赤い糸がほどけた

陽紫葵

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赤い糸がほどけた

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 次の日、部屋を片付けた。処分するものもたくさん出た。当分の衣類などをバッグに詰め、他はトランクルームに運べるものは運び、部屋を綺麗にした。
もう、夕方だ。
部屋の鍵を持って、不動産屋さんで最終の手続きをした。
何処行こう?
旅行と言いながらも、決めてはいない。
足が向いたのは、新条家だった。
旅行ではない。
「こんばんは」
「いらっしゃい」
可乃子さん一人だった。
「泰平さんは謝恩会で遅くなるって」
晋くんは1年前に結婚して、家を出た。
「ごはん食べた?」
「まだ」
「じゃあ、一緒に食べましょ」
「うん、ありがとう」
「それにしても、大荷物ね」
「旅行行こうかなって思ったんだけど、止めたから」
「そうなの?」
「あの、今日、泊めてもらってもいい?」
「もちろんいいわよ」
可乃子さんは何があったの?とは聞かないでいてくれる。
ご飯食べて、お風呂に入って、乎汰くんの部屋に本を見に行った。
本を読んでいるうちに眠くなって、ベッドに横になった。
乎汰くんに会いたいなぁ。
考えていたら、涙が止まらなくなった。
その時、ドアをノックする音がして、ドアが開いた。
乎汰くんだった。
私は起き上がり、涙を必死で拭ったが、バレバレだ。
「香都巴」
私の横に座って、何も言わず抱きしめた。
「乎汰くん?」
「泣きたいことがあるなら、泣いていいよ」
乎汰くんの胸は、いつだって安らぎだ。私は思い切り泣いてしまった。
「彼氏に振られたか?」
「え、何で?」
「彼氏、いたんだろ?」
言わなくても、わかってるんだ。
「うん。別の人と結婚した」
「結婚?」
「中高の友達で、お父さんの同僚の子の事話したでしょ?」
「あぁ、ハーフの?」
「うん。その子と」
「マジか」
「会わせたくなかったのに、偶然、会うことになっちゃって。私の知らないところで付き合ってて。子供もできるって」
「そっか」
仕事の事も話した。
「確かにな、女性の方が立場悪くなる会社も多いかもな。ま、いいんじゃない?ゆっくり休んで考えたら」
「うん」
「今日、泊ってくの?」
「うん」
「俺も、泊ってこうかなぁ」
「結ちゃんは?」
「結は、預けてる」
「そっか」
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