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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十八話 ベッツェン、アルファルファ城

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「ツイン、寝坊。えい」
「いっててて、耳をつねるな。起きるから!」
「なんで先生がルインに膝枕してるのよ! もう!」
「次は私がやるわ。疲れたから癒しがほしいの」
「こうやって一緒に寝る方がいいっしょ。ほら」
「あー! もう起きるから待てって!」
「俺も一緒に寝るか! な? いいだろ?」
「……騒がしいぞ。気づかれる」
『すみませんでした!』

 ベルローゼ先生に怒られ、ようやくしっかりと目が覚める。
 どうやら全員休息を取り、元気になったようだ。
 ファナやサラ、ベルディアはギルドーガと対峙した時の記憶が、あまりはっきりしないらしい。
 ブレディーに聞いたら操られていたと言っていた。そんな能力まであるのかよ、俺の真化。

「汝、未熟。弱者。雑魚」
「おいおい。これでも頑張って強くなったんだぞ」
「未熟。ブレディーの足元。足以下? 靴下?」
「なんて口が悪い幼女を封印してしまったんだ……はぁ」
「先生は昔からそういう喋り方なのよ。私も散々変身下手って言われたわ……」
「ファナちゃん以外にもこーんな可愛い子がいっぱいっす。なんなんすかこの男。
絶対狙って封印してるっすよ! ずるいっす!」
「こっちの犬はここにくくりつけて置いていっていいか?」
「いい案ね。そうしましょう」
「ドルドー、さようなら。惨め。無様」
「だはーーー、待って欲しいっす! 冗談っすよ! こんな可愛い犬置いていくなんて
とんでもないっす! 役に立つっすから!」
「そーいや二人とも、どんな能力があるんだ? 戦ってるの見てないんだよな」
「ブレディー、闇の賢者。闇の支配者、招来術、特殊術。使用。全部」
「あっしも闇に引きずりこむ魔法や、ダメージを防ぐ闇術を沢山使えるっすよ!」
「ドルドー、嘘。本当? 無力、犬」
「こないだ戦ったばかりっすよ? そういや捕まえた奴、どうするんすか?」
「捕まえた奴? 誰か捕らえてるのか?」

 そういうとドルドーが放り出したのか、闇で縛られた常闇のカイナのブレンダーとかいう
やつがでてくる。ところどころ欠けてるようにみえるが、生きてるのか、こいつは。

「闇術、闇の心理。心闇心ハートダークハート
汝、何者? 汝命令。誰?」

 !? まさか、意思を操る力か? ブレディーの術、恐ろしい……。

「……俺はブレディー。常闇のカイナの一人。大幹部、常銀ジョウギンのアシミに命令
され、三夜の町を襲った。常王と常飛車、常角以外動いている」
「汝、目的、何?」
「……ジョブカードを集める事。亜人を殺しジョブカードを得る。
またはモンスターに変えて部下にする」
「ジムロ、目的、一緒?」
「……」
「他、役割、汝ら、何」
「キゾナ大陸を支配。全大陸支配を目標。現在キゾナ大陸、シーブルー大陸の二つ。
この大陸もまもなく。七大陸を全て制圧し、紫電を手にするのが王の望み」
「ブレディー、驚いた。愚か。人間如き。扱えない。醜い。死んで」

 そのままブレディーというやつは倒れた。

「再生を繰り返していたやつも、ブレディーの前ではあっけないっすね。この再生の力は
アンデッド系の力を取り込んでたんすね」
「肉体。再生。魂、再生不能」
「そうなのか? 俺は生まれ変わって二度目の人生なんだが」
「ツイン、本当? 汝、特別。特殊。ブレディー、求める。汝、永劫」
「話し方が分かり辛い……普通に話せないのか」
「いや、本当は話せるんすよね……」
「ドルドー、闇、落ちる? 落ちたい?」
「なんでもないっす! それよりどうするんすか、これから」
「こいつの話を聞いた限り、大臣ジムロとこいつらは繋がっているようで繋がっていない。
お互いが利用している立場なのかもしれないな。ライデンもそうだが、どいつもこいつも自分勝手な
奴らばっかりだ。常闇のカイナ、どうにか止める手立てを考えないといけないし、ジムロもこのままに
しておけない。まずはこの城にいるかもしれないジムロを抑えよう」
「潜入、余裕?」
「先生、どうでしょうか」
「俺の黒星は気づかれる。あれは移動手段であってシャドウムーブとは違う」
「そうか、キラキラしてますもんね……何かいい方法はないものか」
「正面突破はダメなのか?」
「ダメです! 中に無関係の人とかいるかもしれませんし」
「そいつらごとやってしまえばいいのだろう?」
「無関係な人たちまで血祭にしてたら、こいつらとやってる事変わりませんて……」

 まったく、これだから妖魔は! ……ブーメランだった。
 さて、どうするか。

「仕方ない。ブレディー、術。使う。でもその後、動けない。不動。
役立たず」
「気づかれず潜入できるならその後はどうにかする。頼めるか?」
「闇の表層、闇纏い。全員分やる。こっち、来て」
「ほう。高度な術だ。これほどの使い手がいようとは……地上も侮れん。アネスタ並かそれ以上だ」
「なんだこれ、全身が真っ黒に塗り固めたような……影絵状態みたいだな」
「これ、気づかれない。不死者。認識しない。ブレディー、封印、寝る。休む」
「よし、効果があるうちに急ぐぞ! えーと……なんて言うんだ? ここの城」
「アルファルファ城だ。事が片付いたら宝物庫も案内する……この国はもう、ダメなのかもしれん。
これも私の不甲斐なさ故か」
「イーファのせいってわけじゃないだろう。力を欲する者の策略……防ぐのは難しいだろう。さぁ向かうぞ!」

 影絵と化した俺たちは、アルファルファ城へと潜入した。城内は美しいが、人の気配が感じられない。
 アンデッドがひしめいている。

「さて、大臣はいるかどうか……玉座はどっちだ? こういうのは玉座にいるもんだよな」
「本物の玉座はもっと下だ。そこから降りて行く」
「ここって……水の中?」
「入ればわかる。入ってみなさい」
「あれ……水に見えたけど、水じゃないのか、これ。確かに階段があるな」


 水の中にある階段……に見えたが、水があるように見えるだけで足を踏み入れると何もない。
 まるでホログラムだ。不思議な感じがする。

「ここから先、攻撃行動がとれぬよう、術を防ぐ仕組みが施されている。私や
術をメインで使う者はあまり役に立てないだろう。気を付けて行け」
「ああ。先生の黒星もダメなのか? どのみちもう後には引けない。イビン、お前は戻って
ルーンの町の増えた住民を助けてくれないか?」
「ふん。俺が黒星にだけ頼っているとでも思うな。行くぞ」
「ぼ、僕も行こうと思ったけど……中の様子だけ見ていきたいんだ。この先もアンデッドしかいないよね?」
「どうかな。ここから先はかなり危険だと思うが……」

 階段を降りると、立派な装飾が施された大きな扉の前に着いた。
 扉を開ければ中の奴にはいやでも俺たちの存在がばれるだろう。

 覚悟を決めて扉を開こう。
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