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第5章 呪いが解けたら、溺愛されました
5-4
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5-4 公の場での発表と“ざまぁ”の報い
貴族たちが一堂に会する、春の社交パーティ。
王都の中央、壮麗な白亜の大広間には、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族たちが集い、互いに笑顔を交わしていた。
だがその中に、ざわりとした緊張が走ったのは、ひと組の招かれざる――いや、予想外の客人が現れたからだった。
「まさか……」
「うそ……あれが……化け物公爵、フェルディナンド様……?」
振り返った人々の視線の先にいたのは、これまで“呪われた怪物”と噂されていた公爵――だが、そこにいたのはまるで別人。
しなやかな体躯に整った顔立ち、漆黒の髪に金の瞳。
その姿は、見る者すべての息を飲ませるほど美しかった。
その隣を歩く少女は、控えめなドレスに身を包みながらも、はにかんだ笑みを浮かべて彼の腕を取っていた。
「……ノイン……あれが、あの“みそっかす”の……?」
「うそでしょう……あんな美形の公爵と婚約してるなんて……!」
嫉妬と後悔が交錯した囁きが、大広間に満ちていく。
そして、その中でも特に青ざめていたのは――
「ノイン……あの子が……!」
伯爵夫人とその娘、エミリアだった。
二人はこの社交の場で“勝ち組”として振る舞うつもりだった。
あの忌まわしい“化け物”にノインを押し付け、自分たちは上流階級で優雅に過ごす予定だったのだ。
だが、現実はどうだ。
“化け物”などではなく、圧倒的な美貌と威厳を持った公爵が、ノインの手を優しく引いて、堂々と現れたのだ。
「本日はお集まりいただき、感謝いたします」
壇上に立ったフェルディナンドが一礼する。
彼の声は落ち着いていて、だがどこか冷ややかだった。
「先日、長らくわたしの身にかかっていた呪いが、解けました。今日ここで、その報告と、もうひとつ――」
彼はノインの手を取り、やわらかく掲げる。
「――わたしの婚約者である、ノイン・エルゼ・グレイス嬢を正式に、未来の公爵夫人として皆さまに紹介いたします。」
会場が、凍りついたように静まりかえった。
「ノイン……だと? あの孤児の……」
「冗談じゃないわ……身代わりだったはずなのに……!」
「どうして、あの子が……私のほうがずっとふさわしいのに……!」
恨み節のようなささやきがあちこちで聞こえた。
だが、フェルディナンドはそのすべてを無視し、ノインを見下ろすようにやさしく微笑んだ。
「ノイン。顔を上げてくれ。今、お前を誇りに思っているのは、この場でわたしだけではない。」
ノインがそっと顔を上げると、王城の使者や他の高位貴族たちが、口々に賞賛の声をあげていた。
「公爵、呪いを解いたとは……なんという奇跡!」
「そのような能力をお持ちとは、婚約者様はまさに女神のようだ」
「素晴らしいおふたりだ。これからの公爵家が楽しみですな」
会場の空気が一気に変わる。
ノインは戸惑いながらも、そっとフェルディナンドの腕に寄り添った。
その様子を見ていたエミリアが、怒りに震えながら前に出る。
「公爵様……っ、そ、それでも、私は貴族の娘です! ノインなんかより、ずっとあなたにふさわしいはずです……!」
だが、フェルディナンドは冷ややかに返す。
「ふさわしさを決めるのは、血筋でも美貌でもない。――その心だ」
「ノインは、わたしの呪いにも、孤独にも、すべてに寄り添ってくれた。君はそのどれか一つでも、受け止められるか?」
エミリアは何も言い返せず、その場に立ち尽くした。
さらに追い打ちをかけるように、周囲の貴族たちが皮肉混じりに口を開く。
「身代わりに差し出しておいて、いまさら名乗り出るとは、あまりに浅ましい」
「どうやら“本物の宝石”を手放したのは、伯爵家のようですな」
顔を真っ赤にした伯爵夫人とエミリアは、人目もはばからずその場を逃げ出した。
ノインは胸の奥で、少しだけ安堵する。
でも、心のどこかで思っていた。
(……これが“ざまぁ”ってやつ、なんですね)
もちろん、復讐心からではない。
ただ、自分を蔑み、見下していた人々が、自分の幸せを認めざるを得ない――その事実が、ほんの少しだけ、心を軽くしてくれた。
その夜、パーティのあと。
屋敷に戻ったノインは、フェルディナンドの胸の中でそっと微笑んでいた。
「公爵夫人、かぁ……。なんだか、まだ実感がないです」
「では、今のうちに呼び慣れておこう」
「えっ、ちょ、ま――!」
「――わたしの、愛しき公爵夫人」
