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第2章:偽りの王妃と宮廷の嘲笑
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王太子が去った後、王妃陛下はオデットの手をそっと取った。その手は細く冷たい。オデットは思わず目を伏せる。
「オデット……辛い立場にしてしまってごめんなさいね。アルベールのあの態度、私も見ていて胸が痛むわ」
王妃陛下の瞳には申し訳なさと同時に、どこか諦めの色が滲んでいた。自分が息子を止めることはできない、という自覚があるのだろう。
「いいえ、陛下が謝られることではありません」
オデットはかぶりを振る。むしろ、王太子の勝手な振る舞いに、王妃陛下すら振り回されている。
「私は、ブランシュフォール家の令嬢として、そして将来王太子妃となる身として、この国のために尽くしたいと思っています。ですから、どうぞお気になさらず」
そう述べながらも、オデットの胸には小さな刺のような痛みがあった。ここで「私は愛されていません。こんな結婚は嫌です」と叫び出したい気持ちがないわけではない。
だが、それを言ったところで何になる? 王妃陛下がアルベールを説得できるとも思えないし、それどころか余計に波風を立てるだけだ。
王妃陛下は悲しげに頷き、「ありがとう、オデット」と小さく呟いてから、その場を後にする。部屋を出ていく後ろ姿は、まるで今にも倒れてしまいそうなほど儚く見えた。
「……私が、王妃陛下を支えなければならないのかもしれないわね」
オデットは小さく自嘲する。自分だって支えが欲しいのに、守られるどころか、王妃陛下の体調管理から王宮行事の仕切りまで任されるなど、まるで“働き手”としか見られていない現実。
それでも、何もしないで嘆いているだけでは前に進めない。オデットは心を決めるように大きく息を吸い込み、腹を括った。
「やるべきことをやりながら、チャンスを見極めるしかない……」
* * *
その日の午後、オデットが自室で舞踏会の準備資料を確認していると、侍女がドアをノックしてきた。
「失礼いたします。オデット様、貴女様をお尋ねになっている方がおりますが……」
差し出された名刺を見て、オデットはわずかに目を見開く。そこには「ルイーゼ・フロレンティーヌ公爵夫人」と記されていた。
フロレンティーヌ公爵夫人──ルイーゼは、とりわけ宮廷内で権力を握る“貴婦人サークル”の中心にいる人物だ。しかもアルベールの愛人ミレイユを支援している派閥の一員とも噂される。
「彼女が私に何の用かしら……?」
何か不穏な予感が胸をよぎるが、ここで会わずに追い返すわけにもいかない。オデットは侍女に「案内してちょうだい」と伝えて、応接間へ向かった。
「オデット……辛い立場にしてしまってごめんなさいね。アルベールのあの態度、私も見ていて胸が痛むわ」
王妃陛下の瞳には申し訳なさと同時に、どこか諦めの色が滲んでいた。自分が息子を止めることはできない、という自覚があるのだろう。
「いいえ、陛下が謝られることではありません」
オデットはかぶりを振る。むしろ、王太子の勝手な振る舞いに、王妃陛下すら振り回されている。
「私は、ブランシュフォール家の令嬢として、そして将来王太子妃となる身として、この国のために尽くしたいと思っています。ですから、どうぞお気になさらず」
そう述べながらも、オデットの胸には小さな刺のような痛みがあった。ここで「私は愛されていません。こんな結婚は嫌です」と叫び出したい気持ちがないわけではない。
だが、それを言ったところで何になる? 王妃陛下がアルベールを説得できるとも思えないし、それどころか余計に波風を立てるだけだ。
王妃陛下は悲しげに頷き、「ありがとう、オデット」と小さく呟いてから、その場を後にする。部屋を出ていく後ろ姿は、まるで今にも倒れてしまいそうなほど儚く見えた。
「……私が、王妃陛下を支えなければならないのかもしれないわね」
オデットは小さく自嘲する。自分だって支えが欲しいのに、守られるどころか、王妃陛下の体調管理から王宮行事の仕切りまで任されるなど、まるで“働き手”としか見られていない現実。
それでも、何もしないで嘆いているだけでは前に進めない。オデットは心を決めるように大きく息を吸い込み、腹を括った。
「やるべきことをやりながら、チャンスを見極めるしかない……」
* * *
その日の午後、オデットが自室で舞踏会の準備資料を確認していると、侍女がドアをノックしてきた。
「失礼いたします。オデット様、貴女様をお尋ねになっている方がおりますが……」
差し出された名刺を見て、オデットはわずかに目を見開く。そこには「ルイーゼ・フロレンティーヌ公爵夫人」と記されていた。
フロレンティーヌ公爵夫人──ルイーゼは、とりわけ宮廷内で権力を握る“貴婦人サークル”の中心にいる人物だ。しかもアルベールの愛人ミレイユを支援している派閥の一員とも噂される。
「彼女が私に何の用かしら……?」
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