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第二部 主と働く道 第一章 地上の妖魔

第百五十三話 傭兵依頼斡旋所【レンズ】

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 食事処に行くとライラロ、サラ、ファナ以外全員いた。
 あの三人は寝不足でやっぱ寝てるな。

「皆お早う。今日は少し忙しくなりそうだ。
カッツェルの悪人共を突き出しに行くのと
傭兵依頼斡旋所ってとこに行って仕事を受けようと思うんだ。幻妖団メルの地上初仕事ってとこかな?」
「地上の素材などに興味がある。俺とニーメは素材採集を
したいのだが、そういった依頼はあるのか?」

 珍しくやる気に満ちているアルカーンさん。時計関連だろうな。

「多分ありますね。今はモンスター退治が多そうですが
アルカーンさんが一緒ならニーメも安心です。
よろしくお願いします」
「ああ。二人で時計用の素材を採取しよう」
「綺麗な色を出すための素材も欲しいです!」
「そうだな。それもいい。実に楽しみになってきた」
「あ、あのー。あんまり遠くには行かないで欲しいなー……」

 強さとしては安心だが、内容としては不安が残る。
後で釘を刺しておこう。

「じゃあ僕とフェドラートは町内での仕事を引き受けるよ。
モンスター退治もいいけど、面白い町に来たし色々なお店に顔出ししてみたいんだよね」
「昨晩二人で話し合い、そうする事にしました。
問題は起こさないようにするのでご安心ください。
メルザさん。くれぐれも礼儀作法は忘れないように」
「お、おう。さじはこう使うんだったな。
だいじょぶだ。大分慣れたぞ」

 メルザに作法を教えてくれて本当に有難うございます。
笑顔が怖いです! 

「あの三人はまだ寝てるし、ライラロさんは勝手に行動するだろうから俺とメルザでモンスター退治するか」
「おー、そうしよう。もっと上手く一緒に戦えるようになりてーしな!」

 さじを握った手を上に持ち上げる。
 フェドラートさんの笑顔がますます怖くなる。下しなさい!

 食事を済ますと警備隊の詰め所へ行く。

 アルカーンさんに出してもらったカッツェルの町長と
カルト兄弟を出す。こいつらはファナの毒で麻痺させてミドーから解放して縄で縛り上げた。

「カッツェルの町を散々荒らしていた奴らです。
住民一同よりカッツェルに来させない旨と
処罰をこちらに任せたいんですが。
少なくとも数十年はカッツェルの町に近寄れないようにして頂きたい」
「おお、あなた達ですか! 町を救った英雄と言うのは。
早馬でフー・トウヤ様から報せを受けておりあす。
町は酷い状態だったと。
この町の牢屋に入れて後日ベッツェンのライデン近衛隊長へ
引き渡します! 後日報酬が支払われると思いますので
代表の方のお住まいを……」
「少し辺鄙な所に住んでいるので、幻妖団メル宛に
この町にいる間に受け取りは可能ですか? ルールーって宿屋にしばらく
滞在しているので」
「わかりました!急ぎ先方に知らせておきます!」

 これで一つ厄介ごとが解決したな。
 次に行こう。

 昨日門番に聞いた斡旋所とやらに皆で赴く。

 傭兵依頼斡旋所【レンズ】というらしい。
 大きめな町にはこれと同じような斡旋所がありあちこちで依頼を受けれるらしい。

 小説でいう所のギルドの様なものか。あれは個人やパーティで仕事を受ける場所だが、ここは
そもそも傭兵のみ仕事を受けれる。身元が分からない
人間を不信用で雇ってくれる場所はこの地上には無さそうだった。
 だからこそメルザやファナ、ニーメのような
孤児が辛い立場にあったのかもしれない。

 全員で中に入り受付に直行する。
 足を引っかけられたりじろじろ見られたりといったイベントは発生していない。
 傭兵しかいない場所だから当然か。
 変な事したら直ぐにばれるだろうしな。

