異世界転生してもまだモブだった俺が世界に復讐する話 〜全てに見捨てられた怨念たちと共に、我らの憤怒で罪人どもを滅ぼし世界を地獄へと変える〜

じぇみにの片割れ

文字の大きさ
31 / 51
第3章 迷い、暗闇を歩む者たちよ

第27話 安らぎ

しおりを挟む
「みんなそうよ。ひとりじゃ何もできない。でも導いて救ってあげることはできる。あなたがそれを選んだのよ」

 シスターが真っ直ぐに俺を見て告げる。慈悲の声音で。聖職者が信者にそうするように。

「自信がないのね」
「ないさ。今まで全部に失敗してきたから」
「そう。でも忘れないで。今、私が言ったこと。彼らがあなたを選んだことを」

 それだけ言ってシスターは俺の顔を離した。少しずつ脳裏に彼らの声が戻っていく。俺の意識がみんなのところへと戻っていく。

「それで、どうしますか? 一緒に寝ますか?」
「あぁ、そういえばその話だっけ」

 急にわけの分からない話を振られたせいで完全に忘れていた。

「まあお前がいいっていうならベッドで寝させてもらうよ」
「あとは?」
「あと?」
「性的な奉仕は必要ですか?」

 直球だった。まあこのシスターが照れたり隠したりした方が変に思えるからいいが。
 統合意識による議決。結論は──。

「いや、いい」
「いいのですか? それとも、やはり傷は好みではありませんか?」
「別にお前の身体が悪いわけじゃない。十分に魅力的だ」

 俺の答えにシスターがむ、と口を尖らせる。

「まるで朴念仁そのもののような台詞を言うのね」

 シスターはむくれていたが、別に嫌なわけではない。

「据え膳を食わないほど謙虚じゃない。その代わりにしてほしいことがある。みんながしてほしいことだ」
「では、それを仰ってください」
「今日は……抱きしめながら寝てくれ」

 それが、みんなが望んでいることだった。俺を含めて。

「ええ、もちろん」

 シスターは珍しく微笑みながら答えてくれた。
 その後、俺たちはベッドに潜り込んだ。シングルなので本当に狭かった。

「……狭いし固いな」
「安物なので我慢してください」

 藤原悠司としての経験が文句をつけてくる。実家がかなり良いベッドを使っていたせいだ。今となっては随分と昔のことのように感じる。
 横になった俺たちをシスターが優しく抱きしめる。人の温もり、体温を直接感じるのはいつ以来だろうか。

「……ありがとう」
「お礼なんて。これぐらいのことであればいつでも」

 そう言ってシスターは俺たちの頭を撫でてくれた。心地よさですぐに眠ってしまった。
 その日、は久しぶりに夢を見た。まだ子供の頃、両親が優しく未来に希望を持っていた頃の夢を。妹に向かって楽しそうに将来の話をする子供の自分の夢を。
 そんな夢を見たことを、目覚めたときの俺は覚えていなかった──。


§§§§


「気分がいいです」
「そりゃどうも」

 教会でシスターと一緒に眠るようになってから数日が経った。
 ここ最近はシスターの魔力を調節してやるのがすっかり日課だ。今では半同化状態とならなくとも、体内の魔力を調整する術を編み出していた。リヴァイアサンの集合知の恩恵であり、この世界でもできる人間は少ないだろう。

 日々の施術のおかげか、シスターの怪我はずいぶんと少なくなり包帯も取れてきた。個人的な趣味の話をすれば、包帯を巻いた女というのは扇状的に見えるので少し残念ではある。あるが。

「また包帯を取るのを手伝ってください」
「いや、流石にそこは自分でできるだろ」
「いいから手伝ってください」

 シスターは俺たちに手伝いを要求すると遠慮なく服を脱いで下着姿となる。怪我が塞がった箇所の包帯を取る手伝いをするのも、よくあることと化していた。
 最初こそ背中にあったりと取りづらそうなので手伝っていたのだが、今ではどこだろうと手伝わされる。腕とか脚とか、絶対に自分でやれる場所であってもだ。

 下着姿ももう見慣れたものだ。レース付きだったり装飾があったりとシスターにしては、やはり派手めな下着が多い。色合いは白か黒が多数を占めていて、たまに薄い色付きのものがある。
 と、言えてしまう程度には慣れきってしまっていた。そのせいで下着姿程度では興奮なんてしなかった。

「あなたたち、もしかして性欲がないのかしら」

 脚の包帯を取ってやっていると、頭の上から不満げな声。視線を上げるとこれまた不満そうな顔があった。

「ないわけないだろ。鬱憤や不満を陵辱で晴らすことも主な活動のひとつだったぐらいだ」
「なら何故、私には何もしないのですか。この意気地なし」
「たまたまそういう気が起きない」
「何故」
「さぁな。こうやって介護してるからじゃ?」

 シスターの足が振り上がって俺たちの顎を蹴飛ばす。痛くはないが驚いた。

「失礼。脚が勝手に動きました。これも持病なので介護の一環と思って許してください」
「絶対わざとだろ」

 介護に戻って包帯を取り終える。
 正直、このシスターには乱暴する気が起きなかった。理由は介護してるからなどではなく、あまりに彼女が俺たちに対して献身的すぎるからだ。
 そんな経験のない俺たちは、どうすればいいのか分からなかった。ただ少なくとも、他の女たちと同じ扱いをすることは選べなかった。
 俺たちが欲望を発散しようとすれば、シスターを傷つけることになるだろう。今でさえ怪我だらけの、憐憫を向けざるを得ない肉体だというのに。それが、嫌だったのだ。


 俺たちの日課はシスターの調子を整えてやることと、残ったままの問題の答えを探すことだった。あの子にどうすれば良かったのか、未だに俺たちは分からずにいた。
 一方でシスターの日課は様々だ。信者の相手をしたり懺悔を聞いたり、決まった時間に説教をしたり、特定の日に信者たちが集って教えについて何か話し合っていたりする。

 その間、俺たちは奥の部屋に引っ込んでいた。彼女は真っ当なシスターなどではないが、少なくとも表向きには正しい聖職者として振る舞っていた。彼女に限らず俺たちは聖職者というものが嫌いだった。教えという名の誤謬を広げる存在にしか思えず、怒りが湧く。きっと、俺たちの中の誰かが聖職者や宗教、信仰というものに裏切られた経験があるのだろう。

 だからあのシスターであったとしても、聖職者としての振る舞いを見るのは耐えられなかった。なので俺たちはなるべく見ないようにしていた。彼女の真の信仰心を知っている身としては、応援もしたいのだが。

 他には一緒に労働するだとか、良好な関係を保っていた──何故かちょくちょく、朴念仁だの意気地なしだのと罵倒されることがあるが、毒舌はあのシスターのデフォルトなので気にしていない。
 変わり映えのない日々だったが、俺たちはどこか安らぎを得ていた。

 そんな日々を過ごしている中で、ちょっとした変化が訪れた。
 教会はいつも定刻に閉まる。信者がいなくなった後で俺たちは聖堂に入ってシスターの相手をすることにしている。シスターは俺たち以外には素顔を見せないので、信者の前で会話しても態度がおかしくてぞっとするだけだ。
 今日も業務の終わりに合わせて身体の具合でも見てやろうかと思って、聖堂に入ったところだった。

「……ん?」

 俺たちは初めて、我が目を疑うということをした。
 そこにいたのは、純白の翼のある女だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...