政略結婚の末に愛されたヒロインは、やがて世界を変える

鍛高譚

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第5章 陰謀の影

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朝日が再び新たな一日を告げる中、レクシアは公爵家とエルデ家の協力関係を強化するための準備に追われていた。クエストの脅威を排除した後、公爵家は安定を取り戻しつつあったが、その背後にはまだ見えない陰謀の影がちらついていた。

ある日、レクシアが書斎で資料を整理していると、オルディスが急ぎ足で部屋に入ってきた。彼の顔には緊張が走っており、いつもとは違う緊張感が漂っていた。

「奥様、緊急の連絡が入りました。王宮からの命令です。今夜、王に直接報告しなければなりません。」

「王宮からですか? 何があったのでしょう?」

「詳細はまだ分かりませんが、王宮内で重大な問題が発生したとのことです。すぐに向かう必要があります。」

レクシアは心臓が高鳴るのを感じた。王宮内での問題とは一体何なのだろうか。彼女はすぐにダリオンに連絡を取り、二人で王宮に向かうことにした。

***

王宮の大広間に到着すると、そこには王と王妃、そして多くの高位貴族たちが集まっていた。ダリオンは王に向かって頭を下げ、レクシアもその後に続いた。王は厳しい表情で二人を迎えた。

「ダリオン、公爵家の皆さん、お集まりいただきありがとうございます。今朝、王宮内で重大な問題が発生しました。」

「何が起こったのですか、陛下?」

「実は、王宮内にスパイが潜入している可能性が高いと判断しました。情報漏洩のリスクがあり、国の安全が脅かされる恐れがあります。」

レクシアは驚きと共に緊張を感じた。スパイが王宮に潜んでいるというのは、非常に深刻な事態だ。彼女はダリオンに目を向け、状況を把握しようとした。

「陛下、スパイの疑いがある人物はいますか? 具体的な情報があれば教えていただけますか?」

「まだ詳細は不明ですが、内部からの情報提供があり、特定の役職にある者たちに不審な動きが見られています。公爵家としても、何か関与している可能性があるかもしれません。」

レクシアは一瞬考え込んだ。公爵家とエルデ家の協力関係が強化されたばかりだが、その裏で他の勢力が動き出しているのではないかという懸念が頭をよぎった。

「私たち公爵家としても、必要な調査を行います。王宮の安全を守るために、全力を尽くします。」

「ありがとう、ダリオン。君たちの協力に感謝する。王宮の安全は我々全員の責任だ。」

***

会議が終わり、レクシアとダリオンは公爵家の執務室に戻った。そこでは、エルデ家との協力関係をさらに強化するための具体的なプランが進行中だった。だが、王宮内でのスパイの問題が頭から離れなかった。

「ダリオン様、このスパイ問題が公爵家に関わっている可能性もあるのではないでしょうか?」

「確かに、その可能性は否定できない。公爵家とエルデ家の協力関係が強まる中で、他の勢力がそれを脅かすために動き出しているのかもしれない。」

「もしそうなら、私たちはどう対処すれば良いのでしょうか?」

「まずは、内部からの信頼できる情報を集めることだ。エルデ家との連携を活かして、彼らのネットワークから情報を得ることも一つの方法だろう。」

レクシアは頷き、決意を新たにした。彼女は公爵家とエルデ家のために、そして王国の安全のために、あらゆる手段を尽くす覚悟を決めた。

***

数日後、レクシアはエルデ家の使用人たちと共に、クエストの元へと向かった。クエストは公爵家の脅威を排除したものの、その背後にある陰謀の一端を知る重要な人物であった。彼との対話を通じて、さらに深い陰謀の存在を知ることになる。

「クエストさん、再びお会いするとは思いませんでした。今度は何の用ですか?」

「お前たちの協力が功を奏したのは確かだ。しかし、まだ終わりではない。俺たちの背後には、もっと大きな力が動いているんだ。」

「具体的に何を意味するのですか? どんな力が公爵家を脅かしているのでしょうか?」

「それを知りたければ、お前たちも公爵家の動きを注視する必要がある。俺たちの目的は一つ、王国の真の支配権を握ることだ。」

レクシアは冷静さを保ちつつも、クエストの言葉に動揺を感じた。王国の真の支配権を握るという目的が何を意味するのか、その背後にはどんな陰謀が潜んでいるのか、彼女には理解できなかった。

「具体的な証拠や情報があれば、ぜひ教えてください。公爵家としても、王国の安全を守るために最善を尽くします。」

「証拠? お前たちが持っている情報は、まだ不完全だ。しかし、確かなことは、王国の中には公爵家を排除しようとする勢力が存在するということだ。」

レクシアはその言葉に胸が痛む。公爵家を排除しようとする勢力が存在するとは、一体どれほどの影響力を持っているのだろうか。

「それならば、まずはその勢力の動向を把握することが重要です。私たち公爵家とエルデ家が協力し合えば、きっとこの問題を乗り越えることができるはずです。」

「そうかもしれないが、君たちだけでは手に負えない部分もあるかもしれない。注意して行動するんだ。」

クエストはそう言うと、再び部屋を出て行った。彼の言葉には警告が含まれているように感じられた。

***
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