切ない愛のカタチ

陽紫葵

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切ない愛のカタチ

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9月始めの日曜日、お母さんから、電話で
「日取り決まったわよ」
と。
「恒雄さんの転勤が決まってね、20日になったから」
「20日っていつの?」
「今月の20日よ」
「え、そんなに早く?」
「だからね、亜生果もあと1週間で仕事辞めて帰ってきなさいね」
「そんな、急に。納期の仕事あるし、無理よ」
「そんなこと言ってられないでしょ。明日、ちゃんと言うの」
やだよ、そんなの。
でも、親には反抗できない。ずっとそうだった。
高校までの進路も、自分の意思じゃない。
就職する時も、一度、家を出て一人暮らしを経験しなさいと言われて決めた。
就職先は、学校の推薦だったけど。
その日は、一睡も出来なかった。
月曜日、職場に行くと、総務の鈴木さんに呼ばれ、社長室に行った。
嫌な予感がしたが、
「お父さんから連絡があってな、辞表の申し出があった」
「え、」
「いいのか?」
「私・・・」
「結婚するんだってな」
もう、逃げられないのか?
「どうした?」
「あの、このことは、他の人には?」
「まだ、誰にも言ってない。昨夜、自宅の方に電話あってな」
「そうですか。じゃあ、他の人には言わないでくれますか?」
「いいけど」
「ありがとうございます」
「でもな、あと1週間は黙っているけど、終わりは黙ったままってわけにはいかないよ」
「うん。仕事終わりまで、お願いします」
「わかった」
「あと、結婚の事は、最後まで黙っててください」
「じゃあ、辞める理由は?」
「それは、適当に」
「適当ってなぁ。ま、しょうがないな。でもさ、辞めても、いつでも相談に乗るから」
と言ってくれた。
その後、変わらず仕事をしていた。
根元さんと話したい。
でも、声をかける勇気がない。
水曜日、根元さんが見当たらない。
昼休憩の時に一緒になった、真中さんに
「今日、根元さん休みですか?」
と聞いてみた。
「そうみたいね。実家の用事らしいわよ」
「そうなんですね」
「気になるの?」
「え?」
「違うの?」
「別に」
根元さんと真中さんは同期入社で仲がいい。
根元さんは、今でも真中さんの事を旧姓の清水さんと呼ぶ。
「あの、根元さんって、彼女いるんですかねぇ?」
「え、どうかしら?そう言えば、そうゆう話聞いて事ないわね」
「そうですか」
「気になるなら、聞いてみたら?」
「ううん、私は、そんな」
聞きたくても聞けない。
根元さんは、金曜日まで休んでて、結局、会えなかった。
もう、諦めるしかない。
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