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14th 月の施設

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「エレットー! 戻ってくるなんて全然聞いてないわ! なんで連絡してくれなかったの。慌てて飛んできたのよ!」
「ミシーハ博士!? わわ、むぐっ」
「ちょっと何? こんなかわいい子二人も連れちゃって。それに直接会う時は博士じゃなくてお姉ちゃんって呼んでっていつも言ってるでしょ? この、このー。でもうちのエレットちゃんはあげないわよ?」
「苦しいってエレハ姉! 紹介するから放せっての。いい加減弟離れしてくれ。そんなんじゃ
いつまで経っても嫁にもらわれないぞ!」
「いいのよ私は。嫁に行ったらエレットをこうやって可愛がることも難しくなるじゃない?」
「はぁ……我が姉ながら困った。紹介するよ。こちらがヘッツ開発第一人者、ミシーハ博士。
マテリアラーズで集めた素材を加工・分析・研究して新しい道具や装備もつくってしまう博士。
俺の姉で、本名はエレハだ」
「私レグア。エレットに名前をつけてもらったの。エレットに少し似てるね」
「あ、あたしはその……フラー……です。その、尊敬してます!」
「あらぁー? エレット。ちょー-っとこっちに来てくれる?」
「何? いででで、耳をひっぱらないでくれ!」

 耳をひっぱられて端っこの方までひっぱられる。なんで耳をひっぱるんだ!? 

「フラーちゃんはいいとして……あの子、心音がしないんだけど。ゾンビか何かなのかなー?」
「よくわからないんだ。任務中の星で偶然知り合って。凄い戦闘能力を秘めてるんだよ。
これから地球でマテリアラーズ入団の試験を受ける予定なの」
「可愛いだけじゃなくて綺麗も少し入ってるわ……短めのボブがぐっとくる。それに心音がしない
特別性かぁ。いいわ、凄くいい。
フラーちゃんはもうちょっとってところだったけど、あの子なら……うん。試験に合格したら
ミシーハ製のヘッツと装備を提供してもいいわ」
「本当? 約束だぜ、姉ちゃん!」
「もう! こいつったら可愛いんだから! ほらほら、可愛い彼女が二人待ってるし、行っていいわよ」
「彼女とかじゃないから! 同僚と仲間だから!」
「あら照れちゃって。あっちはまんざらでもなさそうな雰囲気なのに……楽しそう。うふふ。
私も行っちゃおうかな、あっちの星に」

 不思議な笑みを零しながら弟を見送る姉。
 せっかく月に来たのだからと施設を見せてくれることになった。

 ――――――――――――――――

 月面一番ゲート。既に機械類で囲まれており、重力発生装置もある。
 月の表面積は三七九三平方キロメートル程だが、これは建物を乱立させるのに
十分な面積。
 質量の問題をクリアしてからというもの、多くの店が月にならぶようになった。

 ゲートから内部に入る前に受付ロボットが設置されていた。

「身分証を拝見イタシマス」
「これだ。それと現在申請中の者が一名。これから試験を受けに行く予定。許可願えるか?」
「お待ちクダサイ。レグア様、確認照合一致シマシタ。ご自由にお通りクダサイ」
「さすが隊長。根回しがいいわね」
「そりゃカッコワライなんて連絡を寄越す余裕があるくらいだし」
「思い出したら腹が立ってきたわ! いきましょレグア。美味しい甘い物の店に連れてってあげる」
「ちょ、俺も……」
「あんたはほかにやる事あるでしょ! さぁいくわよ」
「あ……エレット……」

 半ば強引に引っ張られていくレグア。フラーの言う通りこっちはこっちでやることを済ませよう。
 ついでに月光パンも買っておいてやるか。

「マスター。それでは先に装備素材の補充と最新テクノロジーの確認に参りマショウ」
「わかった。ムービングトラクタは使えるか?」
「勿論可能デス。手配しておきマス」
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