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第ニ章
第8話 手紙
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拝啓、天野沙都様
初秋を迎え、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。御宿の躍進のご様子、ふく様からも伺っております。
さて、ご報告がおくれましたが夫神野匡が永眠致しました。
突然の便りでさぞや驚かれているでしょう。一カ月前、京都旅行の帰りに夫からは金霊様との契約を切ると同時に寿命を終えてしまうと話は聞かされたのです。夫は大正生まれなのに若々しく元気な年寄りだと周りから噂されており、私も90代になっても私よりも元気に過ごしているわと不思議には感じていたのです。金霊様が命を分けてくださっていたのですね。しかし、夫は妖から命を与えられるなど人ではあらずと契約を切ることを決心したようです。あの人もようやく人としての生を終えることが出来、安堵し、この世を去ったと感じています。
生前賜りました天野様方のご厚情に深く感謝いたしますと共に変わらぬご交誼のほどをお願い申し上げます。
重ね重ね皆様方に深く御礼申し上げます。
敬具
◇◇◇
夏の終わりに神野みよこから便りが届く。沙都は一通の葉書を手に取り驚きを隠せなかった。
「うそ…」
「ただいま戻りました、女将さんッ、この洗剤どこに置くんですッ?!買い物頼みすぎでっせ」
暑い中買い物に行かされ、両手に荷物を抱えた金霊はぶち切れた様子だ。
「あ、厨房によろしく。
あ、そや、ハンドソープとかもないから詰め替えしといて、金ちゃん」
「はい??暑い中買い物行ってきたんやし、休ましてくださいよッ!!あの狐は何処行ったんや!
そうや、まだ学校やないかー」
「まぁ、まぁ、金ちゃん、そう切れんといて、涼んでからでいいよ~」
「そうさせてもらいます」
「あっ、金ちゃん、神野様から便りが来てね……
匡様亡くなられたみたいよ…」
「………そうですか……ちょっと休んでから仕事しますわ」
金霊は沙都から便りの内容を聞くとそれ以上何も言わず、肩を落としながら奥へと入っていった。
ーたーはん…さいなら
夏の終わりの出来事だった。
初秋を迎え、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。御宿の躍進のご様子、ふく様からも伺っております。
さて、ご報告がおくれましたが夫神野匡が永眠致しました。
突然の便りでさぞや驚かれているでしょう。一カ月前、京都旅行の帰りに夫からは金霊様との契約を切ると同時に寿命を終えてしまうと話は聞かされたのです。夫は大正生まれなのに若々しく元気な年寄りだと周りから噂されており、私も90代になっても私よりも元気に過ごしているわと不思議には感じていたのです。金霊様が命を分けてくださっていたのですね。しかし、夫は妖から命を与えられるなど人ではあらずと契約を切ることを決心したようです。あの人もようやく人としての生を終えることが出来、安堵し、この世を去ったと感じています。
生前賜りました天野様方のご厚情に深く感謝いたしますと共に変わらぬご交誼のほどをお願い申し上げます。
重ね重ね皆様方に深く御礼申し上げます。
敬具
◇◇◇
夏の終わりに神野みよこから便りが届く。沙都は一通の葉書を手に取り驚きを隠せなかった。
「うそ…」
「ただいま戻りました、女将さんッ、この洗剤どこに置くんですッ?!買い物頼みすぎでっせ」
暑い中買い物に行かされ、両手に荷物を抱えた金霊はぶち切れた様子だ。
「あ、厨房によろしく。
あ、そや、ハンドソープとかもないから詰め替えしといて、金ちゃん」
「はい??暑い中買い物行ってきたんやし、休ましてくださいよッ!!あの狐は何処行ったんや!
そうや、まだ学校やないかー」
「まぁ、まぁ、金ちゃん、そう切れんといて、涼んでからでいいよ~」
「そうさせてもらいます」
「あっ、金ちゃん、神野様から便りが来てね……
匡様亡くなられたみたいよ…」
「………そうですか……ちょっと休んでから仕事しますわ」
金霊は沙都から便りの内容を聞くとそれ以上何も言わず、肩を落としながら奥へと入っていった。
ーたーはん…さいなら
夏の終わりの出来事だった。
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