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7章
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しおりを挟むエドワルド王太子の初来訪から数日後のこと。
シルフィーネ・エルフィンベルクは、早朝の涼しい空気を吸い込みながら、館の広大な庭を散歩していた。体力回復を目的とした軽い運動も兼ねているが、心を落ち着かせるための大切な時間でもある。
長い眠りの後遺症ゆえ、急な動きをすると眩暈や息切れに襲われることがあるが、最近は慣れてきて、歩くだけならそこまで苦にならなくなった。階段を上るのはまだ少し辛いが、それでも「一年前には想像もできなかったくらい動けるわ」と、小さな自信になっている。
「でも、まだまだ本調子とは言えないのよね……」
誰に向けるでもなく、小さく呟く。実際、周囲の侍女や父母からは「とにかく無理は禁物」と釘を刺され続けていた。今のシルフィーネの身体は“バランス”が不安定らしく、一度大きく体調を崩すと、あの意識不明の状態に逆戻りしかねない可能性がある――そう医師にも言われている。
(でも、私は……。王太子閣下とちゃんとお話ししたい。もう子供扱いされて終わるなんて嫌だ。自分の足で、この人生を歩まないと)
心の奥底でそう強く願う。ライオネルとの苦い思い出や、アメリアに負わされた深い傷は消えないが、その分、自分は以前よりも“誰かに翻弄されるまま”でいるのを許せなくなっていた。
「お嬢様。そろそろ朝食のお時間です。ご準備なさってくださいませ」
フロランス夫人の穏やかな声が聞こえ、シルフィーネは庭の小径から館の建物へ視線を戻す。朝日が差し込み、白亜の壁が眩しく輝いている。かつてはここが閉塞感に満ちた世界だと感じていたが、いまは“自分を大切に迎えてくれる場所”でもあると実感できるようになった。
「ええ、分かったわ。すぐ戻るね」
そうして館に戻った彼女は、その日の午前中に控えている行事の準備を思い出す。――今日はエドワルド王太子が「次の再訪」を約束しているのだ。短時間にはなるが、公爵家と王太子側が政治的な意見交換を行う場に、シルフィーネも同席することになっている。
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