魔法少女は彼の心だけ手に入れたい

かりえばし

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ココナ、魔法少女になる(強制イベント)

受験生ココナ、不可抗力で魔法生物を拾う

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私、春野ココナは大学受験を控えた高校3年生だ。
図書館の中が温かくて快適すぎるせいでウトウトしそうだったが、幼馴染のミツルに声をかけられてはっとした。

「ココナ、勉強に来たんだから寝ちゃダメだよ」

優埼ミツルは文武両道、性格よし、顔よしと非の打ち所がない優等生。
高校では、教師からも生徒からも人気があり生徒会長に推薦されるほど人望も厚い。

こんな優秀すぎる幼馴染と育った私は、平々凡々。
成績は可もなく不可もなくといったところ。

我ながら、よくひねくれずに育ったものだと感心する。
幼馴染という関係性は特殊で、腐れ縁ともいえる。

私はミツルと比較されながら生きてきたといっても過言ではない。

「ココナは前向きだから、偏差値もすぐ追いつくよ」

ミツルは私を甘やかして褒めるのが上手い。
自分が褒められている時も、彼は私のことを「すごい」と褒めてくれるような性格なのだ。
だからひねくれることなく育ったのだと思う。

「ミツル、ここ教えて」
「これ? ここはこの方程式を入れて計算してから……」

教え方も抜群にうまい。ミツルと同じ大学に行きたい私は必死に勉強しなければ偏差値が足りない。
そこで教師役を引き受けてくれたのがミツルだった。
ミツルのおかげで平々凡々な私でも成績が順調にあがっている。

「ココナは素直だから飲み込みも早いね。
僕が教えなくても自力で解決出来ちゃいそう」
「ミツルが教えてくれるから結果につながるの!」
「そう? じゃあ僕も頑張らないとね」

ミツルは朗らかに微笑んだ。
この笑顔で女子は落とされる。ミツルは告白されることも多いのになぜか誰とも付き合わない。

彼女を作らない理由を聞いてみたこともあるが、僕にはココナがいるからとよくわからない答えを返されるだけだった。

窓の外を見るともう日が沈みかけていた。

「そろそろ切り上げようか。僕はバイトがあるから先に行くね。ココナは可愛いから、気を付けて帰るんだよ?」

真剣な顔でいわれても私は軽く笑い飛ばした。

「まだ明るいから大丈夫。バイト頑張ってね。今日もありがとう」

図書館から出ていくミツルに手を振りながら、私も帰り支度をした。

帰り道、いつもと変わらない街並みを目で追いながら母親から頼まれていたおつかいを思い出す。

「牛乳と卵かうの忘れてた……スーパー通り過ぎちゃったなぁ。裏道から引き返すか」

裏道というのは用水沿いにある砂利道のこと。
人と自転車くらいしか通れない狭い道だが抜け道として使う人も多い。

裏道に入っていくと頭上が急に暗くなった。

「なんだろ? 曇ってきたのかな?」

空を見上げると、ピンク色の毛玉がひゅるひゅると落下してきた。

「へ?」

毛玉は私の腕の中にずしんと落ちてきた。
結構重いぞ……

「助けてほしいポコ……」
「ひっ!?」

毛玉がしゃべって、うるんだ瞳で私を見つめてきた。
あ、だめこれ、可愛くて助けたくなるフラグだ……

ピンク色の毛皮をしたもふもふでラブリーなタヌキ?いやウサギ?は弱弱しい声ですすり泣いた。

「オイラ、このままだと悪魔の餌食にされちゃうんだぽこん……」

えぐえぐと泣きながら、狸ウサギは私の胸にすり寄った。

「ポコだぽこん。えぐえぐ……助けてなのだ……」

私は庇護欲をかきたてられ、助けることを決意した。

「ねぇ。きーみ?」

後ろからいきなりふうっと息を吹きかけられて、ぞくりとする。
足音なんてしなかったし人の気配もしなかったのに背後に立っている男がいた。

「あ、ごめんね。驚かせちゃった?」

男は耳の先がとがっており、黒髪の中に白のメッシュが混ざっている。

「いきなり後ろから現れないでよっ」

私は男を突き飛ばした。

「いってぇ……あのさ、俺、そのでっぷりした生き物の飼い主なんだよね。
拾ってくれてどうもありがと。返してくれないかな?」

男は紳士的な振る舞いでにっこりとしていたが、赤い瞳は冷たく凍りついている。 
狸ウサギは私に強くしがみつき、ガタガタと震えていた。

「だ、誰か! この人、ち、痴漢ですっ」

「お、おいっ!」

さすがに痴漢呼ばわりされるとは思っていなかったらしい。男は慌てて私の口を塞ごうとした。

「きゃーー! いやーー!」

「ちっ、俺が好きなのはもっと色気のある女なのに……」

男はいつの間にかこちらの懐へすべりこみ、人差し指で私の唇に触れた

「でもまぁ、威勢の良さだけは認めてやる。今回はこれで引き下がってやるよ」


チュ、




と音を立てて




男は、私の頰にキスをした。


「う、そ……こんなことで……」

私の、初めてが奪われるなんて(ほっぺだけど)

「またな、赤毛のはねっかえり。俺の名前はアクトだ。覚えとけよ」

 そして男は悪魔のように口角をあげて鮮やかに微笑み、危険な香りだけを残して消えた。
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