上 下
2 / 9

2.ドアを叩く音

しおりを挟む
一階のクリーンルームにいる麗奈は外の異変に気づかないまま、黙々と一人で片付けをしていた。

「ふぅ、これで終わりっと。それにしても……ちょっと遅いなぁ」

麗奈は、5階に行った大宮がもう戻ってきていい頃なのにと思う。
(教授が夕食なんかより研究だ!って言ってるのかな。それならそれで2人きりで行けるんだけど)

麗奈は一緒に研究する仲間である大宮に惹かれている。
元々研究室で2人でいる時間は長かったが最近は実験終わりに二人で食事に行ったりすることも増え、ついこの間なんて大宮に誘われて実験も何もない日に「麗奈さんが好きそうなパンケーキのお店がある」と一緒に行ってきた。いい感じに距離が縮まっていると感じていた。

今日ももしかしたら夕食行くかも……っと思ったから、体のラインが出るワンピースにしたし、何なら下着だって気合いは入っている。

(お腹もかなり減ってきたし、私も5階に行こう)

麗奈は片付けを終えたクリーンルームを出ようと、二重扉の内側のドアを一つ開け、簡易防塵服を脱ごうとした。


ドン……ドン……

二重扉の外側のドアが叩かれる。

(あ、大宮くんが帰ってきた)

「は~~い、もう出るからちょっと待ってて」

ドア越しでも聞こえるような大きな声で応える。


ドン……ドン……
ドゴン……ドドン……

返事をしたのに、まだドアを叩く音。
(別に鍵もかけてないし入ってきてもいいのに、大宮くん律儀だなぁ)

中に入れてあげようと、ドアノブに手を掛けようとしたとき……。



プルルルルル
プルルルルル

部屋の内線が鳴る。

「え?」

内線が鳴り響くなか、ドアの向こうではドン!ドン!と強い音。


プルルルルル
プルルルルル

静かだったクリーンルームに急に内線の呼び出し音と、ドアを強く叩く音が響き麗奈は軽く混乱する。


内線はあとで出ようと、ドアを開けて大宮を中に入れようとする。しかしドアを叩く音は普通のノックの音ではなく、しかも何かの唸り声がかすかに聞こえる。

麗奈は悪寒がし、ドアから半歩遠ざかる。
ドアは後にして内線をまず取ろうと、クリーンルームの中に戻り受話器を上げた。


「はい、もしもし」

「羽屋!」

「え、あ、はい、羽屋です。教授……?」
いつもの声の感じとは少し違うが、この声は間違いなく延田教授だ。

「いい?とにかくドアを開けたらダメ」

「え?え?なにを言って……」
教授はいつも突拍子もないことを言うし、研究内容だって世間から理解されないようなものばかりだがドアを開けるななんて何を言っているの。

「よく聞ききなさい、今、研究棟内に……」

「はぁ」

「ゾンビがいる」

「はぁ~~~~?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

出雲死柏手

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:3

そこまで言うなら徹底的に叩き潰してあげようじゃないか!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,290pt お気に入り:46

チョロイン2人がオイルマッサージ店でNTR快楽堕ちするまで【完結】

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:294

純潔な妻を持つ男が熟れた女に劣情する

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:20

【R18】あんなこと……イケメンとじゃなきゃヤれない!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:539pt お気に入り:60

中学生の弟が好きすぎて襲ったつもりが鳴かされる俳優兄

BL / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:152

処理中です...