いずれ勇者の君へ

ヤツカツイタチ

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アイテムマスター その1

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「クリプト、お前はクビだ!」「ええ!?」
ここはデモンストーン渓谷にあるダンジョン、パデモニアダンジョンの深部階層である。
この階層のフロアボスを倒した後のボス部屋で、クリプトはパーティーリーダーのAランク戦士アレイオスにそう告げられた。
「なんで…しかもこんな所で…?」クリプトは流石に狼狽した。ここまでパーティ連携も良く、順調に進んできていたので混乱している。
「なんでって、お前なぁ…お前は後方でポーションやらを投げて援護するくらいで、魔物への攻撃を一切しないじゃないか!?」
アレイオスは憤りを覚えている。パーティの先頭に立ち、防御面を一手に請け負っていたのだ。
アレイオスはタンクとしての能力は帝都ギルド内でも屈指の実力者である。彼が先頭に立ち、後方から攻撃魔法を撃つ、これがこのパーティの基本スタイルになっていた。
後方でアレイオスを支援するAランク神官戦士のソーリョと魔法攻撃をするAランク魔法師マジク・ジャクソン老、それをサポートし、荷物持ちをするAランクアイテム師クリプトという具合である。完全なAランクパーティーだった。
「自分だって戦いに貢献してるはずだ、こいつを敵に投げたりとかして…」「ただの草じゃねーか!!!」アレイオスはクリプトの持つ草を見て激怒した。
この草は、確かにこのパデモニアダンジョンに生えている雑草である。雑草なのだ。普通のヒトからすれば。
この草は正式名『パデモニウム・ハシリドコロ』という。この草を食らうとめまい幻覚以上興奮を伴う恐れがある、という代物だ。
アイテム師としてこのハシリドコロ草をモンスターに投げつけると効力が倍増されて魔物を惑わせることが出来る。見た目は地味だが、クリプトは己の才能をフルに使ってサポートをしていたつもりでいた。ただ、アレイオスから見ればただただ草を投げていただけに過ぎない、と言った感じだったみたいだ。
「クリプト、お前もここまで頑張って付いて来たんだから、このフロアボスまでの成果まで皆と分け合おう。だが、ここからは俺たちだけで先に進むことにする」
「…わかった。リーダーがそういうんじゃ仕方がない…ここで別れよう」クリプトは了承した。
元々別に長い間共にした仲間ではなく、たまたま欲しいアイテムが手に入るダンジョンの探索で、人員募集していたパーティに加わっていただけだった。他の二人も同じであろう。
「ごめんなさい、リーダーが決めた方針だから…」ソーリョが適当に謝っている。
「短い間じゃったが、楽しかったぞ若者よ」マジク老も声をかけてくれた。
「とりあえず、このダンジョンで入手したアイテムを分配しよう」クリプトは荷を下ろして中身を取り出す。
鞄からダンジョン収集品を次々と取り出すクリプトを見て、アレイオスは驚愕した。何でそんなに物が入ってんだそれ…?
アイテム士はマジックバックという冒険者なら誰でも持ち歩いている収納鞄の中身を拡張できる。A級のアイテム”師”であればその容量は膨大だった。荷物持ちとしては破格の優秀さである。
「どれもガラクタや魔物の死骸ばかりじゃないか!?」「いやいや、アレイオスよ、この魔物は素材として優秀じゃて…」「しかし…」
アイテム師からすれば様々な物を素材として利用できるので、一応気になるものを拾う事にしているクリプトと戦士一辺倒のアレイオスでは感性が違うのであった。そして、マジク老は流石に博識だな、とクリプトは思った。
「とりあえず、みんなが不要だと思ったものは自分が買い取ろう」クリプトはそう言った。それでもアレイオス達からすれば不要なガラクタばかりとも言える。
アレイオスパーティーはボス部屋で車座になり、アイテムを分けあったのであった。

クリプトは今いる深部フロアボス希少ドロップである『超魔合金の盾』を鑑定しアレイオスに渡した。これでアレイオスの防御面は素晴らしい物になるだろう。本人も納得しているようだ。この盾一つで帝都郊外に家を一件建てられる代物だが、とりあえずこの盾は此処までの一番の功労者であろうアレイオスに進呈した。値段はともあれ、ここからの戦いで確実必要になるであろうし、他の二人も納得したのだった。
ソーリョは途中に現れた武道が得意なリッチがドロップした武道神術書や高値魔導装飾品を選び、マジク老は魔金属のあしらわれた高価なローブや、特殊金属で出来た魔力増幅の杖をクリプトの鑑定後受け取った。
本来なら街でやる作業なのだが、生憎と戻るには惜しい深部まで来ている上にAランクアイテム師の鑑定作業は鑑定用器材があればどこでも出来るので、こんな所でこの作業をやっている。
初めて来たが、流石に深部になると収集品が桁違いだな…クリプトは鑑定しながらそう思っていた。
クリプトは上層部ボスが落とした短剣を手に「これは俺がもらっていいか?」と皆に訪ねた。一応の希少ドロップで値段はそれなりの短剣だった。
「俺は構わないが?」「私は一応神官だから刃物使えない…」「ワシも異論はないぞ?」「ありがとう」
元々この短剣が欲しくてこのパーティに加わっていたのだ。あまりに順調すぎてこんな所まで来てしまったが…
「では、残りの物を俺が買い取った結果がこれで、4人分配でこの通りになるが、よろしいか?」クリプトは収集品合計を計算し分配分の金額を提示した。
「わかった、これで良い」「こんなに貰っていいの?」「一ヶ月は十分に遊べそうな金額じゃな」
各々は納得したようだった。実際かなりの金額だった。こうして此処までの収集品の精算が終わった。

「まあ、その、俺の最初の言葉が悪かったな、謝る」アレイオスは次々と大量の収集品を取り出してたクリプトを見てから、正直己の中の憤りが消えていた。クリプトは確かに優秀だった。戦闘では草とか石とかポーションを投げることしかしてくれてなかったけれども。
「いや、自分も出来ることしかしてなかったからな、気に障ったのなら謝るよ」クリプトもアレイオスの意を汲んで謝る。
「ここからもっと過酷になるかも知れない、アイテム”士”のクリプトには危険かも知れないからな…」「それもそうだ」クリプトは全くそう思っている。
「機会があれば、またパーティー組みましょう、クリプトさん」「ああ、ありがとうソーリョ」
「また会おう、アイテム師の若者よ」「ええ、マジク老」マジク老と握手を交わす。
「アレイオス、今日はかなり儲けさせてもらった、お返しにこいつを受け取ってくれ」クリプトは自ら作ったポーションや薬、調合アイテム、多めの保存食を渡した。
「お互いに無事でまた会おう」「ああ、クリプト、恩に着る」
アレイオス達が下の階層に降りるのを見送った後、クリプトは己のが開発した『改造ダンジョン抜けロープ』を使った。
パデモニアダンジョン上層階で少し素材を調達して帰ろう。そう思い、適当な上層階に移動するのであった。
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