SP24歳 女子高生始めました。

鍛高譚

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第33話 SP26歳3年生

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【原因は、あんたか!】

新学期の始まり。廊下には、新クラスの割り振りが掲示され、ざわめく生徒たちの声が飛び交っていた。



そんな中、澪、倉子、真子の三人は、掲示板の前で呆然としていた。



「全員……別のクラス?」澪が首をかしげる。



「いやいや、あり得ないでしょう!」倉子が声を上げた。



「どういうことすっか!?」真子も続く。



そこへ通りかかったのは、去年まで彼女たちの担任だった水無瀬先生。若干23歳、新人教師の風格が抜けきらない表情だ。



「あら、氷室さん、服部さん、真田さん。どうかしました?」



「いえ、私達三人とも別クラスになっていまして……。これは、いったい?」



「3人仲良しなのは分かりますが、クラス分けに特別扱いはできませんよ?」



「……は?」



倉子と真子は顔を見合わせ、同時にピクリと眉を動かす。



「……真子」



「了解っす」



二人は無言で水無瀬の両脇をがっちりホールド。



「えっ、えっ?な、何ですか!?ちょ、ちょっと!」



「校長室前まで来てもらいましょうか!」



「な、なんなんですかー!?」



澪が不思議そうに見送る中、ズリズリと校長室へと連行されていく水無瀬。





---



校長室——



事情を聞いた校長と教頭は、言葉を失い、頭を抱える。



「つまり……氷室さんたちを、うっかり普通の学生としてクラス分けしてしまったと……?」



「……すみません」水無瀬は小さく肩をすくめた。



「これは困った……」教頭も額を押さえる。



倉子が前に出て、冷静に語り始める。



「ただちに、クラス分けの変更を要求します」



「で、ですが一度発表されたものを変更となると、保護者や生徒たちの混乱が……」



「この任務は、氷室財閥からの正式な護衛依頼の一環です。学校の全面協力のもとで進めているはず。それを踏まえての処遇でなければ、契約違反として問題になりますよ?」



「ひぃっ……ただちに、対応いたします!」



「……水無瀬先生、困ったことをしてくれましたな」



「でも最終的な承認をしたのは……」倉子の視線が教頭に向かう。



「……私です。申し訳ありません」教頭が深々と頭を下げた。



「で、その責任は?」



「……申し訳ありません」校長も、もう一度頭を下げる。



倉子はゆっくりと頷いた。



「今回の件は、実害はありませんでした。氷室家への報告も、“ちょっとした手違い”として済ませておきます。今後一層、協力をお願いします」



三人の教師はほっとした顔を見せた。



「ありがとうございます!」



「では、私たち二人は、澪お嬢様と同じ3年A組ということで。教室に戻ります」



そう言って立ち上がる倉子と真子。



「はい!よろしくお願いします!」



教師たちは揃って頭を下げ、その場は丸く収まった。







【またしても身体測定、健康診断】



春の陽気とは裏腹に、校内の一角、保健室前の廊下で二人の護衛――氷室家の影武者である倉子と真子が、どんよりとした空気をまとって佇んでいた。



「……また、来てしまったっすね……」 真子がため息交じりに天井を見上げる。



「うん……またしても、地獄の身体測定と健康診断……」 倉子は顔を手で覆い、肩を落とす。



春――それは新学期の始まり。 そして、それに合わせて訪れる、学生たちにとっては軽いイベント。だが、彼女たちにとっては“晒しの儀”とでも呼びたい屈辱の行事なのだ。



理由は単純。



「ぴちぴちの女子高生に混じって受ける、アラサー突入目前の身体測定……」 「しかも、この護衛任務で筋肉はガチガチ、生活は不規則、飲酒は日課。身体年齢ボロボロっす」



毎回、彼女たちの結果は「健康判定」ならぬ「反省判定」となるのがオチだった。



そして極めつけは――



「はい、氷室さん、服部さん、こちらへどうぞー」 担当医がにこやかに呼びかける。その笑顔は優しさとともに、毎年彼女たちに精神的トドメを刺してくる悪魔の仮面にしか見えない。



