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第3章 迷い、暗闇を歩む者たちよ
第38話 人々の願い
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極光と漆黒。二つの魔力が激突して拮抗する。
剣と拳は互いに触れ合うことなく、それらが纏っている光と影だけがぶつかり合っていた。
(こいつ……!)
悠司の表情に驚愕が浮かび上がっていた。本来であれば悠司の触れたものは汚泥と同様に、リヴァイアサンの中へと飲み込まれる。怜司の聖剣が放つ魔力はそれを防いでみせていたのだ。
これまでも防護魔法がリヴァイアサンの同化を退けることはあった。しかし、防げるのは泥や触手まで。悠司自身が触れれば、いずれも脆く崩れ去った。聖剣は悠司からの直接干渉を防ぐほどの膨大な魔力を纏っているのだ。
純粋な力と力の衝突。聖剣と無限。いずれも人の身に宿すことは決して叶わないほどの強大な力。その二つが競り合っていた。両者の間で魔力が弾け飛び、空気を燃やす。燐光が帯となって蛇行し草原を焼き払う。戦いの余波が周囲に破壊を撒き散らしていた。
「これが、人々の願いを束ねた力だ!」
「願い、だと?」
「そうだ。お前たちリヴァイアサンを滅ぼすために祈りを捧げた人々の願いが、この聖剣を作り上げた!」
魔力同士の激突によって吹き荒ぶ暴風の中、悠司は愉悦の笑みを浮かべてみせた。
力の源が、我らを排斥しようとするものなのであれば、敵としてこれ以上に正しいものはない。
「それはいい。ならば我らがその下らない願いを打ち砕いてやる!!」
悠司が後方跳躍。空間から漆黒の触手が現れて怜司に直進。上段に構えられた聖剣がまっすぐに振り下ろされて極光を撃ち放つ。魔力そのものが破壊の爆風となって触手を飲み込んでいき、触手が消滅。
すでに上空に跳躍して破滅の一撃を回避していた悠司が、再び触手を召喚。怜司、桜、蒼麻へと向かわせる。
生物のように暴れ狂う影の鞭を、怜司の剣が斬り裂き、桜の刀が切断し、蒼麻の魔法が焼き払う。
着地した悠司は蒼麻へと疾駆。間に桜が割って入り刀を構える。無造作に悠司の右腕が振るわれる。接触しただけで同化による死が確定する死神の腕を、桜の刀が迎撃。二の腕から下を斬り落とした。
「っ! これは……!」
再生するはずの腕が戻らないことに気がついた悠司が苦々しく吐き捨てる。
桜の翻った刃が悠司の脚を狙うが、跳躍によって躱される。着地を狙った蒼麻の火球は触手が打ち払う。
「封印の妖刀、か」
「そうだ。こういった武器は好まないのだが、な」
桜の刀からは紫色の奇妙な魔力が発せられていた。悠司の腕の切断面には同じ色の魔法陣。断ち切ったものを封印する妖刀こそが、桜の用意した悠司への対抗策だった。
「切断した箇所に封印を敷く、か。面白いものを持ち出すな……だが!」
悠司の左腕が、自身の右肩へと振り下ろされて残っていた二の腕を引き裂く。新しくできた断面から複数本の小さな触手が生えて蠢き、腕の形となり肌色へと変色。元通りの腕が再生されていた。
「斬られた部分を取り除いてしまえばなんの問題もない」
「そうきたか……やはり簡単にはいかないな」
桜が突進の構え、と見せかけて怜司が悠司の側面から強襲。振り払われた聖剣を掲げた腕が受け止める。直後に桜が次いで接近して妖刀での一閃を放とうとするが、触手が足払いをして転倒させる。
本来なら触手が触れた段階で勝負は決まるはずだったが、蒼麻の防護魔法が同化を防いでいた。