囁きと共に落ちるキス。
世界で一番優しい“ざまぁ”の物語は、こうしてふたりの愛と共に、静かに幕を閉じた。
貴族たちが一堂に会する、春の社交パーティ。
王都の中央、壮麗な白亜の大広間には、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族たちが集い、互いに笑顔を交わしていた。
だがその中に、ざわりとした緊張が走ったのは、ひと組の招かれざる――いや、予想外の客人が現れたからだった。
「まさか……」
「うそ……あれが……化け物公爵、フェルディナンド様……?」
振り返った人々の視線の先にいたのは、これまで“呪われた怪物”と噂されていた公爵――だが、そこにいたのはまるで別人。
しなやかな体躯に整った顔立ち、漆黒の髪に金の瞳。
その姿は、見る者すべての息を飲ませるほど美しかった。
その隣を歩く少女は、控えめなドレスに身を包みながらも、はにかんだ笑みを浮かべて彼の腕を取っていた。
「……ノイン……あれが、あの“みそっかす”の……?」
「うそでしょう……あんな美形の公爵と婚約してるなんて……!」
嫉妬と後悔が交錯した囁きが、大広間に満ちていく。
そして、その中でも特に青ざめていたのは――
「ノイン……あの子が……!」
伯爵夫人とその娘、エミリアだった。
二人はこの社交の場で“勝ち組”として振る舞うつもりだった。
あの忌まわしい“化け物”にノインを押し付け、自分たちは上流階級で優雅に過ごす予定だったのだ。
だが、現実はどうだ。
“化け物”などではなく、圧倒的な美貌と威厳を持った公爵が、ノインの手を優しく引いて、堂々と現れたのだ。
「本日はお集まりいただき、感謝いたします」
壇上に立ったフェルディナンドが一礼する。
彼の声は落ち着いていて、だがどこか冷ややかだった。
「先日、長らくわたしの身にかかっていた呪いが、解けました。今日ここで、その報告と、もうひとつ――」
彼はノインの手を取り、やわらかく掲げる。
「――わたしの婚約者である、ノイン・エルゼ・グレイス嬢を正式に、未来の公爵夫人として皆さまに紹介いたします。」
会場が、凍りついたように静まりかえった。
「ノイン……だと? あの孤児の……」
「冗談じゃないわ……身代わりだったはずなのに……!」
「どうして、あの子が……私のほうがずっとふさわしいのに……!」
恨み節のようなささやきがあちこちで聞こえた。
だが、フェルディナンドはそのすべてを無視し、ノインを見下ろすようにやさしく微笑んだ。
「ノイン。顔を上げてくれ。今、お前を誇りに思っているのは、この場でわたしだけではない。」
ノインがそっと顔を上げると、王城の使者や他の高位貴族たちが、口々に賞賛の声をあげていた。
「公爵、呪いを解いたとは……なんという奇跡!」
「そのような能力をお持ちとは、婚約者様はまさに女神のようだ」
「素晴らしいおふたりだ。これからの公爵家が楽しみですな」
会場の空気が一気に変わる。
ノインは戸惑いながらも、そっとフェルディナンドの腕に寄り添った。
その様子を見ていたエミリアが、怒りに震えながら前に出る。
「公爵様……っ、そ、それでも、私は貴族の娘です! ノインなんかより、ずっとあなたにふさわしいはずです……!」
だが、フェルディナンドは冷ややかに返す。
「ふさわしさを決めるのは、血筋でも美貌でもない。――その心だ」
「ノインは、わたしの呪いにも、孤独にも、すべてに寄り添ってくれた。君はそのどれか一つでも、受け止められるか?」
エミリアは何も言い返せず、その場に立ち尽くした。
さらに追い打ちをかけるように、周囲の貴族たちが皮肉混じりに口を開く。
「身代わりに差し出しておいて、いまさら名乗り出るとは、あまりに浅ましい」
「どうやら“本物の宝石”を手放したのは、伯爵家のようですな」
顔を真っ赤にした伯爵夫人とエミリアは、人目もはばからずその場を逃げ出した。
ノインは胸の奥で、少しだけ安堵する。
でも、心のどこかで思っていた。
(……これが“ざまぁ”ってやつ、なんですね)
もちろん、復讐心からではない。
ただ、自分を蔑み、見下していた人々が、自分の幸せを認めざるを得ない――その事実が、ほんの少しだけ、心を軽くしてくれた。
その夜、パーティのあと。
屋敷に戻ったノインは、フェルディナンドの胸の中でそっと微笑んでいた。
「公爵夫人、かぁ……。なんだか、まだ実感がないです」
「では、今のうちに呼び慣れておこう」
「えっ、ちょ、ま――!」
「――わたしの、愛しき公爵夫人」
囁きと共に落ちるキス。
世界で一番優しい“ざまぁ”の物語は、こうしてふたりの愛と共に、静かに幕を閉じた。
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