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第4章:ざまあ――屈辱と決別する花嫁
5.隣国で迎える新たな人生と“ざまあ”の結末
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5.隣国で迎える新たな人生と“ざまあ”の結末
隣国アルヴェール王国との国境を越えるとき、オデットは急に涙がこぼれそうになった。自分の国を捨てたという現実。それはどこか後ろめたさもあるが、同時に“自由”を得た達成感もあった。
そのまま何日かかけて王都へ移動し、ある離宮に落ち着いた頃、オデットはレオポルド王子と再会を果たした。
「よく来てくださいましたね、オデット。……あなたが必死に逃げてきたことは聞きました。危険な目に遭いながらも、ここまで来てくれてありがとうございます」
レオポルド王子は深く頭を下げ、オデットの手をそっと握る。その眼差しには、本当に彼女を大切に思っている誠意が込められていた。
オデットは胸が熱くなりながら、微笑み返す。
「殿下のおかげです。私にはもう、あの国で生き続ける道が見つからなくて……。ですから、どうかしばらくの間、ここで私を匿っていただけないでしょうか」
レオポルド王子は頷き、オデットを抱きしめるようにして囁く。
「もちろんです。……あなたが望むなら、私はあなたを迎える準備ができています。あなたが私の隣に立ってくれるなら、これほど嬉しいことはありません」
オデットの頬に涙が伝う。愛とは、こんなにも優しく温かいのだと、今初めて実感する。
やがて数日後、オデットのもとに父ベルナール侯爵からの書状が届いた。そこには意外な報告が記されていた。
――アルベールは、オデットが失踪したことで激怒し、ブランシュフォール家に“お前たちがオデットを逃がしたのだろう”と詰め寄ったが、確たる証拠を掴めず処罰に踏み切れないでいる。
――愛人ミレイユは、自分こそが王妃になれると高をくくっていたが、周囲の貴族から正式な地位を一切認められず、王太子派閥の足元も揺らぎ始めている。
――さらに、舞踏会の薬物混入騒ぎや最近のアルベールの強引な政治介入に反発する貴族たちが密かに同盟を組み、国王陛下や王妃陛下の保護のもと、アルベールに反対する動きを強めている。
(つまり、私が逃げ出したことで、あの国の歯車も大きく狂い始めたのかもしれない。アルベールの傲慢さが一気に表面化して、周囲が反発を強めているのだろう)
オデットは書状を読んで、思わず苦笑する。
――あれだけ高慢にふるまい、「お前との結婚はただの形式」と言い放ったアルベールが、今になって“花嫁に逃げられた王太子”という笑い者になっているのだ。
ざまあ、と言うにはあまりにも軽い言葉だが、オデットは心の底でそうつぶやいていた。
(きっと、もう二度とあの国へ戻ることはないだろう。私も新しい人生を歩む。あれほど恐れていた“破談”も、こうなればむしろ清々しいわ)
それから半年ほど経った頃、オデットはアルヴェール王国の宮廷に正式に招かれ、レオポルド王子のもとで“外交顧問”のような役割を担い始める。
彼女の知性や教養、社交のマナーは、アルヴェール王国の貴族たちからも高く評価され、やがて国王や王妃にも引き合わされることとなる。その際にレオポルド王子が示したのは、「彼女を妻として迎えたい」という正式な申し出だった。
「オデット、あなたが私の提案を受け入れてくれるかどうかは、あなたの自由です。ですが、私は心から願っています。あなたがどんな過去を背負っていても、私はそれを受け入れ、共に幸せを築きたいのです」
その真摯な言葉に、オデットはもう迷わなかった。かつて王太子アルベールに望んでいたはずの“共に未来を築く”という関係――それがここにあるのなら、自分が取るべき道は一つ。
「ありがとうございます、殿下。私でよろしければ……どうか、よろしくお願いいたします」
こうして、オデットは隣国で新たな人生を歩み始めることとなる。
一方、アルベールはどうなったのか。
――オデット脱走の一件で、国王陛下や反対貴族の怒りを買い、また愛人ミレイユの身勝手さにも手を焼き、宮廷で孤立を深めつつあるという噂が飛び交っていた。国王陛下が健在のうちに、あまりにも傲慢な態度を取りすぎたアルベールは、王位継承権を争う他の王族の排斥にも遭い、事実上の“虜囚状態”に陥ったとも。
どちらの真相も定かではないが、少なくとも“ブランシュフォール侯爵令嬢オデット”が失踪したのは、アルベールにとって大きな痛手になったことだけは確かだ。
