溺愛政略結婚 花嫁は女子高生

鍛高譚

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4-1 女子高生SP、爆誕。現場の空気、すでに限界突破

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4-1 女子高生SP、爆誕。現場の空気、すでに限界突破

 

始業のチャイムが鳴る直前。
担任が教室に入ってくると、生徒たちは「また何かあるのか」とソワソワし始めた。

 

当然だった。
この数日間、有川未来という“地味で平凡だったはずの女子”をめぐる情報が、教室中を騒がせ続けていたからだ。

 

未来自身はというと――

 

(頼むから何事もなく一日が終わってくれ……)

 

と、机に突っ伏して祈っていた。
だが、その願いは、ものの数秒で打ち砕かれる。

 

「えー、今日は転入生を紹介します」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

教室が一瞬でどよめきに包まれる。
季節外れの転入生なんて、それだけで目立つイベントなのに、続いた一言が完全に爆弾だった。

 

「二人です」

 

「「「に、二人も!?」」」

 

生徒たちがざわつく中、ドアの前に並ぶふたりの女子が一歩前に出る。
制服姿……なのだが、その“何かがおかしい感”が、全身からにじみ出ていた。

 

「は、はじめまして。真田真子です……よろしくお願いします」

 

前に出たひとりは、ぱっちりとした目元と、丸顔の印象。
やや童顔ではあるが、制服姿がそこまで違和感なく馴染んでいる。
ぎこちない笑顔と、やや緊張気味な口調が逆にリアルだ。

 

「で、では、つ、次……服部倉子です……」

 

もうひとりが一歩前に出ると、空気が微妙に変わった。

 

(……あれ……なんか……年上っぽい……?)

 

髪型はきっちり結ばれ、メイクは最小限に抑えられているものの、肌の質感や立ち居振る舞いに**“大人の女感”**が隠しきれていない。

 

そして、最大の違和感は――声のトーンと落ち着きすぎた目線だった。

 

「……え? おばさんじゃね?」

 

誰かの小声が教室の一角で漏れた。

 

「まだ二十四だ!」

 

即答だった。

 

「じゅ、じゅうぶんおばさ――って言ってない!誰も言ってないよ!?」

 

未来は心の中で頭を抱えた。

 

(うわあああ! よりにもよって、この人たちを“転入生”って……無理ありすぎるでしょ!!)

 

そう、彼女たちは――

 

SP(セキュリティ・パーソン)である。

 

隼人が未来の安全を守るために、学校内に配置した私設警護員。
しかも、“生徒として潜入”という形をとることで、他生徒との摩擦を減らす配慮(?)つき。

 

……だったのだが――

 

(童顔担当の真子さんはまだギリギリ“それっぽい”として……)

 

未来の目が自然ともう一人に向く。

 

(倉子さんは無理ありすぎるよ!!!)

 

制服を着ているとはいえ、姿勢が良すぎて“女教師感”がすごい。
教卓の横に立っただけで、「指導の人が来たのかな」って誤解されるレベルだ。

 

クラス中がひそひそとざわついている。

 

「え? 二人とも同い年って設定なの?」「真子ちゃんはギリセーフだけど……」「倉子って……下の名前がそもそもオバ……」

 

「静かに!」

 

担任の一喝でなんとか沈静化したが、クラス中に走ったざわめきは明らかに“通常の転校生対応”とは違っていた。

 


---

 

昼休み。

 

未来は校舎裏に逃げるように移動して、缶コーヒーを片手にベンチに腰掛けた。

 

「……あれでバレないと思ってるの、ほんとに無理あるよね……」

 

呟きながら、額を指で押さえる。

 

その横に、ちょこんと腰掛けたのは――真子だった。

 

「お疲れさまです、奥様」

 

「奥様やめて!! 学校で奥様言うの禁止!!」

 

「す、すみません……でも、久川社長からは、常に敬意を持つようにって……」

 

「ここでは普通に“未来さん”でいいの! 本当に!」

 

真子はしゅんと肩を落としながら、それでも申し訳なさそうに笑った。

 

「でも……やっぱり、無理ありますよね。制服……なんとかはまりましたけど、ちょっと腕のあたりがキツくて……」

 

「いや、見た目はまだ真子さんは……セーフだったよ」

 

「倉子さんは……アウトですよね」

 

ふたりでそっと遠い目をした。

 

未来は心の中で叫んだ。

 

(だいたい、なんであの人を女子高生にしようと思ったの!? 隼人さん!)

 

その頃、倉子は廊下の窓から教室を見張っていた。
やけに姿勢よく、腕を組んだその様子はどう見ても“生活指導担当”。

 

「あの……先生ですか?」とすれ違った後輩に聞かれて「生徒です」と答えた瞬間、彼女の目から生気が消えたという――

 


---

 

「これ……続けるの、地味にキツくない……?」

 

真子が力なく笑う。

 

未来は深くうなずいた。

 

「うん……でも、私が望んだ結果でもあるから。迷惑かけてごめんね」

 

「いえ、仕事ですから。でも……未来さんは、普通になりたかったんですよね?」

 

「うん。できるなら……普通に、制服着て、電車で登校して、友達と騒いで、お昼食べて、くだらないこと話して……」

 

そこまで言って、未来は空を見上げた。

 

「でも、それができなくなった。だからせめて、“笑って過ごせる毎日”を守りたいんだよね。せっかく高校生なんだし」

 

真子は、静かに微笑んだ。

 

「了解です。それが、未来さんの願いなら――私たちは、全力でお守りします」

 

少しだけ元気を取り戻した未来は、缶コーヒーをぐいっと飲み干した。

 

「よし。じゃあ、あの制服、もっと自然に着こなせるように、倉子さんにも頑張ってもらおうか」

 

「……それが一番の難関かもしれません」

 

そして次の瞬間。

 

「未来お嬢様、そろそろ授業の時間です」

 

制服を着た“誰がどう見ても保護者”が、教室に向かって現れた。

 

倉子である。

 

未来は顔を覆って叫んだ。

 

「……せめて、存在感を消してくれええええええ!!」

 
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