わずバスローブの襟を持ち上げ中を見ると、ブラはつけておらず、下はすごく薄いショーツを履いていた。これってホテルのアメニティグッズのショーツだろうか。
「あぁ、ごめんなさい、温子さん全然起きないから、とりあえずバスローブにしたんです。風邪引いてないですか?」
「え?あ、うん別に風邪とかは大丈夫だけど……え!なんて?私が起きないって」
「昨日のこと覚えてますか?」
「えっと一緒にお風呂入って、それから……その、なんていうか、こう色々…したところまでは覚えてるんだけど」
「色々して、途中で気を失っちゃったんですよ。驚きました。それから起きなかったから、ベッドに運んだんですよ」
水川は笑いながら語り始める。
え?なにそれ、私、気を失ってたの!?
「本当驚きました。まぁ、良いです。頑張った甲斐がありました」
「なにいってっ」
「気持ち良かったってことだから僕としては嬉しい限りです。まぁ途中で放って置かれたことは困りましたけど、今度埋め合わせしてくれたら許します」
ポカーンとする私。
水川は次は宜しくお願いしますと笑っている。
◆◆◆◆
「貴音っ!そんなに笑わないでよ!」
「いやだって、なにそれ!うわー、水川君気の毒だわ」
貴音に「ホテルデートどうだった」と言われ、しぶしぶ話すと、大爆笑された。
私だってこんなつもりじゃなかった。気を失うなんて、別にお湯に逆上せたわけでもないのに、なぜなのか分からない。
「そんなに笑わないでよ」
「ごめんごめん、いやぁーおっもしろいわー」
そしてまた笑い始める貴音。
「悪いことしたって思ってるよ、介抱させちゃったし。多分レストランで飲んだ地ビールのせいかもしれないんだよね。度数高めだったかも。お酒飲んでお風呂に長めに入ったから体調悪くなって気を失ったのかなって思う。次は気をつける」
「次は気をつけるって、どうするのよ」
「だからお酒は飲まないか、お風呂でそういうことはしない」
「ふーーん、まぁいいんじゃない」
貴音は口元に手を当てているが、にやにやしていることは隠せない。
「なに?何か言いたいの?」
「べっつにー。でも、お酒飲んでなくてもお風呂でしてなくても同じことになったと思うなぁってだけよ」
「へ?なんで?」
「教えなーい。まぁ良かったじゃない、痛くなかったんなら。そういうことよ」
「はあ……」
とにかく、私としては次の機会を早めに設けたい。最後までしてみたかったこともそうだが、水川への申し訳のなさが強い。水川は全然良い思いをしていなかったと思う。申し訳ない。
私の部屋に誘うか、水川の部屋に行ってみたいとお願いするか、何にせよお泊りできる機会を作りたい。
すると、ラッキーなことに1週間もしないうちにその機会がもたらされた。
◆◆◆◆
「一緒に出張できるなんて嬉しいですね」
「うん、中々こういう機会って無いから珍しいね。はい、コーヒー飲む?」
「頂きます」
始発の新幹線に乗り、軽めの朝食を2人で食べる。
水川が担当しているお客様から、入浴剤の開発者とも直接話しをしてみたいというご要望を受け、水川と室長が出向くことになっていた。開発者が客先へ行くことは滅多に無いが、上お得意様なので室長もしぶしぶだったが…
その室長の都合が急遽悪くなり私に回ってきた。室長はこういうの面倒くさがるタイプだし、都合悪くなったとか言ってただ単に嫌だっただけではと思わなくないが。私は社外の人からのフィードバックも欲しいから嬉しい。
そして今回はお客様の会社が遠いため泊りである。金曜に伺って、夜は会社の方と私たちで食事会。その日は泊まって土曜に帰る。
そう、これってもしやこの前のことを挽回するチャンスなのでは。夜、泊まるビジネスホテルのどちらかの部屋で挽回できるかも!?
そんな邪な思いから、泊まるビジネスホテルを予約するときには、普段なら寝れるならどこでもだが、今回は社内規定で許されている上限金額を目一杯使い、広めの部屋、もっといえばベッドも広めのビジネスホテルを予約した。
もちろん部屋は別々だが、どちらかの部屋で……っ!と思う。
「さて、そろそろ着きますね。今日一日宜しくお願いします」
「こちらこそ。あ、社外で温子さんなんて呼ばれたら恥ずかしいから気をつけてね?」
「はい気をつけます、伊角さん」
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