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10話
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国王の激論!自由時間を守れ!
翌朝、王宮の執務室に呼び出されたフェルディナンドは、
少し緊張した面持ちで扉を開いた。
「お呼びでしょうか、父上」
「うむ、来たか……」
国王レオポルドは、腕を組み椅子に深く腰かけていた。
その表情は、いつもよりも険しく……いや、むしろ何かを堪えているような、妙な怒気をまとっている。
「父上、どうかされましたか?」
「貴様……フェルディナンド……」
「は、はい?」
「聖女殿に、“午後の自由時間”を約束したと聞いたが、本当か?」
「はい。フローレンス殿の希望でしたので。それが何か……?」
次の瞬間。
レオポルドは机をばん!と叩いて立ち上がった。
「何が午後の自由時間じゃぁああああッ!!!」
「ひっ……!」
珍しく怒号を浴びせられ、フェルディナンドは思わず後ずさる。
「ば、馬鹿かお前は! 午後だけだと!? 貴様、聖女殿を何と心得ておるのだ!!」
「え、ええと……あの、でも、本人が“午後がいい”と……」
「そもそも午後だけでは全く足らんのじゃ!!!」
王の言葉は続く。
「聖女殿の存在は、国そのものじゃ! 空気を浄化し、水を潤し、地を癒し、人の心を和らげる……そんな存在に午後だけ!? 朝はどうする!? 午前中は!? 夜は!? 風呂上がりのひとときは!? 寝る前の読書の時間はどうするのじゃ!!」
「ま、待ってください父上、さすがにそれは……」
「聞けフェルディナンド!」
レオポルドは胸を張った。
「もし貴様が、午後しか自由を与えぬとほざくならば、わしが王として命じよう! 聖女殿には“すべての時間の自由”を与える!!」
「そ、それでは王命でフローレンス殿に、一日中ご自由に……?」
「当然じゃ! 何をするもせぬも、彼女の自由! 食べて寝て紅茶を啜って笑って、それだけで良いのだ!!」
フェルディナンドはこめかみに手を当て、深くため息をついた。
「……父上。落ち着いてください」
「落ち着いてなどおれるか! 貴様、自分の妃にする相手に“午後だけ”などと器の小さなことを言うでない!」
「はぁ……それなら、朝も昼も夜も、フローレンス殿には心ゆくまでくつろいでいただくということで」
「うむ、よろしい!」
その瞬間、執務室の扉がコンコンとノックされた。
「失礼しますの。お話し中かと存じますが、こちら、昼のお茶のお届けですわ」
ふわりと香る紅茶とともに現れたのは、のんびりとした笑顔のフローレンス本人だった。
「あら? おふたりとも、どうしてそんなに熱くなっていらっしゃるのかしら?」
フェルディナンドとレオポルドは、同時に背筋を伸ばして言った。
「い、いえ、何もありません!」
「ええ、まったく問題ないのじゃ!」
「……?」
フローレンスは首を傾げ、紅茶のカップを静かに机に置いた。
「では、私はこれから、ちょっとお昼寝しますわね。午後の自由時間ですもの」
その一言に、レオポルドは目を見開いた。
「……うむ。うむむ。良い響きじゃ、午後の自由時間。いや、終日自由時間か……」
こうして、トスカーナ王国の政策として正式に“聖女フローレンスの全日自由時間保障”が採択されたのであった。
翌朝、王宮の執務室に呼び出されたフェルディナンドは、
少し緊張した面持ちで扉を開いた。
「お呼びでしょうか、父上」
「うむ、来たか……」
国王レオポルドは、腕を組み椅子に深く腰かけていた。
その表情は、いつもよりも険しく……いや、むしろ何かを堪えているような、妙な怒気をまとっている。
「父上、どうかされましたか?」
「貴様……フェルディナンド……」
「は、はい?」
「聖女殿に、“午後の自由時間”を約束したと聞いたが、本当か?」
「はい。フローレンス殿の希望でしたので。それが何か……?」
次の瞬間。
レオポルドは机をばん!と叩いて立ち上がった。
「何が午後の自由時間じゃぁああああッ!!!」
「ひっ……!」
珍しく怒号を浴びせられ、フェルディナンドは思わず後ずさる。
「ば、馬鹿かお前は! 午後だけだと!? 貴様、聖女殿を何と心得ておるのだ!!」
「え、ええと……あの、でも、本人が“午後がいい”と……」
「そもそも午後だけでは全く足らんのじゃ!!!」
王の言葉は続く。
「聖女殿の存在は、国そのものじゃ! 空気を浄化し、水を潤し、地を癒し、人の心を和らげる……そんな存在に午後だけ!? 朝はどうする!? 午前中は!? 夜は!? 風呂上がりのひとときは!? 寝る前の読書の時間はどうするのじゃ!!」
「ま、待ってください父上、さすがにそれは……」
「聞けフェルディナンド!」
レオポルドは胸を張った。
「もし貴様が、午後しか自由を与えぬとほざくならば、わしが王として命じよう! 聖女殿には“すべての時間の自由”を与える!!」
「そ、それでは王命でフローレンス殿に、一日中ご自由に……?」
「当然じゃ! 何をするもせぬも、彼女の自由! 食べて寝て紅茶を啜って笑って、それだけで良いのだ!!」
フェルディナンドはこめかみに手を当て、深くため息をついた。
「……父上。落ち着いてください」
「落ち着いてなどおれるか! 貴様、自分の妃にする相手に“午後だけ”などと器の小さなことを言うでない!」
「はぁ……それなら、朝も昼も夜も、フローレンス殿には心ゆくまでくつろいでいただくということで」
「うむ、よろしい!」
その瞬間、執務室の扉がコンコンとノックされた。
「失礼しますの。お話し中かと存じますが、こちら、昼のお茶のお届けですわ」
ふわりと香る紅茶とともに現れたのは、のんびりとした笑顔のフローレンス本人だった。
「あら? おふたりとも、どうしてそんなに熱くなっていらっしゃるのかしら?」
フェルディナンドとレオポルドは、同時に背筋を伸ばして言った。
「い、いえ、何もありません!」
「ええ、まったく問題ないのじゃ!」
「……?」
フローレンスは首を傾げ、紅茶のカップを静かに机に置いた。
「では、私はこれから、ちょっとお昼寝しますわね。午後の自由時間ですもの」
その一言に、レオポルドは目を見開いた。
「……うむ。うむむ。良い響きじゃ、午後の自由時間。いや、終日自由時間か……」
こうして、トスカーナ王国の政策として正式に“聖女フローレンスの全日自由時間保障”が採択されたのであった。
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