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第4章: 「ざまぁと溺愛」
4-1. 疑惑と不安の広がり
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4-1. 疑惑と不安の広がり
リオネルの兄・ギルバートが公爵家の財産を横領し、不正蓄財に手を染めている――。さらに、義母と義姉エリザベスがその不正を黙認、あるいは手助けしている可能性が高いことを示す証拠を掴んで以来、リオネルとカリエラは忙しい日々を送っていた。
公爵家という大貴族の内部で、しかも長男が行っている不正を公にするのは容易ではない。公爵当主(リオネルの父)も高齢で体調を崩しがちであり、いざ事態を知ってもすぐには動けないだろう。ましてや義母に至ってはギルバートを溺愛しており、リオネルやカリエラの言葉など聞く耳を持たない。
だが、カリエラは負けなかった。もはやリオネルとの間に「夫婦としての揺るぎない愛情」が芽生えている。リオネルは家族への不信感を拭い去ることこそできないままでも、カリエラと共に公爵家の名誉を守るため、兄たちの不正を暴こうと決意していた。
そんななか、義母と義姉は相変わらずカリエラに嫌がらせを続け、また、ギルバートは何とかリオネルとカリエラの関係に亀裂を生じさせようと、あの手この手で干渉を試みてくる。
それでも、以前とは違い、カリエラはひとりで苦しむことはなかった。リオネルは少しずつではあるが、自分からカリエラに声をかけたり、彼女の状況を気にかけたりするようになったのだ。
「何か困ったことがあれば、必ず俺に言え」
「はい……ありがとうございます、リオネル様」
そうした言葉のやり取りがあるだけで、カリエラの胸はあたたかくなる。
一方、義母たちはどうかと言えば、以前よりもずっと苛立ちを募らせていた。特にエリザベスは、カリエラが社交界で“聡明な伯爵令嬢”として名を高めつつあることを癪に障っている様子で、何かにつけてはカリエラの前で舌打ちに似た仕草をする。
「あなたのような余所からきた女が、公爵家の主役になったつもりなの? いい気にならないで」
「いえ、そんなつもりはないのですが……」
表面的には笑顔を保ちながら、カリエラは内心で(もう少し大人になればいいのに……)とため息をつく。だが、今は直接反撃する時期ではない。ギルバートの不正を白日の下に晒すために、裏で動いている以上、下手に刺激しすぎるのは得策ではない。
そんな綱渡りのような状況が続く中、ついに“決定打”となる出来事が起こる。ギルバートの不正疑惑を裏付ける、ある重大な証拠が見つかったのだ。
リオネルの兄・ギルバートが公爵家の財産を横領し、不正蓄財に手を染めている――。さらに、義母と義姉エリザベスがその不正を黙認、あるいは手助けしている可能性が高いことを示す証拠を掴んで以来、リオネルとカリエラは忙しい日々を送っていた。
公爵家という大貴族の内部で、しかも長男が行っている不正を公にするのは容易ではない。公爵当主(リオネルの父)も高齢で体調を崩しがちであり、いざ事態を知ってもすぐには動けないだろう。ましてや義母に至ってはギルバートを溺愛しており、リオネルやカリエラの言葉など聞く耳を持たない。
だが、カリエラは負けなかった。もはやリオネルとの間に「夫婦としての揺るぎない愛情」が芽生えている。リオネルは家族への不信感を拭い去ることこそできないままでも、カリエラと共に公爵家の名誉を守るため、兄たちの不正を暴こうと決意していた。
そんななか、義母と義姉は相変わらずカリエラに嫌がらせを続け、また、ギルバートは何とかリオネルとカリエラの関係に亀裂を生じさせようと、あの手この手で干渉を試みてくる。
それでも、以前とは違い、カリエラはひとりで苦しむことはなかった。リオネルは少しずつではあるが、自分からカリエラに声をかけたり、彼女の状況を気にかけたりするようになったのだ。
「何か困ったことがあれば、必ず俺に言え」
「はい……ありがとうございます、リオネル様」
そうした言葉のやり取りがあるだけで、カリエラの胸はあたたかくなる。
一方、義母たちはどうかと言えば、以前よりもずっと苛立ちを募らせていた。特にエリザベスは、カリエラが社交界で“聡明な伯爵令嬢”として名を高めつつあることを癪に障っている様子で、何かにつけてはカリエラの前で舌打ちに似た仕草をする。
「あなたのような余所からきた女が、公爵家の主役になったつもりなの? いい気にならないで」
「いえ、そんなつもりはないのですが……」
表面的には笑顔を保ちながら、カリエラは内心で(もう少し大人になればいいのに……)とため息をつく。だが、今は直接反撃する時期ではない。ギルバートの不正を白日の下に晒すために、裏で動いている以上、下手に刺激しすぎるのは得策ではない。
そんな綱渡りのような状況が続く中、ついに“決定打”となる出来事が起こる。ギルバートの不正疑惑を裏付ける、ある重大な証拠が見つかったのだ。
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