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10話
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「まさか……次の縁談がこんなに早く舞い込むなんて……」
薄暗い書斎で父と母を前に、私は思わずこぼしてしまった。
先日、あれほど派手な奇行を働いてまで破談に持ち込んだばかりだというのに。
世間では「アンネローゼ・フォン・グレイシアはとんでもない令嬢だ」という噂が回っているはずだ。
それにも関わらず、第二の婚約話はやってきた。
「お父様……これは何かの冗談ではありませんわよね?」
私が念押しするように尋ねると、父は渋い表情のまま苦い笑いを浮かべた。
「冗談ならどれほど良かったか……。私も驚いているのだ。
だが、フェルガン男爵家から正式に申し入れがあった。結婚前提のご挨拶をぜひに、とな」
「フェルガン男爵家……カイル・フェルガンという名でしたかしら」
母が資料の書面を手に、ゆっくりと読み上げる。
「領地こそ小さいものの、近年は商業路の中継地として発展を遂げているらしいわ。
ただし、男爵家という地位ゆえ、どうしても貴族社会での立場は下がりがち……。
それゆえに、我がグレイシア家との縁組を望んでいるのでしょうね」
「ふぅん……政略結婚にしては随分と動きが早いわね」
私は怪訝な気持ちになった。
私の噂が広まっている今、わざわざこのタイミングで求婚してくるとはどういうことなのか。
ひょっとして、私の“噂”に興味を持って近づいてきたのか。
あるいは、その噂を聞いてもなお、何か得になると考えているのか……。
「とりあえず、顔合わせは避けられん。向こうの使者が近々に面会を望んでいる。
一度会ってみて、どういう人物かを確かめることだ」
父の言葉に、私は小さく溜息をついた。
破談にしてもらうには、相手を“嫌気が差す”ほど呆れさせるのが一番手っ取り早い。
けれども私は、できれば余計な騒ぎは避けたい。
それでも、望まぬ婚約を避ける手段として、また何らかの奇行をしなければならないのだろうか。
「わかりました。私もできるだけ冷静に応対してみますわ。
……まあ、もう私の評判など地に落ちておりますし、相手方が幻滅なさるのも時間の問題ではないかしらね」
そう言って苦笑いを返すと、父も母も心なしかほっとしたような顔をする。
「わが娘ながら、どんな手を使うかわからんが……どうか加減をしてくれよ。
あのレオン・ブライトを激怒させるほどの芸当は、二度目はほどほどにな」
父の言葉は、まるで私を“暴れ馬”扱いしているようにも聞こえたが、仕方ない。
あの奇行の数々は確かに自分で引き起こしたことだ。
――こうして、第二の婚約者との出会いに向けて、私の運命は再び動き始めたのである。
薄暗い書斎で父と母を前に、私は思わずこぼしてしまった。
先日、あれほど派手な奇行を働いてまで破談に持ち込んだばかりだというのに。
世間では「アンネローゼ・フォン・グレイシアはとんでもない令嬢だ」という噂が回っているはずだ。
それにも関わらず、第二の婚約話はやってきた。
「お父様……これは何かの冗談ではありませんわよね?」
私が念押しするように尋ねると、父は渋い表情のまま苦い笑いを浮かべた。
「冗談ならどれほど良かったか……。私も驚いているのだ。
だが、フェルガン男爵家から正式に申し入れがあった。結婚前提のご挨拶をぜひに、とな」
「フェルガン男爵家……カイル・フェルガンという名でしたかしら」
母が資料の書面を手に、ゆっくりと読み上げる。
「領地こそ小さいものの、近年は商業路の中継地として発展を遂げているらしいわ。
ただし、男爵家という地位ゆえ、どうしても貴族社会での立場は下がりがち……。
それゆえに、我がグレイシア家との縁組を望んでいるのでしょうね」
「ふぅん……政略結婚にしては随分と動きが早いわね」
私は怪訝な気持ちになった。
私の噂が広まっている今、わざわざこのタイミングで求婚してくるとはどういうことなのか。
ひょっとして、私の“噂”に興味を持って近づいてきたのか。
あるいは、その噂を聞いてもなお、何か得になると考えているのか……。
「とりあえず、顔合わせは避けられん。向こうの使者が近々に面会を望んでいる。
一度会ってみて、どういう人物かを確かめることだ」
父の言葉に、私は小さく溜息をついた。
破談にしてもらうには、相手を“嫌気が差す”ほど呆れさせるのが一番手っ取り早い。
けれども私は、できれば余計な騒ぎは避けたい。
それでも、望まぬ婚約を避ける手段として、また何らかの奇行をしなければならないのだろうか。
「わかりました。私もできるだけ冷静に応対してみますわ。
……まあ、もう私の評判など地に落ちておりますし、相手方が幻滅なさるのも時間の問題ではないかしらね」
そう言って苦笑いを返すと、父も母も心なしかほっとしたような顔をする。
「わが娘ながら、どんな手を使うかわからんが……どうか加減をしてくれよ。
あのレオン・ブライトを激怒させるほどの芸当は、二度目はほどほどにな」
父の言葉は、まるで私を“暴れ馬”扱いしているようにも聞こえたが、仕方ない。
あの奇行の数々は確かに自分で引き起こしたことだ。
――こうして、第二の婚約者との出会いに向けて、私の運命は再び動き始めたのである。
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