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終章 精霊達よさようなら
第7話 二人の門出
秋がやって来た。
周りの山々は黄、赤色へと彩り鮮やかな紅葉へと変わっている。
この美しい紅葉彩る日にリーリラとカイルは婚姻式を行う。
参列の為に神殿を訪れていたマリーはそっと北の山を見る。
「あなた、リーリラが無事、エステール家に嫁ぎますわ」
と一言呟くと夫の言葉を思い出していた。
◇◇◇
リズが無事、男の子を産んだ後、アーサー王はマリーとリズに打ち明けたのだ。
「我が一族の力を消す契約はリーリラではなく私がするつもりだ」
「あなた?!」
「お父様……」
「リズ、国はおまえとリチャードに任せる。急だが女王戴冠式を行う」
リズはぎゅっと目を閉じると気持ちを引き締めるように目を見開いた。
「国は私にお任せください、お父様」
アーサーは頼むと頷くと涙を必死に堪えるマリーに向き合う。
「許せ、マリー。リズとリーリラを頼んだ。特にリーリラは……、ずっと小さい頃から我慢を強いてきたんだ。幸せになってもらいたいだよ。私でもわかるのだ、カイルを想い続けていることを。カイルも婚姻を願い出るために謁見の申し出がしつこいのだ。儂からも最後に嫌がらせだ、リーリラを迎えに来たのなら婚姻を許してやろうと考えている。まぁ、試練と言うものだ」
とふんとぶっきらぼうに言う。
「カイルは絶対来ますわ。リーリラの執着心は相当なものよ」
リズが赤子を抱きながら呆れ表情だ。
「そうなのか?」
「全財産はたいてリーリラの瞳と同じ色の宝石を購入したそうよ」
「これからの生活をどうするつもりなのかしら?」
まぁとマリーは心配そうにする。
「あいつ……。不安になってきた。仕方ない、婚儀が終わったら北に移住させるのだ。開国すれば多くの人々が訪れる、人が少ない北の街が良いだろう。北にはダリルの家族がいるから世話をしてくれる筈だ。早速、取り掛かるか…」
◇◇◇
マリーは最後まで二人のことを心配していた夫のことを思い出しクスッと笑う。
「準備が出来ました」
リーリラの乳母がマリーに声をかけてきた。
部屋の中に入ると質素な白の絹に花をあしらったドレスだ。胸にはカイルから贈られたネックレスと指には紺碧色の輝いた宝石の指輪が光っている。乳母はそっとリーリラにベールを被せる。
「すごく、きれいよ。リーリラ」
「ありがとう」
リズが優しく抱きしめてくれた。
「きれいだわ、しっかりカイルとエステール家を支えるのよ」
続いてマリーが抱きしめてくれる。
「泣いたらだめってわかってるんだけど。ごめんなさいね、リーリラ」
「お母様、愛しています。ありがとう」
リーリラも抱きしめ返す。
「リーリラ、今まで我慢ばかりさせたな。すまなかった、愛してるよ。幸せにな」
とどこからかアーサー王の声がした。
リーリラとマリーは声がする方向を同時に見る。
「お父様、ありがとうございます」
とリーリラは涙ながらに呟いた。
「あなた、いらっしゃたのね…」
マリーの瞳から一筋の涙が流れる。
「さぁ、カイル様がお待ちですよ」
乳母が手を差し伸べリーリラをカイルの元へ案内した。
別室で待っていたカイルはリーリラのもとに駆け寄り、
「本当に綺麗だ。」
と頬を赤らめ美しき花嫁を褒めた。
カイルは式典用の白色の騎士服に身を包み金色の髪はしっかりと整えられとても素敵な姿にリーリラも頬を赤らめ、
「カイルすごく素敵。」
と言うと二人で見つめ合うと手を握り合う。
「さぁ、行きましょう。私の花嫁」
「はい」
太陽がゆっくり登り始め神殿に光が入りこむ。ひっそり静かな神殿には神殿長マルクスとサーラが待っていた。
サーラは、
「すごくきれいよ、お幸せに」
と囁いた。
「私、カイル・エステールは、リーリラ・リヴァリオン・ラクラインを生涯愛することを誓います」
「私、リーリラ・リヴァリオン・ラクラインは、カイル・エステールを生涯愛すること誓います」
「神よ二人に祝福を与えよ」
マルクスが称えると二人は見つめ合い口づけを交わした。
「幸せにな」
「元気でね」
とサーラとマルクスが二人に祝いの声をかける。
「あなた、どうかあの二人を見守ってくださいませ」
とマリーは去りゆく二人を見ながら亡き人に声をかけた。
リーリラとカイルは見送られ新たな移住地の北の街へと出発したのだった。
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