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8.ピンクの煙
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あともう少しで唇が触れ合う……というところで、内線の非情な呼び出し音が鳴り響く。
二人はハッとし我に返る。
(い、い、いま私、大宮くんとキ、キ、キスしそうだった!?)
大宮が内線を取ると案の定5階にいる延田からだ。
あれからもう2時間経っていることに驚きながら、延田からの指示を聞く。
「……はい、ええ、……あ、そうですね………分かりました、じゃあまた後ほど」
電話を切ると、大宮が大きく咳払いをする。
「えっと……、教授が5階に来なさいって」
「あ、そ、そうだね!ゾンビも煙もそろそろ大丈夫かも」
麗奈も大宮も気まずさから目を合わせないようにする。
そして取れかけていたブラもきちんと直し、薬品の入った瓶を麗奈が改めて確認する。
二人はそろりそろりと資料室のドアを開け、外の様子を確認する。
こくりと頷きあい、5階へと走っていく。
◆◆◆◆
その後は拍子抜けするほどスムーズに事が運んだ。
延田は麗奈から受け取った薬品ですぐにゾンビを元の死体に戻す薬を作り上げた。麗奈も大宮も研究室に置いてあった寝泊まり用の予備の服を着た。
そして紫の煙の効果もなくなる中和剤を研究棟内に設置し、研究棟は元の安全な場所へと戻った。
しかし元に戻らなかったこともあり……
平日の研究棟内でいつものように延田と麗奈と大宮は実験をするが……
((き、気まずい!!!))
麗奈と大宮は顔を合わせるたびに、資料室でのアレヤコレヤを思い出し赤面する。
普段は何も気にしていない延田でさえ、2人の仲がおかしいことに気づいた。それもあのゾンビの事件から。
ゾンビ事件はさすがの延田も反省をした。これまでなら院生は大人なのだから別に喧嘩しようが何しようが我関せずだったが、もしかしたらゾンビ事件が関係あるのかもしれない。
(一応、何かあったか確認するか……)
「おい、大宮。ちょっと外に出て行っててくれ」
何の脈略もなく延田は大宮に外に出ていけという。延田は麗奈と2人きりで話そうと思ったのだ。
「え、何でですか?」
「何でもないが、、、、あぁ、資料室に取りにいってほしいものがあるから。ほら早く。……これに関連する資料を探してきなさい」
「は、、はぁ」
大宮は首をかしげながら、研究室から出て行った。
◆◆◆◆
「何か大宮とあったのか?」
大宮が出て行った瞬間、何の枕詞もなく延田の質問が始まる。しかし今の麗奈は"大宮"という言葉にすら、ビクっと反応してしまう。
人のことなんていつも気にしない延田から問われ、それほどバレバレだったのかと恥ずかしくなる。
「……何でも……ないです……」
「本当か?」
「えっとその、あったはあったんですけど……私がはっきり言わないせいなだけで……」
(気まずいのって、私がはっきりさせてないから、なんだよね。大宮くんにちゃんと告白とかすれば、どっちに転んでも今の気まずさはマシになるかもだけど)
「はぁ?言わないせいって何を?あれか、何か大宮にやめて欲しいことがあってそれが言えないのか?じゃあ私から言う」
「ち、違うんです!私から言いたいんですけど、、、、恥ずかしくて……!」
「???」
ちっとも延田は理解できない。
言いたいのに言えないって何なんだ。
「言ってしまえば解決するのか?」
「言えるなら……ですけど、はい、一応解決すると思います」
(別に彼氏彼女になれなくても、このままずっと気まずいのは嫌だし。白黒はっきりさせたい)
「なんだ、じゃあ思っていることをそのまま言えるようになればいいんだな。簡単なことだ」
延田はガサゴソと、研究室の奥から何かを取り出した。
そしてキュポンという音があった瞬間、取り出したものーーそれは小さな小瓶だーーを麗奈の顔にぐっと近づけた。
モクモクモクッ
「え!!!」
急に小瓶からピンク色の怪しげな煙が出てきて、驚いた麗奈は吸ってしまう。
延田は自分の口元は服の袖で覆いながら麗奈に説明する。
「これで思ったことは口にできるから、大宮と話しなさい」
せき込む麗奈を延田が無理矢理に「資料室に行って来なさい」と押し出した。
さて、これから資料室では何が起きるのか……
end.