前衛ふたりが悠司へとそれぞれ攻撃をしかける。聖剣による攻撃を魔力を纏った腕と脚が迎撃し妖刀の一撃を放つ剣士を触手が押し留める。
怜司と桜が悠司を止めている間に蒼麻が魔法の準備を終わらせていた。青白い巨大な閃光が一直線に悠司へと向かう。タイミングを合わせて怜司と桜が跳躍して道を開け、閃光が悠司に激突、したかのように見えたが漆黒の魔力が閃光を阻んでいた。
「なるほど、高位の封印術を用意してきたか。足手纏いじゃなくなったようだな」
光が打ち消されて蒼麻が杖を下ろし、怜司と桜が再び魔術師の壁となる。予想以上に手慣れた動きに悠司は驚くばかりだった。
(ここまで練度を上げてるとはな……桜はともかく、怜司と蒼麻のやつはどれほど修練を積んだんだ)
前回の戦いは蹂躙そのものだったが、今回は全く違っていた。怜司、桜、蒼麻がそれぞれに悠司への対抗策を用意した上で戦闘技術を練り上げて挑んでいた。
相当の努力が窺えることに、しかし悠司は不敵な笑みを浮かべた。
「さすがは主人公様ご一行。前回から時間も経っているし、これぐらいはしてもらわなくてはな」
「お前、まだそんなことを……!」
「言い方は歪だが、称賛しているのは事実だ。よくここまで連携を取れるようにしたな」
悠司の言葉に侮蔑の気配はなく、本心からふたりの変化を称えていた。
「怜司と蒼麻。お前たちを漠然と、上手くいくやつらだ、と認識していたが改めなくてはなるまい。まさか本当に、俺たちと戦えるようになるまで成長するとは正直思っていなかった」
ふたりの健闘と成長を評価する言葉が続く。しかし怜司と蒼麻の表情には緊張の色。悠司の態度にはまだ絶対的な余裕があった。
「だが、俺たちはまだ立っているぞ。さぁどうするんだ。桜の妖刀が決定打にならない以上、蒼麻の封印術をぶつけるしかないが、どうやる?」
笑みを見せながら挑発する悠司に、怜司も無理やり笑ってみせる。
「俺たちだって馬鹿じゃない。どうやるのか教えてやるよ」
剣と拳は互いに触れ合うことなく、それらが纏っている光と影だけがぶつかり合っていた。
(こいつ……!)
悠司の表情に驚愕が浮かび上がっていた。本来であれば悠司の触れたものは汚泥と同様に、リヴァイアサンの中へと飲み込まれる。怜司の聖剣が放つ魔力はそれを防いでみせていたのだ。
これまでも防護魔法がリヴァイアサンの同化を退けることはあった。しかし、防げるのは泥や触手まで。悠司自身が触れれば、いずれも脆く崩れ去った。聖剣は悠司からの直接干渉を防ぐほどの膨大な魔力を纏っているのだ。
純粋な力と力の衝突。聖剣と無限。いずれも人の身に宿すことは決して叶わないほどの強大な力。その二つが競り合っていた。両者の間で魔力が弾け飛び、空気を燃やす。燐光が帯となって蛇行し草原を焼き払う。戦いの余波が周囲に破壊を撒き散らしていた。
「これが、人々の願いを束ねた力だ!」
「願い、だと?」
「そうだ。お前たちリヴァイアサンを滅ぼすために祈りを捧げた人々の願いが、この聖剣を作り上げた!」
魔力同士の激突によって吹き荒ぶ暴風の中、悠司は愉悦の笑みを浮かべてみせた。
力の源が、我らを排斥しようとするものなのであれば、敵としてこれ以上に正しいものはない。
「それはいい。ならば我らがその下らない願いを打ち砕いてやる!!」
悠司が後方跳躍。空間から漆黒の触手が現れて怜司に直進。上段に構えられた聖剣がまっすぐに振り下ろされて極光を撃ち放つ。魔力そのものが破壊の爆風となって触手を飲み込んでいき、触手が消滅。
すでに上空に跳躍して破滅の一撃を回避していた悠司が、再び触手を召喚。怜司、桜、蒼麻へと向かわせる。
