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6章
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しおりを挟むエドワルド王太子の来訪が公になると、王都は急速に活気づき始めた。街道の整備や飾り付けが進み、王宮も迎賓式の準備に追われている。貴族たちもこぞって「王太子との面会」を取りつけようと奔走し、情報が飛び交う。
中には「エルフィンベルク家の令嬢が、今度こそ“正真正銘の王妃候補”になるのでは?」という噂も流れ始め、シルフィーネは否が応でも注目の的となっていた。
「……まるで私が既に婚約を決めたみたいな噂ね。まだ正式にお会いもしていないのに……」
そう苦笑するシルフィーネに、侍女たちは「それだけ世間が注目しているということですよ」と言う。確かに、ライオネルとの破談劇は人々の記憶に新しい。あの騒動を経て公爵家の令嬢は意識不明になったが、奇跡的に目覚め、今度は“異国の王太子との縁談”――こんな劇的な展開、下々の者にとっては格好の噂話だろう。
そうした中、王宮へ出入りする何人かの貴族夫人たちが「王太子の歓迎会」に関して妙な動きを見せ始めているという情報もあった。
たとえば、「シルフィーネ令嬢は体が不自由なのでは? 本当に王太子閣下のお相手が務まるのか」などと陰口を叩く者もいるらしい。また、自分の娘をエドワルド王太子に売り込もうと画策する貴族が水面下で動いているという噂も絶えない。
ライオネルの時は「幼くて子供っぽい」と侮られたが、今度は「健康面」に難癖をつけられる可能性がある。元気に振る舞う必要があるのは、その意味でも重要だった。
「……ざまあ、と言いたいわけじゃないけれど……あまりにも勝手なものね。私が眠っていた間に、周囲は本当に好き勝手言っていたんでしょうね」
誰に聞かせるでもなく呟いたシルフィーネの胸には、ほんの少し苛立ちがあった。だが、まだ負けるわけにはいかない。自分は確かに弱い時期もあったが、今は違う――。
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