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第四章 メルザの里帰り

第三百九十三話 キゾナ大陸の情報

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「痛いの飛んでって、もう大丈夫! うん、これでいいわ」
「ありがとうカノン。いつも助かるよ」
「いいのよ。ルインの頼みだもの。それにこっちへ戻ってきてから会っていなかったし、会いに来て
くれて嬉しいわ」

 泉からルーンの町に戻ると、エレギーはひっくり返って驚いていた。
 カノンの許へ向かい、ジーキとソウゴを治療してもらい終えたところだ。
 しばらくはここで寝ているようだろう。
 そして一度戻って来たせいで、ほぼ全員ここに集まってきてしまった。
 カノンはメルザと同じく髪を整えていたようだ。どうもそれを見ていたせいか……。

「にしても、ほぼ全員同じ髪型にするってのはどうなんだ……」
「あら、だってルインがメルザに見とれてるからいけないのよ!」
「そうよそうよ。その髪型がいいんだって思うじゃないのよ」
「負けてらんないっしょ。ちょっと区別がつきづらいだけっしょ」
「はぁ。お前らは全く。それで……」
「おい貴様! ずるいぞ! なぜわてではなく貴様に女子が話しかける!」
「ところで何なのよコイツ。どこで拾ってきたの?」
「そーいやメルザ以外は知らないか。ミリルならわかると思うけど、ミリルはまだ訓練中かな」
「俺様知らねーぞ? なんか愉快な顔したやつだけどよ」
「ぐう、なかなかにめんこい女だがわてのタイプではない! わてはそう、気高く美しい
女性が好きなのだ!」
「おい。血祭にされるから口を閉じとけ。言わんとしたタイプはわかるがあれだろ? 
フェルドナージュ様やブネといった女王様タイプが好きなんだろきっと」
「それが誰かは知らんがきっとそうに違いない! 合わせろ!」
「あのな。ここに何しに来たか忘れたのか? キゾナ大陸の情報が知りたいの! そしたらブネはいるから
勝手に探しにいっていいよ。ぶっ飛ばされるだろうけど」
「そうであった! この大陸は今、常闇のカイナという悪組織により支配されているぞ! わてらは
潜入調査という依頼をレンズで引き受けてきたのだ!」
「お前ら……レンズってことは傭兵だったのか……信じられない。どうみても弱いよな」

 しかも偵察って。どう見ても目立つだろこいつら。無害そうだから無視されてたのか? 

「わてらは弱くはないぞ! ただ少し、連携が上手くいかなかっただけだ! それでだな。
わてらの調査によると、常闇のカイナの大幹部がいるようだ。やつらはモンスターを作っている。
亜人を捕らえてな。わてらはその報告をしに、ドラディニア大陸へ向かう途中だったのだ!」
「確かにあの泉からドラディニア大陸へは近いが、海経由で行くんだろ?」
「いや、そんな目立つ道を使わずとも洞窟からドラディニアへは渡れるのだ!」
「……詳しく教えてくれ。セーレでドラディニア大陸まで向かいたい所だが、やはり出来る限り目立ち
たくはない。常闇のカイナの大幹部がいるなら尚更だ。
そのあたりはジオにも話したいところだが、連絡手段がない。それもあって探してる
人物がいるんだが……円陣の都の王子の事、何か知らないか?」
「エッジマール・ウルキゾナの事か? 無論知っているぞ! 女好きの王子の事だろう!」
「いやー、そっち方面の話じゃなくてだな。この大陸で見なかったか?」
「行方不明だと聞いているが、トリノポート周辺で見たという情報もあがっているぞ。
それよりわてからも質問がある! この町は何だ? このような町があること、レンズにも
知られてはおらんぞ」
「ここの事は秘密にしておいてもらえるか。ここは俺かメルザに認められた者しか入れないんだ」
「なんだと! つまり貴様はこのわてを永遠のライバルとして認めたというわけか!」
「……そうは、言ってないんですけど。どちらかというとそうだな、お前h俺の仲間……になって欲しい
とは思う」
「仲間……仲間だと!? 兄弟の契りを交わすということだな! よし、いいぞ弟よ!」
「なんでそうなるんだよ! しかも弟って!」
「照れるでない! わては今日から貴様の兄貴だ! 新しき弟に祝杯を! さぁ酒盛りだ!」
「こいつは参った。全く人の話を聞かない……はぁ。もうそれでいいよ。それでエレギー。
ドラディニア大陸へ向かう洞窟っての、教えてくれないか」
「いいだろう弟よ。わてが案内する。その代わり弟たちの事、よろしく頼む」
「いいわ。こいつらの面倒は私らがみておくから、行ってきなさいよ」
「お土産買ってきて欲しいっしょ」
「メリン以外の商品も、考えておきなさいよね。一つじゃ足りないわ。多分あんたが戻って
くる頃、カッツェルから商談に来る商人がジャンカの村まで来るはずだから。よろしくね」
「はい? ライラロさんまさか、そこまで手配したの?」
「そうよ。手紙を持たせて託したから。飛んでくるはずよ。あの町には今、フー・トウヤもいるからね。
ロッドの町とカッツェルの町を行き来してるらしいわ。大変ね」
「そうか、それなら丁度いい。あの町に一つ提案することがあったんだ。それは戻ってからだな」

 そう、考えていたことがあった。俺はここ、トリノポート出身と言ってもいい。それならば
この大陸で出来る限りの事はしてやりたい。
 他大陸からの防衛はもちろん、獣人や亜人が多いこの大陸で、彼らが平穏に暮らすにはどうしたらいいか。
 考える事は多いが、順序だててやっていく必要はある。
 思案していると、イーファとドーグルが口を開く。

「一つ私からも質問をしてよいかな? エレギーだったか。古代樹の図書館はどうなっている?」
「普通に利用できるのならよいのだが、難しいだろうか?」
「あの木で出来た場所か。あそこには何かしらの者が入り込んでいる。危険かもしれんぞ」
「そうか……そうなると、私とドーグルで偵察というのは少々不向きかもしれないな。
シュウがいてくれればよかったのだが」
「……エプタに頼んでみよう。嫌な顔はするだろうが、シュウの代わりに来た以上、引き受けてくれる
はずだ。ついでにブネにも事の経緯を伝えておく。イーファとドーグルはブネ、エプタと合流して
キゾナを調べてくれるか? 俺も戻ったらそちらへ合流する」
『承知した』
「おいおい、随分と勝手に決めてくれやがるな」
「私も同行しましょう。少々この町にいるのも退屈になってきたところです」
「エプタにジェネストか。二人共どこに行ってたんだ?」
「けっ。別にいいだろ」
「この町の工房です。私たちはどちらも人間など嫌いですが、物を生み出す技術には興味がある」
「なるほど、フォモルさんのとこか。あそこは妖魔用のアーティファクトを多く仕入れている。確かに
見てて飽きはしないな。エプタ、頼みが……」
「聞いてたっての。わーってるよ、行きゃいいんだろ……そいつ、髪切ったんだな。似合うじゃねえか」
「ん? 俺様か? そうだ! 俺様はどんな髪でも似合うのだ! にはは!」
「……ふん。まぁいい。ここに居る間は協力してやる」

 目的地は決まった。エレギー、セーレ、メルザに俺、レウスさんとジェネストも
ついて来てくれるようだ。パモも連れて行きたいところだが、温泉でルーと遊んでいたから
今回はゆっくりさせておこう。
 随分と斬新なパーティーになったが、きっと大丈夫だろう。
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