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第五章 親愛なるものたちのために

第七百九十三話 血気盛んな仲間たち

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 やいのやいのと散々やってる魔王と話をしていると、全然話が進まないので
その場にいたジュディに残ってもらい、泉へと戻って死霊族の町側で盟約の話をすることにした。
 泉に戻ったらドン引きする状態だったわけだが……。

「主殿。兵は揃えてあります。討って出るところお戻りとは……まさか倒されたのですかな!?」
「えーっと……おいおいおいおい、全員殺る気満々じゃないか……落ち着いてくれ。
話し合いで解決する! 特にそこのアルカーンさん! 一体なんてもの作ってきたんだ……」

 泉からルーンの町へ戻ったその場所に集結していた面々。
 アルカーンさんは時計仕掛けで動きそうな変な乗り物に乗っていた。
 これは……今の俺自身じゃ勝てない相手だけど、仲間の力を合わせれば、あの絶魔王くらい倒せて
しまうのだろうな……。 

 なにせ……骨の大群を率いる翼の生えた馬に乗る二匹の骨に、壁の身魔族のウォーラス。
青銀スライムに土偶にトカタウロス。
 四幻のうちの二幻であるビュイと白丕。白丕の弟沖虎に彰虎。リュシアンとサーシュは任務中か。
 ジェネストはクリムゾンを呼び出し、ミレーユ王女は招来術でモンスターを呼んでいる。
 エンシュも傍らで剣を持ち、ルクス傭兵団は空に集結して待機。
 全体を統率するように、ハーヴァルさんとシーザー師匠。
 クアドロプルドラゴン形態のスピアにアネさんとフェドラートさんがまたがり……
 酔っぱらったモードのウサミミセフィアさんがカメを抱えて……カメ? 
 それを横目にエーとビー、メナス。レッジとレッツェルは大道芸人みたいな恰好してるな……。
 俺にいつまで待たせてたんだと、アースガルズ出身の奴らはぼやいている。
 それだけじゃない。後方にも亜人、獣人や職人も。
 何かあったのかとランスロットさん、グレンさんも心配そうにしている。
 そして……泉の前に座って止めるようにしているハクレイ老師。

 ……皆俺の大切な仲間だ。本当に多くの守らねばならない仲間が、ここにいるんだ。
 それを老師が引き留めていてくれたのか。

「老師、止めててくれて助かりました」
「……厄介なものに目をつけられたのう。わしの首を差し出せば見逃してもらえるかのう」
「いえ。片付きそうです。これから盟約を」
「なんじゃと? アメちゃんからベルベディシアの手の者と確かに聞いたぞい?」
「アメちゃんて……またおかしなあだ名を……アメーダ! 力を借りたい。
それからルジリトもだ。皆、心配かけてすまない! 一度解散してくれ! 事情は戻ったら
すぐ話す!」
「シー。俺たちはいつでも戦える。お前一人で抱え込むなよ。ここは俺たちの町で
もあるんだ」
「わかってるよ、ビー。有難う。心配かけたな」
「まったくだ。話さなきゃいけない事とか、溜まりすぎててルジリトさん、パンク寸前だぞ」
「はっはっは。ビー殿は実に優秀。仕事を多く頼み過ぎてしまいましたからな。それで主殿。
要向きとは、外の件ですな?」
「ああ。この町では一番の策士、ルジリトに助力してもらいたい。準備はアメーダが完璧に
こなしてくれているはずだ。これから絶魔王、雷帝ベルベディシアと盟約を交わす。
なるべく有利に事を運んでもらいたい」
「承知。雷帝ですか……ではそうですな。ちょうどよいのでもう一名、参加させて頂いても?」
「ああ。誰か適任者が?」
「相手が王であるならば、こちらも王は必要。主殿がこの町の王であるように、メイズオルガ
卿を呼んで参ります」
「メイズオルガ卿がこちらに?」
「ええ。既にアースガルズ帝国、王の座についておられます」
「そうか……密約は死霊族の町で行う。直ぐに支度に移ってくれ」
「はっ」
「あなた様」
「うわぁ!? だから毎回背後から来るなと……」
「うふふっ。その反応を見るのがアメーダは好きでございますから。姉様も準備をご一緒
してよろしいでございましょうか。それと……プリマ様もでございます。シカリー様も
呼ばせてもらうのでございます。シカリー様相手なら、向こうも不遜な態度を取る事は
ないのでございます」
「シカリーが応じてくれるなら、お願いしよう。でかい盟約になりそうだな。
ランスロットさんは……いや、こちらでジパルノグの話を織り交ぜるだけにしよう」
「それなら、僕もお邪魔しちゃおうかな……」

 その声を聞いて、背筋が凍り着いた。
 
「……イネービュか」
「そんなに殺気立たないで。君に嫌われるのは辛いから」
「なぜ……ブネの事を黙っていた」
「言えば君も君の主も反対しただろう? これは必要な事。
そして、ブネも望んだ事だよ」
「誰かの犠牲の上にある幸せなんて、間違ってるんじゃないのか」
「そのためにアルカイオス幻魔が絶滅する方が、間違っているという考えもあるだろう?」
「くっ……なんで、世の中ってのは不条理にできてるんだよ……」
「それはね。完璧なものがつまらない世界だからだよ」
「つまらない、世界?」
「何もかもうまくいって、何もかも全部都合通り。そんな世界、何が面白いんだい? 
お花畑だけじーっと見て眺めてお終いの世界。それが何億年もの間続いて、それは面白いかい?」
「俺には、答えられない。でも、身近な奴がいなくなるのは辛くて悲しくて。
その矛先を誰かのせいにしたい。ただそれだけなのかもしれない。
ブネは言っていた。決してイネービュを恨むなと。そして、メルザとブネの子を
大事にしてくれと。俺はそのためならどんなことだってしようと思う。だが……今度
からは説明してくれ。俺たちはあんたが考えている程、浅はかで愚かな生き物じゃない
はずだから」
「……そうだね。そうしよう。それで話は戻るけど、いいかな? このイネービュが
混ざっても」
「やめておけ。お前が出ると暴れ出しかねない奴がいるんだ。特にプリマがな」
「そっか、残念。ヨーゼフさんとロブロードでもしていようかな」
「ヨーゼフさんと? そういえば今どこに……」
「海底に来てもらっているよ。少しばかり込み入った話があってね。それは後ほど
君にも話そう」
「そうか……わかった。エプタはどうしてる?」
「偵察に向かわせてるから。また君の許へ来るよ。必ずね」
「よろしく言っておいてくれ。あいつにも……世話になった」
「うん。そうだね。それじゃまた」

 この町は不思議な奴らで溢れている。
 それは俺自身が変わってるってのもあるだろう。
 そしてメルザもだ。
 メルザが起きたら説明しないとならない事は沢山ある。
 まずは、この盟約が終われば……俺は友を救いに行かなければならない。
 サラの兄貴でもあるリルを助けに。
 きっとメルザも一緒に……。

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