――自分が捨てたと思っていた女に、自分の未来を大きく狂わされてしまうとは。どれほど後悔しても、オデットはもう戻ってこない。
隣国アルヴェール王国との国境を越えるとき、オデットは急に涙がこぼれそうになった。自分の国を捨てたという現実。それはどこか後ろめたさもあるが、同時に“自由”を得た達成感もあった。
そのまま何日かかけて王都へ移動し、ある離宮に落ち着いた頃、オデットはレオポルド王子と再会を果たした。
「よく来てくださいましたね、オデット。……あなたが必死に逃げてきたことは聞きました。危険な目に遭いながらも、ここまで来てくれてありがとうございます」
レオポルド王子は深く頭を下げ、オデットの手をそっと握る。その眼差しには、本当に彼女を大切に思っている誠意が込められていた。
オデットは胸が熱くなりながら、微笑み返す。
「殿下のおかげです。私にはもう、あの国で生き続ける道が見つからなくて……。ですから、どうかしばらくの間、ここで私を匿っていただけないでしょうか」
レオポルド王子は頷き、オデットを抱きしめるようにして囁く。
「もちろんです。……あなたが望むなら、私はあなたを迎える準備ができています。あなたが私の隣に立ってくれるなら、これほど嬉しいことはありません」
オデットの頬に涙が伝う。愛とは、こんなにも優しく温かいのだと、今初めて実感する。
やがて数日後、オデットのもとに父ベルナール侯爵からの書状が届いた。そこには意外な報告が記されていた。
――アルベールは、オデットが失踪したことで激怒し、ブランシュフォール家に“お前たちがオデットを逃がしたのだろう”と詰め寄ったが、確たる証拠を掴めず処罰に踏み切れないでいる。
――愛人ミレイユは、自分こそが王妃になれると高をくくっていたが、周囲の貴族から正式な地位を一切認められず、王太子派閥の足元も揺らぎ始めている。
――さらに、舞踏会の薬物混入騒ぎや最近のアルベールの強引な政治介入に反発する貴族たちが密かに同盟を組み、国王陛下や王妃陛下の保護のもと、アルベールに反対する動きを強めている。
(つまり、私が逃げ出したことで、あの国の歯車も大きく狂い始めたのかもしれない。アルベールの傲慢さが一気に表面化して、周囲が反発を強めているのだろう)
オデットは書状を読んで、思わず苦笑する。
――あれだけ高慢にふるまい、「お前との結婚はただの形式」と言い放ったアルベールが、今になって“花嫁に逃げられた王太子”という笑い者になっているのだ。
ざまあ、と言うにはあまりにも軽い言葉だが、オデットは心の底でそうつぶやいていた。
(きっと、もう二度とあの国へ戻ることはないだろう。私も新しい人生を歩む。あれほど恐れていた“破談”も、こうなればむしろ清々しいわ)
それから半年ほど経った頃、オデットはアルヴェール王国の宮廷に正式に招かれ、レオポルド王子のもとで“外交顧問”のような役割を担い始める。
彼女の知性や教養、社交のマナーは、アルヴェール王国の貴族たちからも高く評価され、やがて国王や王妃にも引き合わされることとなる。その際にレオポルド王子が示したのは、「彼女を妻として迎えたい」という正式な申し出だった。
「オデット、あなたが私の提案を受け入れてくれるかどうかは、あなたの自由です。ですが、私は心から願っています。あなたがどんな過去を背負っていても、私はそれを受け入れ、共に幸せを築きたいのです」
その真摯な言葉に、オデットはもう迷わなかった。かつて王太子アルベールに望んでいたはずの“共に未来を築く”という関係――それがここにあるのなら、自分が取るべき道は一つ。
「ありがとうございます、殿下。私でよろしければ……どうか、よろしくお願いいたします」
こうして、オデットは隣国で新たな人生を歩み始めることとなる。
一方、アルベールはどうなったのか。
――オデット脱走の一件で、国王陛下や反対貴族の怒りを買い、また愛人ミレイユの身勝手さにも手を焼き、宮廷で孤立を深めつつあるという噂が飛び交っていた。国王陛下が健在のうちに、あまりにも傲慢な態度を取りすぎたアルベールは、王位継承権を争う他の王族の排斥にも遭い、事実上の“虜囚状態”に陥ったとも。
どちらの真相も定かではないが、少なくとも“ブランシュフォール侯爵令嬢オデット”が失踪したのは、アルベールにとって大きな痛手になったことだけは確かだ。
――自分が捨てたと思っていた女に、自分の未来を大きく狂わされてしまうとは。どれほど後悔しても、オデットはもう戻ってこない。
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