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第二章 仲間

第五百九十話 暴れたりねえ

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 エルゲンを飲み込んだラーヴァティンを担ぎ、あたりを滅多切りにし始めるベリアル。
 いらついているのがわかるほど、切りまくっている。

「ああ、いらつくぜ。殺す覚悟もねえ野郎と一緒なのはよ。これでご褒美の一つもねえわけだ。
まぁこの剣一本手に入れておけたのはでけえがな。しかし、あの時のあいつがロキか。
クックック、俺を狙っているようだが無駄なことを。うん? 誰かきやがるな」
「待たせた! 大丈夫かベルアーリ……お前、あの時の姿!」
「ああ? ……なんだ、こいつの仲間か。俺を見てびびらねえのはいい度胸だな」
「お前……ベルアーリ……シーなのか?」
「ベルアーリ? ああ、こいつの旧姓か。クックック。そうか、そうだな。
妖魔の国を襲うのも悪くねえ。あそこにも宝はある。ソロモンに向かう前の余暇にはいいか」
「何……言ってるんだ、お前」
「おい、おめえ名前は」
「……」
「聴こえねーのか? 耳詰まってんのかお前」
「……返せ」
「あん? 名前を聞いてんだよ、このベリアル様がよ」
「シーを返せぇぇぇぇ!」

 急ぎ麻痺弾を撃ち込むビー。それらを全てつまらなそうに指で受け止めるベリアル。
 しかし口元が少し吊り上がり、笑っていた。

「こっちは劣りで背後の跳弾がメインか。おもしれえな、お前。だが名乗らないなら殺すぞ」
「お前がシーを返すと約束するなら名乗ってやるよ」
「くだらねえ質問だな。そもそも俺は乗っ取ってるわけじゃねえ。互いに影響をうけあう存在だ。
だが俺はお前の名を知らねえ」
「俺は、ビーだ」
「おいおい、違うだろ? お前俺の言ってる意味がわからねえのか。知りたがってるのは俺じゃねえ」
「っ! ……そうかよ。お前の本当の名前を知らない。だがベルアーリという本当の名前を持っているんだったな」
「教えてやるよ。こいつらは今本名を名乗れない。だが俺はこいつじゃないんでな。
こいつの名前はルイン・ラインバウト。妖魔であり、転生者であり、この俺ベリアル様と魂を共有する存在だ」
「転生……者?」
「おっと、お前は約束を果たさないつもりか?」
「俺は、ラーナ・ミズガルド・クライヴ。お前がシーと魂を共有するものなら、約束を
果たさないはずがない」
「けけけ、気に入ったぜ、お前。俺の部下にならねえか?」
「断る。俺はシーの仲間だ」
「そりゃ部下とどう違うってんだ? まぁいい。暴れたりねえからもう少し暴れようかと
思ったけどよ。お前に免じて返してやるよ。それだけじゃねえ。お前に一つ武器をやる。
使いこなしてみな。魔霊銃ゴーストイーター。この先、死霊と戦う事になるかもしれねえ。
その時戦える武器が無ければお前らは死ぬだけだ」

 一つの禍々しい銃をクライヴに投げると、胡坐をかいて座るベリアル。

「あー、中央の塔の方が楽しそうだったのによ。こんなところで俺の力を使わせやがって。
一番のお楽しみはこいつに持ってかれちまう。まぁ別にいいけどな。またすぐにでてきてやるぜ。
クックック、ハーーッハッハッハ!」
「お、おい」
「忘れんなよクライヴ。死霊はお前が倒せ、いいな――――」

 がくりと下を俯くと、シーは動かなくなった。
 慌てて近づき確かめると、意識を失っているだけだった。
 改めてもらった武器を見るビー。使い方がまるでわからない。

 魔力を吸い上げる装置も滅茶苦茶に壊されていて、横壁に空いた穴から外の景色が見える。

 城の移動はまだ止まっていない。シーを担いで急ぎ来た螺旋階段を下りていくビーだった。
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