「初めて見る方ですね。身分証の掲示を」
「こちらです」
「幻妖団メル?ガーランド所属の部隊ですか。
団員はそちらの方々で全員ですか?」
「いや、三人程まだ寝てるんだ。後からライラロ、ファナ、サラってのが……」
「ライラロですって?あのガーランドのライラロさんで
間違いないですか?」
「え、ええ。そんなにしょっちゅういる名前じゃないと思うので
間違いないと思います」
「よかった。頼りになる方が来てくれて。
すみませんこちらの話です。
えーと団長さんはあなたですか? こちらのご利用が初めて
でしたら説明をさせて頂きたいのですが」
「団長はこちらのメルザ・ルインバウトです。
話は俺も一緒に聞いていいですか?」
「俺様がメルザだ!話はよくわからねーからルインが聞くぜ」
「承知しました。私受付のエージェって言います説明しますね」

 レンズでは世界規模で仕事を受け報告できるらしい。
 マジックアイテムで受注完了報告がどの斡旋所でも出来るようで
 直接同じ場所に報告しなくても依頼は達成出来る。
 報酬はお金とポイントで支給され、複数の傭兵が所属する。
 傭兵団としての格が高ければ、緊急的に起こった依頼を
指令されたり、侵入禁止エリアへの踏み入り許可や、危険なダンジョンへの
立ち入りも可能となるらしい。

 以前出現したギルドーガやギルドグマも
緊急案件の類だろう。


 大規模な傭兵団はそれぞれ中規模、小規模の傭兵団を持ち
 ガーランドも複数の傭兵団から構成されている。
 格はそれぞれ個別の傭兵団で違う。
 格は肩書で表され、傭兵団名の前に来るらしい。

 そんな俺達傭兵団の肩書は……。

 駆け出し幻妖団メル。

 なんか小学生みたいな名前になってしまった。
 ひよことか新顔とか下っ端よりはマシか。
 格が上がった時ランダムで命名されるようだ。

「こんなところですね。何か質問はありますか?」
「溜まったポイントはどうなるんですか?」
「ポイントは格を上げたりアイテムと交換出来ます。
仕事を行わないのに格が上がったらおかしいでしょう?
それとお抱えの団がポイントを稼げば所属する上位の
団……つまりあなた達で言うガーランドにもポイントが
わずかに入ります。その代わり仕事をしている団には
ちゃんと上位の団は報酬金を払う仕組みになっていますけどね」

 つまりポイントは主に傭兵団の功績に直結。余ってたらアイテムに。
 依頼とは別に功績を称える仕組み。良く出来ているな。
ガーランドにも依頼をこなすだけでサポートした事になる。

 軍所属じゃないから気楽でいらえるし有難いな。

「他に気になる事がなければ、早速依頼を受けていかれますか?」
「ああ、それぞれ別行動で複数受けたいんだが問題ないか?」
「ええ。ではこちらにメンバーのお名前を」
「ちょっと待って下さい。大切な話を忘れてました!」

 まだアルカーンさんもフェドラートさんも
 こちらで幻妖団メルに入るとは聞いていない。
 フェルドナージュ様から派遣されてる人材だしいいのだろうか。

「構わん。どうせ弟も妹もいるしな。研究もこちらの方が捗る。
近いうち家を売り領域に超す予定だ。嫌とは言わさん」
「ええ構いませんよ。地底での所属は変えられませんので
あちらで仕事がある時は外しますが、地上では同行出来る
機会も多いでしょう。残念ながら私は領域に住めませんが」

 あっさり了承された。よかった!

「すみません。名前書きますね」
「現在モンスターが大量に発生していますから、討伐依頼が
多めです。受けてもらえると助かります!」

 アピールされた。駆け出しなんですけど。

 先ほど食事中話していた通り別々の仕事を引き受ける。

 俺とメルザが受けたのはアズラウルの浜辺というこの町
 近くの浜辺に打ち上げられた海洋生物の調査及び討伐。

 報酬は結果次第が殆どだな。

 報酬が固定されてるという事は内容もほぼ固定だし
 討伐依頼は未知数な敵が多いから、報酬を決められないのか。

「それじゃ皆、初仕事気を付けて行こう」
『おー!』

 俺たちはそれぞれ別方向へと出発した。
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