二人はハッとし我に返る。
(い、い、いま私、大宮くんとキ、キ、キスしそうだった!?)
大宮が内線を取ると案の定5階にいる延田からだ。
あれからもう2時間経っていることに驚きながら、延田からの指示を聞く。
「……はい、ええ、……あ、そうですね………分かりました、じゃあまた後ほど」
電話を切ると、大宮が大きく咳払いをする。
「えっと……、教授が5階に来なさいって」
「あ、そ、そうだね!ゾンビも煙もそろそろ大丈夫かも」
麗奈も大宮も気まずさから目を合わせないようにする。
そして取れかけていたブラもきちんと直し、薬品の入った瓶を麗奈が改めて確認する。
二人はそろりそろりと資料室のドアを開け、外の様子を確認する。
こくりと頷きあい、5階へと走っていく。
◆◆◆◆
その後は拍子抜けするほどスムーズに事が運んだ。
延田は麗奈から受け取った薬品ですぐにゾンビを元の死体に戻す薬を作り上げた。麗奈も大宮も研究室に置いてあった寝泊まり用の予備の服を着た。
そして紫の煙の効果もなくなる中和剤を研究棟内に設置し、研究棟は元の安全な場所へと戻った。
しかし元に戻らなかったこともあり……
平日の研究棟内でいつものように延田と麗奈と大宮は実験をするが……
((き、気まずい!!!))
麗奈と大宮は顔を合わせるたびに、資料室でのアレヤコレヤを思い出し赤面する。
普段は何も気にしていない延田でさえ、2人の仲がおかしいことに気づいた。それもあのゾンビの事件から。
ゾンビ事件はさすがの延田も反省をした。これまでなら院生は大人なのだから別に喧嘩しようが何しようが我関せずだったが、もしかしたらゾンビ事件が関係あるのかもしれない。
(一応、何かあったか確認するか……)
「おい、大宮。ちょっと外に出て行っててくれ」
何の脈略もなく延田は大宮に外に出ていけという。延田は麗奈と2人きりで話そうと思ったのだ。
「え、何でですか?」
「何でもないが、、、、あぁ、資料室に取りにいってほしいものがあるから。ほら早く。……これに関連する資料を探してきなさい」
「は、、はぁ」
大宮は首をかしげながら、研究室から出て行った。
◆◆◆◆
「何か大宮とあったのか?」
大宮が出て行った瞬間、何の枕詞もなく延田の質問が始まる。しかし今の麗奈は"大宮"という言葉にすら、ビクっと反応してしまう。
人のことなんていつも気にしない延田から問われ、それほどバレバレだったのかと恥ずかしくなる。
「……何でも……ないです……」
「本当か?」
「えっとその、あったはあったんですけど……私がはっきり言わないせいなだけで……」
(気まずいのって、私がはっきりさせてないから、なんだよね。大宮くんにちゃんと告白とかすれば、どっちに転んでも今の気まずさはマシになるかもだけど)
「はぁ?言わないせいって何を?あれか、何か大宮にやめて欲しいことがあってそれが言えないのか?じゃあ私から言う」
「ち、違うんです!私から言いたいんですけど、、、、恥ずかしくて……!」
「???」
ちっとも延田は理解できない。
言いたいのに言えないって何なんだ。
「言ってしまえば解決するのか?」
「言えるなら……ですけど、はい、一応解決すると思います」
(別に彼氏彼女になれなくても、このままずっと気まずいのは嫌だし。白黒はっきりさせたい)
「なんだ、じゃあ思っていることをそのまま言えるようになればいいんだな。簡単なことだ」
延田はガサゴソと、研究室の奥から何かを取り出した。
そしてキュポンという音があった瞬間、取り出したものーーそれは小さな小瓶だーーを麗奈の顔にぐっと近づけた。
モクモクモクッ
「え!!!」
急に小瓶からピンク色の怪しげな煙が出てきて、驚いた麗奈は吸ってしまう。
延田は自分の口元は服の袖で覆いながら麗奈に説明する。
「これで思ったことは口にできるから、大宮と話しなさい」
せき込む麗奈を延田が無理矢理に「資料室に行って来なさい」と押し出した。
さて、これから資料室では何が起きるのか……
end.
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