【完結】騎士の家の子になった王女は義兄に愛されたい

京極冨蘭

文字の大きさ
44 / 52
終章 精霊達よさようなら

第7話 二人の門出


 秋がやって来た。
 周りの山々は黄、赤色へと彩り鮮やかな紅葉へと変わっている。
 この美しい紅葉彩る日にリーリラとカイルは婚姻式を行う。

 参列の為に神殿を訪れていたマリーはそっと北の山を見る。

「あなた、リーリラが無事、エステール家に嫁ぎますわ」
と一言呟くと夫の言葉を思い出していた。


◇◇◇

 
 リズが無事、男の子を産んだ後、アーサー王はマリーとリズに打ち明けたのだ。

「我が一族の力を消す契約はリーリラではなく私がするつもりだ」

「あなた?!」

「お父様……」

「リズ、国はおまえとリチャードに任せる。急だが女王戴冠式を行う」

リズはぎゅっと目を閉じると気持ちを引き締めるように目を見開いた。

「国は私にお任せください、お父様」
 アーサーは頼むと頷くと涙を必死に堪えるマリーに向き合う。

「許せ、マリー。リズとリーリラを頼んだ。特にリーリラは……、ずっと小さい頃から我慢を強いてきたんだ。幸せになってもらいたいだよ。私でもわかるのだ、カイルを想い続けていることを。カイルも婚姻を願い出るために謁見の申し出がしつこいのだ。儂からも最後に嫌がらせだ、リーリラを迎えに来たのなら婚姻を許してやろうと考えている。まぁ、試練と言うものだ」
とふんとぶっきらぼうに言う。

「カイルは絶対来ますわ。リーリラの執着心は相当なものよ」
リズが赤子を抱きながら呆れ表情だ。

「そうなのか?」

「全財産はたいてリーリラの瞳と同じ色の宝石を購入したそうよ」

「これからの生活をどうするつもりなのかしら?」
まぁとマリーは心配そうにする。

「あいつ……。不安になってきた。仕方ない、婚儀が終わったら北に移住させるのだ。開国すれば多くの人々が訪れる、人が少ない北の街が良いだろう。北にはダリルの家族がいるから世話をしてくれる筈だ。早速、取り掛かるか…」



◇◇◇


マリーは最後まで二人のことを心配していた夫のことを思い出しクスッと笑う。


「準備が出来ました」
リーリラの乳母がマリーに声をかけてきた。

 部屋の中に入ると質素な白の絹に花をあしらったドレスだ。胸にはカイルから贈られたネックレスと指には紺碧色の輝いた宝石の指輪が光っている。乳母はそっとリーリラにベールを被せる。
 
「すごく、きれいよ。リーリラ」

「ありがとう」
リズが優しく抱きしめてくれた。

「きれいだわ、しっかりカイルとエステール家を支えるのよ」
続いてマリーが抱きしめてくれる。

「泣いたらだめってわかってるんだけど。ごめんなさいね、リーリラ」

「お母様、愛しています。ありがとう」
リーリラも抱きしめ返す。


「リーリラ、今まで我慢ばかりさせたな。すまなかった、愛してるよ。幸せにな」
とどこからかアーサー王の声がした。

リーリラとマリーは声がする方向を同時に見る。
「お父様、ありがとうございます」
とリーリラは涙ながらに呟いた。

「あなた、いらっしゃたのね…」
マリーの瞳から一筋の涙が流れる。





「さぁ、カイル様がお待ちですよ」
 乳母が手を差し伸べリーリラをカイルの元へ案内した。
 
 別室で待っていたカイルはリーリラのもとに駆け寄り、
「本当に綺麗だ。」
と頬を赤らめ美しき花嫁を褒めた。

 カイルは式典用の白色の騎士服に身を包み金色の髪はしっかりと整えられとても素敵な姿にリーリラも頬を赤らめ、
「カイルすごく素敵。」
と言うと二人で見つめ合うと手を握り合う。

「さぁ、行きましょう。私の花嫁」

「はい」



 太陽がゆっくり登り始め神殿に光が入りこむ。ひっそり静かな神殿には神殿長マルクスとサーラが待っていた。
 サーラは、
「すごくきれいよ、お幸せに」
ささやいた。


 「私、カイル・エステールは、リーリラ・リヴァリオン・ラクラインを生涯愛することを誓います」


「私、リーリラ・リヴァリオン・ラクラインは、カイル・エステールを生涯愛すること誓います」

「神よ二人に祝福を与えよ」 
マルクスが称えると二人は見つめ合い口づけを交わした。

「幸せにな」
「元気でね」
とサーラとマルクスが二人に祝いの声をかける。


「あなた、どうかあの二人を見守ってくださいませ」
とマリーは去りゆく二人を見ながら亡き人に声をかけた。
 
 リーリラとカイルは見送られ新たな移住地の北の街へと出発したのだった。
 



 
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」 ⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~

柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。 そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。 クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。 さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。