生物のように暴れ狂う影の鞭を、怜司の剣が斬り裂き、桜の刀が切断し、蒼麻の魔法が焼き払う。
着地した悠司は蒼麻へと疾駆。間に桜が割って入り刀を構える。無造作に悠司の右腕が振るわれる。接触しただけで同化による死が確定する死神の腕を、桜の刀が迎撃。二の腕から下を斬り落とした。
「っ! これは……!」
再生するはずの腕が戻らないことに気がついた悠司が苦々しく吐き捨てる。
桜の翻った刃が悠司の脚を狙うが、跳躍によって躱される。着地を狙った蒼麻の火球は触手が打ち払う。
「封印の妖刀、か」
「そうだ。こういった武器は好まないのだが、な」
桜の刀からは紫色の奇妙な魔力が発せられていた。悠司の腕の切断面には同じ色の魔法陣。断ち切ったものを封印する妖刀こそが、桜の用意した悠司への対抗策だった。
「切断した箇所に封印を敷く、か。面白いものを持ち出すな……だが!」
悠司の左腕が、自身の右肩へと振り下ろされて残っていた二の腕を引き裂く。新しくできた断面から複数本の小さな触手が生えて蠢き、腕の形となり肌色へと変色。元通りの腕が再生されていた。
「斬られた部分を取り除いてしまえばなんの問題もない」
「そうきたか……やはり簡単にはいかないな」
桜が突進の構え、と見せかけて怜司が悠司の側面から強襲。振り払われた聖剣を掲げた腕が受け止める。直後に桜が次いで接近して妖刀での一閃を放とうとするが、触手が足払いをして転倒させる。
本来なら触手が触れた段階で勝負は決まるはずだったが、蒼麻の防護魔法が同化を防いでいた。
前衛ふたりが悠司へとそれぞれ攻撃をしかける。聖剣による攻撃を魔力を纏った腕と脚が迎撃し妖刀の一撃を放つ剣士を触手が押し留める。
怜司と桜が悠司を止めている間に蒼麻が魔法の準備を終わらせていた。青白い巨大な閃光が一直線に悠司へと向かう。タイミングを合わせて怜司と桜が跳躍して道を開け、閃光が悠司に激突、したかのように見えたが漆黒の魔力が閃光を阻んでいた。
「なるほど、高位の封印術を用意してきたか。足手纏いじゃなくなったようだな」
光が打ち消されて蒼麻が杖を下ろし、怜司と桜が再び魔術師の壁となる。予想以上に手慣れた動きに悠司は驚くばかりだった。
(ここまで練度を上げてるとはな……桜はともかく、怜司と蒼麻のやつはどれほど修練を積んだんだ)
前回の戦いは蹂躙そのものだったが、今回は全く違っていた。怜司、桜、蒼麻がそれぞれに悠司への対抗策を用意した上で戦闘技術を練り上げて挑んでいた。
相当の努力が窺えることに、しかし悠司は不敵な笑みを浮かべた。
「さすがは主人公様ご一行。前回から時間も経っているし、これぐらいはしてもらわなくてはな」
「お前、まだそんなことを……!」
「言い方は歪だが、称賛しているのは事実だ。よくここまで連携を取れるようにしたな」
悠司の言葉に侮蔑の気配はなく、本心からふたりの変化を称えていた。
「怜司と蒼麻。お前たちを漠然と、上手くいくやつらだ、と認識していたが改めなくてはなるまい。まさか本当に、俺たちと戦えるようになるまで成長するとは正直思っていなかった」
ふたりの健闘と成長を評価する言葉が続く。しかし怜司と蒼麻の表情には緊張の色。悠司の態度にはまだ絶対的な余裕があった。
「だが、俺たちはまだ立っているぞ。さぁどうするんだ。桜の妖刀が決定打にならない以上、蒼麻の封印術をぶつけるしかないが、どうやる?」
笑みを見せながら挑発する悠司に、怜司も無理やり笑ってみせる。
「俺たちだって馬鹿じゃない。どうやるのか教えてやるよ」
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