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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編

第七十三話 リルカーンの話

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 意識がかかなりはっきりしてきた。
 それと同時に全身に強い痛みが走る。麻酔が切れたのか。

 身体は痛いが生きている証。
 この状況がどんな状況なのか未だによくわからないが、それだけで
メルザに再開できる可能性はある。

 さっきの奴が何者なのか。
 俺を助けた目的はわかったが、それ以外にもまだ何かある。
 それがわかるまでは油断は禁物だろう。

 警戒しなければ。
 奴は俺が人ではない妖魔と言っていた。

 そもそも妖魔ってなんだ? 外見で判別できる類のものではないのか? わからないこと
が多すぎるが、あいつから情報をなるべく聞き出さなければ。ゆっくり目を開ける。

 先ほど見た光景と同じく、淵のない白い空間の中だ。 
 身体の動きを一つずつ確かめる。
 
 とにかくゆっくりだ。

 頭を動かすのは最後だ。頭が動かせる状態かをまず確かめないと。
 俺は左手、右手、左足、右足の順番に動かす。
 
 かなり痺れと倦怠感はあるが、どうにか少しずつ動く。
 動かすたびに激痛は走るのだが。

 片方ずつ動かし、手を握ったり開いたり。その後片足ずつ曲げ伸ばししていく。
 手を上下させようやく顔の位置に手を持っていけるようになった。

 左右を見渡すが、辺り一面真っ白。
 俺が寝ているところも真っ白で何もない。
 果てしない白い空間が広がっていた。

「なんだここは? どうなってるんだ? さっきのリルカーンとかいうやつはどこだ?」

「呼んだかい?」

 近くで声はするが、奴は見えない。
 どこから喋ってるんだ?

「ちょっと待ってよ。今そっち行くから」

 奴はにゅーっと白い地面から顔を出す。
 端正な顔をした美形の男だった。

 妖艶で女子なら誰もが傍に置いておきたくなるような
そんな魅力がある。
 これが妖魔か? 俺には似ても似つかない気がするが。

「ここを自由に動くのはいいけど、まだ表には出せないよ。
ちゃんと治ってから出ないと死んじゃうから。
ここは時間凍結の部屋。この空間の中に存在するものだけの
時間を凍結する。外は時間経過してるんだけどね」
「時間凍結部屋?」

「アーティファクト……と言っても神話級じゃないよ。
僕の部屋じゃない。便利だから僕も欲しいけど、兄貴の部屋さ」

 そういえばもう一人名前を聞いた気がするな。
つまり別の仲間が近くにいるのか。

「そんな警戒しなくてもいいよ。さっきも言ったろ。
君を殺すつもりはない。しかし回復が早いね。
既に半妖半幻ってとこかな」
「……どういう意味か、俺にはわからないことだらけだ。
詳しく説明してくれないか?」
「もともとそのつもりだしね。言ったろ、僕はお喋りが好きなんだ」

 そういうと奴はふわっと舞い上がり俺の横に来た。

「まず何から聞きたいんだい?」
「俺が死んだと思った後、どうやって助かったんだ?」
「僕の呪術で君を地底に一瞬で埋めてここに連れてきたからだよ。君があいつを攻撃したおかげでかなり楽だったけどね」
「いつからあの場にいたんだ?」
「君が雑魚を吹き飛ばしてからさ」
「俺と一緒にいた女性二人がどうなったか知らないか?」
「知らないね。興味無かったし。けどあいつらは追っていかなかったから無事なんじゃないかな? そもそもあいつらの狙いのうちの
一人は君だったみたいだしね」

 俺が狙いのうちの一人? どういう事だろうか。
ファナを助けたからか? それにしてはその後すぐに襲ってこなかったな。

「思考と会話でごちゃ混ぜになっちゃうよ。僕今会話と両方拾ってるんだから」

「ああ悪い。というか俺の考えを覗くのはやめてくれないか。
もう会話はできるから」
「いや、これ以上は会話せずに念通のほうがいいよ。君まだ死にかけだから」
「確かにボロボロだが何でも聞かれるのには抵抗ある。けどお前がそう言うならそうしよう」
「ちなみに僕のことはリルでいいよ。お前は嫌だから。君が今考えてた事の答えはわからない。かな」

 じゃあ別のことを。ここはどこなんだ? 俺が死にかけた場所なのか? 

「違うよ。そこからは移動した。あいつらに察知されても面倒だからね。
ここはフェルドナージュ様のお膝元。四大妖魔勢力の一角でフェルドナージュ様は四大妖魔の一柱、邪剣の皇……といっても君は知らないんだね。もっと詳しく話してあげるよ」

 それはいいんだが、ちょっと休憩させてくれ。少し疲れた。

「いいよ、また起きたら呼んでね」

 俺は少し疲れたのか意識がもうろうとして再び眠りについた。
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