異世界転生 我が主のために ～不幸から始まる絶対忠義～ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

第六章 強くなる

第百六話 ライラロとミリルの来訪

　爆炎の戦死ルインと化した俺は、モンスター達を再びアクリルにして
　風呂を浴びてきた。

　メルザを怒らせると危険だ。モルドの威力が上がりすぎている。
　風呂を入り終えた俺は、巨木の食事処兼休憩所に行く。

「なぁルイン、腹減ったぞ。何か作ってくれよー」

　すっかり機嫌を戻したメルザは、椅子に座りテーブルに伸びていた。
「そういえばアップルパイをつくろうと思っていたんだ」

　鍛冶関係の道具を借りれば一通りのものは作れる。

　前世で菓子作りが好きだった俺には一番お手頃で作れる。
　本当はレモンや砂糖などもあるといいんだが。

　ある程度の調味料的なものは今まで行った場所にも売っていた。
　だがやはり無いのは米だ。
　あんな工程を複雑に繰り返す米を考えたのは偉大すぎる。
　八千年位かけて進化した今の米技術は、世界の宝なんだろうな。

　俺は一通り用意しておいた材料で下ごしらえをする。
　リンゴを小さめに切って鍋に。火はメルザに弱火でお願いした。
　甘味種という甘味が出る粒を少し入れて味見して調整。

　次にバターが売っていないので、妖牛のクリームとやらを買ってきた。

　味は生クリームをより濃くした感じだ。
　これを密封容器にいれる。後は……踊るだけだ！

　シャカシャカと密封容器を持って踊り出した。
　俺の職業は忘れられがちだが舞踏剣士。
　容器を持ち凄まじくシェイクする。

　メルザが興味津々だったので、振るのを交代してもらった。
　徐々に固形化されていくのを見て、メルザが不思議そうにしている。

　脂肪分が多いクリームなら降るだけでバターができる。
　量は半分以下くらいになってしまうが。

　分離した液体を取り除き、バターが完成した。パイ生地用にそれらを粉類とまぜあわせてこねる。

　下準備はできたので、パイ生地に煮詰めたアップルを包んでいく。

　仕上げにメルザのモルドでじっくり焼いて、完成した。

「すごくいい匂いがするわね！　いいタイミングできたのかしら」
「お邪魔しますわね。大きくなっただけではなく、こんなお菓子まで……」

ライラロさんとミリルがちょうど遊びにきたようで
ニーメとファナが
二人を連れてきた。タイミングよすぎるだろ！　

「今アップルパイを焼いたんです。良かったらどうぞ」

　俺はそういうと、女性陣に焼き立てパイを差し出しておいた。
　ささっと後片付けを済ます。

　食卓からは感嘆の声が上がる。美味しく食べてもらえると、嬉しいよね。

「それでお二人とも、ご用があったのでは？」
「あら、私は特にないわよ。心配させた罰として、しばらくここにいるわ」
「私はお願いがあってきました。その、私もルーと一緒に皆さんと
ここで暮らしたくて。ダメ……でしょうか？」
「いいぞ！　ライラロ師匠もミリルも、もう家族みたいなもんだ！　な、ルイン」
「ああ、俺は構わないよ。二人には本当に世話になってるしな」
「ちょ、私はベルディスと暮らすのよ？　ここにずっとは住めないわ」
「なら、師匠と住んだらいいのでは？　部屋は沢山あるし
ここなら修行もできますよ。
強いモンスターも多く戦えるし」
「それだわ！　けど今ベルディスは任務中なのよ。はぁ……私を
置いていくなんてね」

　強いモンスターがいれば師匠も来るとは思うけど
ライラロさんと一緒だと
来ないかなぁ……と考えていて思った。

　そうだ、今ならあそこに行けるか。
期限は二日しかないからすぐに行動を開始しよう。戦力アップに繋がるはずだ。

「お二人とも。軽食が住んだら少し手伝って頂きたいのですが
構いませんか？」
「ええ、いいわよ。美味しいお菓子もご馳走になったし。
また用意してくれるなら幾らでも手伝ってあげるわ」
「勿論です。わたくしに手伝える事があれば何でもいたしますわ」

　では行こうか。防具装飾道具のみの洞窟へと。