血圧、採血、視力検査、身体測定……一通り終えたあと、彼女たちは恒例の「個別指導」という名のダメ出しタイムへと導かれる。



「うーん……去年と比べてですね……少し、肝機能の数値が……」 「……はい」 「あと、やっぱり――お酒は、控えめにしましょうね」



その一言で、倉子と真子の魂が、ふたりそろって抜けた。



(もう……わかってるんだけどさ……) (飲まなきゃやってられない現実ってあるっすよ……)



心の中で叫びたかった。 **「飲まなきゃやってられんのじゃーっ!!!」**と。



が、さすがに校内でそんな絶叫が許されるわけもなく、二人は無言のまま廊下に戻ってきた。



「……先輩、体重……どうでした?」 真子が恐る恐る聞く。



「……増えてた」 倉子は即答し、目を逸らす。



「マジっすか!? あの激務の中で!? 私も、ちょっと増えてましたけど……これが……」 真子は口元を押さえて呟く。



「中年太りっすか……?」



「言うなああああああーーーーっ!!!!!」



廊下に響き渡る倉子の絶叫。 それは自分の年齢と身体の現実に抗う女の、精一杯の悲鳴だった。



「……おかしいっすね。あんだけ動いてるのに……」 「たぶんね……筋肉が脂肪に……入れ替わってきてるの……」 「筋肉って、転職するんっすか……?」



二人は天井を仰ぎながら、そっと自分の腹を撫でた。



――地獄の健康診断は、今年も彼女たちのプライドと肝臓、そしてウエストラインを静かに蝕んでいくのだった。



【委員長 大橋弓子の提案】



新学期が始まって数日――。



まだクラスの空気も落ち着かぬ中、昼休みの教室で突如として“爆弾”が投下された。



「ねえ、みんな! クラス全員でお花見しない!?」



声の主は――クラス委員長の大橋弓子。元気印のポニーテール女子で、社交性の塊みたいな存在。笑顔は爽やか、行動力は抜群。良くも悪くも“青春してる”典型だ。



「わぁ、いいねー!」 「今年、桜まだ残ってるよね」 「お弁当持ち寄り?レジャーシートも?」



教室が一気に華やぎ、女子たちが黄色い声を上げる。 男子もノリノリで、すでにスケジュールをスマホで確認し始めている。



そんな中、澪の両隣



倉子と真子。



氷室家のお嬢様――澪の護衛であるこの二人は、内心は嵐のようだった。



(なに言い出してんの、この委員長っ!?)



(やめて……やめてっす……こちとらフル勤務なんですから……!)



「でね、今週の土曜日にやろうと思うんだけど、みんなどう!?」



「今週……土曜日……?」 倉子の眉がピクリと跳ねる。 (わたしのオフの日がへる……)



真子も静かに拳を握る。 (それ、6連勤目になるっすけど……!?)



「もちろん、澪ちゃんも来てね!」と弓子が嬉しそうに言うと、 「はい、楽しみにしています」と、澪は満面の笑顔で答えた。



……即決!?



(お嬢様あああああ!?)

(その笑顔、破壊力高すぎて断れないっすぅううう!!!)



すでに流れは止まらない。



「じゃあ、場所は城東公園!朝10時集合ねー!」 「バスケ部にレジャーシート借りとくわ!」 「みんなでお弁当作ってきてねー!」



流れるような手際。決定事項がどんどん増えていく。



――そして、倉子と真子は確信した。



これは、災害だ。



青春という名の天然兵器によって発生した、完全なる業務外災害。



(わたし、休日くらい布団と一体化してたかったのに……)

(どうせなら防犯カメラで遠隔監視にしてほしいっす……)



「倉子さん、真子さんも一緒に来てくださいねっ!」 弓子が笑顔で振り向いた。



「ええ、もちろん……」

「護衛っすから……当然っす……」



二人の笑顔は、もう限界だった。



かくして、氷室澪クラスの親睦を深めるという美名のもとに、新たなる“激務イベント”が追加されたのだった――。













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